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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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「遙か2」では、東宮様に迫るほど好きな勝真さんの
お誕生祝いのつもりで書きました。
二日遅れだけど、お誕生日、おめでとう!
って、内容、お誕生日に無関係なんですけど。
なかなかバカップルな感じにはなりました。

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「ともに帰る日まで」

 
揚げ雲雀のさえずりが、どこか遠くの空から聞こえる。今、まさに爛漫たる春の気にあふれた野は、
勝真の気に入りの場所だった。
「ここ、座れよ」
 若草の萌え出ている草地を花梨に示すと、勝真は無造作に腰を下ろし、ごろりと横になった。
「うん」
 そんな勝真の傍らに寄り添って座ると、日差しに温められた草の感触が心地いい。勝真は目を閉じて、横たえた全身でその心地よさを味わっているようだった。
 いつもは見上げている勝真の顔が、自分の目線より下にあることが新鮮で、花梨はつい見入ってしまった。細く高い鼻梁、引き締まった口元、時に苛烈な光を帯びる目は今はまぶたに塞がれ、その分穏やかに見えた。
(やっぱりハンサムだなあ)
 胸の鼓動が、とくんと一つ大きく打つのを感ずる。今、このひとときは、彼を独り占めできるのだ、と。仔細に見つめるうちに、目の下にうっすらと青い隈がはかれているのに気づき、花梨は眉をひそめた。
(もしかして、無理してるんじゃないかな?)
 と、勝真が目を閉じたまま言った。
「俺の顔に何か付いてるか?」
 不意をつかれて、花梨は慌てた。
「え、ええ〜〜? いや、何も付いてないよ。うん、いつも通り」
(ていうか、なんで目を閉じてるのに、わかるの〜〜?)
 勝真は、くっと笑いを漏らすと、そんな花梨の心情を見透かすように言った。
「目を閉じてたってわかる。おまえの視線って、独特なんだよ。というより、おまえが俺にとって特別だから、感じ取れるのかな」
「そ、そうなの?」
「ああ」
 目を開けた勝真の視線が、柔らかく注がれて。
(あ、やっぱり目を開けてるのも、すてき……)
 などと、花梨は頭の隅でのぼせたことを考えていた。勝真の言葉は、からかうような調子で、さらに続く。
「だが、俺の顔の見物料は高いぜ。お返しにおまえの顔ももっとよく見せろ」
「ええ? きゃっ……!」
 いきなり腕を引かれて、バランスを失った花梨のからだは、寝ころんでいる勝真の上に倒れこんだ。かたく引き締まった胸にぶつかったその衝撃から立ち直るより先に、伸びて来た手が花梨の頬に添えられ、顔の向きを決められる。
(……!?)
 先ほどは見下ろしていた勝真の顔が、触れそうなほど間近にあった。
「ようし、こうするとよく見えるな」
「も、もお〜、びっくりした」
「ははは、実力行使だ」
 笑っているその目が、次第に熱っぽい光を帯びてくる。
「……かわいいよ、おまえは」
 頬に触れていたの勝真の手が、そのまま頭の後ろに回された。重ねられた唇の甘さに、花梨は身動きもできずに、酔っていた。押しては引き、押しては引き、幾度か唇をついばまれるうちに、勝真の腕が花梨の胴に回され、体勢が入れ替わる。
「ん……ぅん……」
 かたく広い男の胸が自分の胸元に押しつけられ、体重と体温がのしかかって来た時、花梨は本能的なおびえを感じて、身じろぎをした。
「や……勝真さん……」
 くちづけの合間に、ようやく洩らした抵抗を、勝真は聞き逃さなかった。
「あ……悪い」
 すっと身を引き、花梨を解放する。勝真のからだが離れると、花梨はぱっと身を起こし、髪を撫でつけ、スカートの裾を引っ張った。
「すまなかった……」
 重ねられた詫びの言葉に、花梨は首を振り、胸を両手で押さえながら、言った。
