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クラヴィス×女王リモージュの、手のひら小話です。
いつもの小話より、格段に短い手のひらサイズ。
闇様は、やはり艶っぽい方であってほしいという、
私の願望がもろに出ているあたり(笑)




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「つみびとの夜」

 月に一度、聖地にもほんとうに暗い闇夜が訪れる。
秘め事を、蒼くあぶり出す月光もなく、星明かりさえ息を潜めるような新月の夜。それがいつの間にか、私と彼との約束になった。
 まばゆい日の光の下では、私たちの恋は語れない。月の光にさえ、秘め事を暴き立てられそうなおそれを感ずる。だから、月に一度のこの日を待ちわびるのだ。

 表向きは何食わぬ顔を装う日々。私は重い冠を戴き、彼は己の中に満ちる闇のやすらぎを見つめている。女王として、守護聖として。宇宙を護り、育てる重責を担って……。
 彼がいなければ、私はきっと自分の肩にのしかかる重すぎる使命に耐えられない……。ほんの数年前、女王候補であった私に、彼は言ってくれた。「覚悟がないのなら、女王になるなど、やめてしまえ」と。迫り来る宇宙の危機を肌で感じていながら、その危機回避のために呼ばれた女王候補に対して、彼は何より個人の意思を重んじてくれたのだ。
 人を寄せ付けない、冷たく見える無表情の下に、彼が抱くのは透き通るような闇のやすらぎ……そして深奥でひそやかに燃え続ける紅い情熱。その火をかいま見た時、私は恋に落ちていた。
けれど……私の胸に芽生えた恋とは無関係に、事態は深刻化していった。宇宙を護る白い翼を、すぐにでも受け継ぐ者がいなければ、宇宙がこれまで刻んできた歴史も、命が夢見る未来も、すべてが崩壊する……。

 皮肉なことに、崩壊の足音が近づけば近づくほど、私は自分の中で、女王のサクリアが高まるのを感じていた。とうてい抱えきれない、無理だと何度否定してみても、あらがうことなどできないのは、何より私自身が実感することだった。逃れられないその運命を受け入れると決めた時、私は彼に思いを告げることにした。……女王ではない、ただの女の子であるうちに。そうして、彼への思いに、私の少女としての時間に、終止符を打つために。
 彼は、私の告白に、驚いたように見つめ返し……ゆるく微笑んだ。
「明日にも、女王になろうというおまえに、そのようなことを言われるとは思わなかった。……もう、運命の輪は回り始めているというのに……」
 いつもこっそり見とれていた、形のいい手が伸びてきて、私の頬に触れた。その指先にこもる熱に、思わずからだが震えた。彼はそっと身をかがめ、私の耳にささやきを注ぎ込んだ。
「……運命は変えられぬ。女王になるがいい……。だが、私は罪人になろう。宇宙の女王から、私だけのおまえを盗み取る罪人に……」
 初めて知った彼のぬくみと吐息が私を酔わせ、たかぶらせた。
「……私も、私も罪人になります。たとえ許されなくても……あなたをあきらめたくないんです」
 こうして、彼の情熱を私は手に入れた。

 待ちわびた今日、私は彼に会いにゆく。重い冠を脱いで、白い翼をおろして。夜の底を、自分の足で走ってゆこう。彼はきっと待っている。月の射さない夜に、更に色濃い木の下闇に身を隠して。
 広げられる腕は、私のもの。私が投げかけるこの身は、彼のもの。
そうしてお互いの熱に焼かれたなら。その灰からまた羽ばたいて、明日を乗り越えてゆける。この夜さえあれば……。

                             (終わり)


 自分としては、エッセンスのみ抽出した感じです。
今はそうでもないですが、私、アンジェにハマった当初は、
ほんとヤバイほど、闇様、好きだったので。

いつもは、こういうのを、更に練り練りしたり、ねじ込んだりして、
話が長くなってゆくという感じかな?
このエッセンスも、またいつか別の形で、仕上げられたらなと思います。
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