「ううん……。びっくりしただけ。その……私こそ、ごめんなさい……」
 伏し目がちの潤んだ瞳。羞じらいのためにほのかに染まった目元、くちづけを繰り返した後の濡れた唇。そんな花梨のたたずまいは、勝真の胸はかえって妖しく波立たせる。
 自分が性急すぎて、あどけないほど無垢な彼女を脅かしたことをすまないとは思う。だが……その脅えと羞じらいが、かえって女を感じさせるのだ。ふるえて高鳴っているはずの花梨の胸の鼓動を確かめたい。わき上がってきたそんな衝動を抑え込むために、勝真は拳をきつく握り、花梨から顔を背けた。
「勝真さん……? ごめんなさい、怒ったの?」
 か細い声とともに、花梨の手が伸ばされる。肩に触れるきゃしゃな手の感触に、ぞくりと反応した勝真は勢いよく振り返った。
「馬鹿! 俺が怖いんなら、今の俺に触るな! 歯止めが利かなくなるぞ!」
「ご……ごめんなさい」
「ああ、もう〜〜!」
 勝真は髪をかき回し、どかりと座って膝の間に頭を垂れた。
(勝真さん……)
 恋人の怒りを前にして、困惑と不安で、花梨の胸はいっぱいになった。大好きなひとなのに、なぜ拒んでしまったのだろう。そのために傷つけてしまった、と。どうしたらいいか、わからないまま、勝真を見つめていると、膝の間から、低い声が洩れて来た。
「条の三……国の礎たる民草の……臣の心得るべきは……」
 よく聞き取れないが、何かの条文のようにも思える。この展開と、堅苦しそうな文言との関連性がさっぱりわからず、頭が疑問符でいっぱいになった花梨は、思い切って再度呼びかけた。
「勝真さん?」
 それに応えるように、勝真は顔を上げたが、目は閉じたまま、まだ何かの文書の暗誦を続けている。
「…をもって……するなりっ、と!」
 締めの文言を言い終わると、勝真は目を開けた。その表情から怒りが消えているのを見て花梨はほっとした。
「勝真さん、今の、何?」
 問われて花梨を見返す勝真の口元には、笑みが刻まれていた。
「昨夜勉強した令の条文だよ。内裏勤めになるんなら読んでおけって、幸鷹殿が書物を貸してくれたんだ」
「ああ、そうだったの。何かと思っちゃった」
「ははっ、確かに俺の柄じゃねえな」
 勝真はくつくつと笑ったが、ふと真面目な顔になって言った。
「だが、今の俺には必要なことだ」
「うん、そうだね……」
 八葉として京を守った実績と、秀でた弓や乗馬の腕を買われて、勝真は近々京職の任を解かれ、武官として内裏に上がることが内定していた。当然官位もあがり、禄も加増される。下級貴族の勝真にしては、かなり段階を飛ばした出世である。それには検非違使の長官たる藤原幸鷹や、東宮である彰紋の推挙があったことは言うまでもない。
 待遇がよくなることは無論だが、名ばかりの閑職に置かれて、本来の才覚と熱意を発揮できない不満を抱え続けてきた勝真にとって、新たな仕事の場が与えられることは、何より喜ばしいことだった。
「勝真さんが、新しいお仕事、頑張ろうって思ってる気持ち、わかるよ。でも、無理はしないでね? 遅くまでお勉強して、あまり寝ていないんじゃない?」
「そうだな。だが、今頑張らないで、いつ頑張るんだ? 俺を推挙してくれた彰紋様や幸鷹殿のためにも、宮中のうるさい連中に、後ろ指を指させないようにしないと。それに……」
「それに?」
 勝真は赤くなって、ぷいと顔を背けた。
「……おまえを嫁にもらうのに、一人前の仕事ができないようじゃ、困るだろ」
「……! 勝真さん……」
 思いがけぬ言葉に、花梨は口に両手を当て、まじまじと勝真を見つめた。
「……」
 無言の間があまりに続くので、不安を覚えて、勝真は向き直った。
「……もしかして、いやなのか? ……って、おまえ、何泣いてるんだよ?」
 花梨の頬をぽろぽろと伝い落ちる涙に、慌てた勝真が、その肩に手を掛けて、顔を覗き込む。
「あ……と、そんなに……泣くほどいやなのか?」
 花梨はふるふると首を振った。
「ううん、その逆……。私、うれしいの。勝真さんが私のために頑張ってくれてるんだと思うと……」
 勝真は、思わず安堵の吐息をもらした。
「何だよ、驚かすなよ」
「ごめんなさい……」
「謝るな。それより、いいんだな?」
「え? 何が?」
「あのな〜、恥ずかしいこと、何度も言わせるなよ。その……俺の嫁になるのかって話だよ」  
これ以上ないくらい赤面した勝真に向かって、花梨はにっこり笑ってうなずいた。
「……もちろん。とっても、うれしいよ!」
 この答えに、勝真は小さく拳を握ってみせた。
「ようし、今の言葉、取り消しできないからな?」
「勝真さんもね。取り消したりしたら、ダメだよ?」
「馬鹿、俺がそんなことするはずないだろ」
 こつんと頭を小突かれ、花梨はえへへと照れ笑いを浮かべたが、それは長くは続かなかった。勝真がその目に真摯な色をたたえて、花梨の瞳を正面からとらえたからだ。
「……約束だ。神子のおまえにふさわしい男に、きっとなってみせるから……。おまえは、俺の傍にいてくれ」
 勝真の熱情が、ただひとり、自分に向けられている、その事実が花梨の身も心もふるわせる。全身をつらぬくような、恐ろしいほどの幸福感の中で、花梨は答えた。
「……はい。私の方こそ……どうか、ずっとあなたの傍にいさせて下さい」
 言葉の代わりに、強い腕が伸びてきて、しっかりと花梨を抱き締める。
(もう、離さない……)
 勝真の無言の意思が、その腕から伝わって来る。花梨は目を閉じ、自分も正直な気持ちのままに、勝真の背中を抱いた。
(私も……もう、離れないから!)
 絆を確かめ合う二人の頭上の青く深い空から、ひときわ高く雲雀の声が降って来た。不思議な縁によって結ばれた恋人たちの絆を祝福するかのように……。

「……一緒の家に帰れる日が、来るんだよね」
 紫姫の館の門前までたどり着いた時、ぽつりと花梨がつぶやいた。勝真は、軽く花梨の頭を抱えて言った。
「ああ、そうだな。その日はそんなに先じゃない」
「ほんとう?」
「ほんとうだ。約束する。……だから、おまえも覚悟しとけよ?」
「え? 覚悟って、何?」
 勝真は、にやりと笑うと、花梨の耳に口を付けた。
「……一緒になったら、さすがに、おまえに触れるのをもう我慢しないからな。焦らした分、思い知らせてやるから、その覚悟をしとけ」
 熱っぽいささやきを吹き込まれて、花梨は、それこそゆでだこのように、真っ赤になった。
「……勝真さんのエッチ!」
「えっち? なんだ、それ?」
「知らない!」
 両手で顔を覆い、さっと門内に駆け込もうとする。
「あ、おい! まあ、いいさ。今度ゆっくり聞かせてもらうからな。おやすみ!」
 門の戸口の前で花梨は振り返り、勝真に笑いかけた。
「おやすみなさい。あの……あまり無理はしないでね?」
「わかったよ、じゃあな」
「うん」
 軽く手を挙げ、帰り道をたどっていく勝真の後ろ姿を、花梨はずっと見ていた。こうして見送る日々が、思い出に変わる時を信じて。
(その時は……それからは、もう離れないからね)
 勝真の腕の感触を呼び起こすように、花梨は我が身をそっと抱き締め、門の中に入った。せめて、夢の通い路で、また会えることを祈りながら。
 恋人たちの、残りすくない分かたれた夜は、こうしてしんしんと更けていくのだった……。                    
                            (終わり)


ってことで、「嫁に来ないか」勝真編でした〜。
(↓は彰紋編……というか花梨編?)
彰紋様に比べて、きっちり手を出してくれそうなところが、
ポイントです。
それを自制して頂くのが、また、いとおかしV
(もしかして、サド?^^;)
どこが誕生祝いなんでしょうね〜? まあ、新婚生活は、
仲良くやって頂きたいものです^^
それにしても、ダサいタイトルしか思いつけなくて……。
センスないなあ、自分^^;
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