管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
カテゴリー
フリーエリア
最新記事
(08/27)
(05/22)
(09/26)
(08/03)
(07/20)
(06/28)
(06/10)
(05/26)
プロフィール
HN:
コマツバラ
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
ブログ内検索
最古記事
(09/13)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/18)
アクセス解析
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ええと、今回は土浦君小話です。 メル友のCさんに「サイトを持つようになったら、 かっこいい土浦君のお話をお目にかけたい」と 言っていたもので、書いてみました。 かっこいいかどうかは…まあ、読んで判断して頂 くってことで^^;
「戦利品」
今年初めての蝉の声を聞いたその日の午後、 校門前で偶然日野と出会った。
「一緒に帰るか、ついでだし」
声を掛けると、日野はこくんと肯き、俺の傍らを 歩き出した。
春のコンクールで知り合うまで、 その名前も知らなかった日野だが、今、こうして こいつが隣にいるのは、何というか、自然で、悪くない。
ごつい体格と顔のせいか、俺に相対する女子は、 大抵妙に固まったり、おどおどしたりする。 態度がいたって普通なのは、この日野と報道部の 天羽ぐらいなものだ。もっとも天羽の場合は、持ち 前のありがたくない報道突撃精神によるものなので、 残念ながら、いつも話していて楽しいわけじゃない。
気兼ねなく話せて、少々キツイことを言っても、 平気で切り返してくる女子。日野は、結構貴重な 存在かもしれない。いや、もしかしたら、それ以上 の意味でも……。
俺のそんな心情を知るよしもなく、日野は夏休み が近いことや、その前の期末試験のことなど、とり とめなく話している。あんまり内容がなくても、 こいつの話は、俺の耳に逆らわない。
そんなことを 考えていた時。
「あ……」
何かに気づいたように日野が、ふと足を止めた。
「どうした?」
日野の視線の先をたどり、ある家の塀の上から オレンジ色の実がたわわになった枝振りが覗いている のを、俺は認めた。
「ああ、びわだな」
「うん、うっかりしてたな〜。もう実る季節なんだね」
言いながら日野は、数歩先へ進むと、俺の方へ向き 直った。口元が、にっと笑っている。そして、俺の胸 の辺りから頭の先まで、測るように視線を走らせると、 更ににんまりとでもいうような笑いを浮かべた。
こいつがこういう笑い方をするのは、俺をからかお うとか、何か仕掛けようとか、大抵あまりよからぬこ とを考えている時だ。もっともいつも返り討ちにして やるんだが。
「なんだよ?」
一応警戒して聞き直すと、日野は俺の横にまわり、 ふわりと腕を取った。
「ねえ、これから、ちょっと付き合って? 私の思い 出の場所に」
「はあ?」
「ね? お願い」
普段はぽんぽん言いたいことを言うくせに、こういう 時だけは、妙にしおらしげに、俺を見上げてくる。それが 日野の手なのだとわかってはいても…。こいつの「お願い」 は、どうも断りにくい。それに…「思い出の場所」 とやらには、ちょっと興味がないわけではない。 今回はそれが理由だと、俺は自分を納得させた。
「しょうがねえなあ。付き合ってやるよ」
「やった! ほんとう? 土浦君なればこそ、行ってもらう 値打ちがあるんだよ〜」
満面の笑顔で言われて、不覚にも俺の心はぐらりと揺れた。
(俺なればこそ…って、どういう意味なんだよ?)
しかし日野の態度は、俺が想像するような意味でこの言葉 を言ったにしては……違和感がありすぎた。
「じゃあ、作戦開始〜、いざ、進め〜」
「おい! なんなんだ、一体?」
意気揚々と、俺の腕を引っ張る日野を見下ろしながら、 俺はこっそりため息をついた。
(深い意味なんて、あるわけないか…)
日野が俺を連れて来たのは、児童公園だった。 ここなら、何度か二人で来たことがあるじゃないか、と言お うとしたら、遊具のある広場をさっさと抜けて、奥の植え込 みの方へ、どんどん分け入っていく。
「おい、日野! どこ行くんだよ?」
「いいから、いいから」
……何がいいんだか、ちっともわかりゃしねえ。 脱力しそうになったが、乗りかかった船だ。仕方なく、俺は 日野の後に続いた。……しかし。俺は自分の制服の白いズボ ンを見下ろした。…おふくろにどやされるのは必至だ…。
雑草を踏み分け、ツツジの茂みを縫うようにして、日野と 俺は一番奥までたどり着いた。
「確か、この辺……。ああ、やっぱり、あった〜」
見ると、すっかり古くなった金網の一部が破れ、子供なら なんとか通れそうな穴が空いている。 「よかった〜。もう補修されてるかと思った」
「……日野、まさかおまえ、この穴をくぐるとかいうんじゃ ねえだろうな?」
「ピンポン、ピンポ〜ン♪ ワクワクするね」
言うや否や、日野は金網を更に押し開き、何のためらいも なく、穴の中に身を入れた。……ていうか、おまえ、女だろ! スカートだろ! そんなに身をかがめたら……。
目のやり場に困っている俺の男心など、まったくくみ取る 気配もなく、脳天気な声がかかる。
「土浦く〜ん、何やってるの? 早くおいでよ〜」
俺は思わず天を仰いだ。……なんで、高校生にもなって、 こんなマネを。ていうか、なんで、こんな女に、俺は……。
「ねえ、早く〜」
……腹をくくるしかない。俺の身長だと、ほとんど半分 に身を折らなくてはならなかったが、何とか穴の中に体を ねじ込んだ。穴を抜けると、そこは竹林で、日野がにこに こしながら、待っていた。
「大丈夫? よく通れたね。でも、さすが運動部だね〜。 体、柔らかいんだね〜」
「うるせえ。てか、おまえ、自分が女だって、高校生だっ て自覚あるのかよ」
「そんなの、自覚のあるなしにかかわらず、あからさまな 事実じゃん」
……俺は、それ以上言い返す気力を失った。
「さあ、これからがお楽しみだよ〜、行くよ〜」
げんなりしている俺を後目に、日野はスキップしかねな い勢いで、先へ進んで行く。
「はい、到着〜」
竹林の切れるところまで進むと、蔓草ののからまりついた 古い土塀に行き当たった。ざっと見たところ、相当広い敷 地を囲っているらしく、かなり裕福な家のものだろうと思 われた。 土塀の上からは、こんもり茂った庭木の枝が、勢いよく はみ出していた。
「土浦君、あれだよ、あれ、お願い」 日野の指す方向を見上げると、そこには実の重みで、たわむほど、鈴なりに実をつけたびわの枝が張り出していた。
(…なるほど、こういうことかよ)
「その身長を生かして、どうか、一つ…」
時代劇に出てくる悪徳商人のように揉み手をする日野。 わずかでも、期待した俺がバカだった。自嘲しつつ、手を 伸ばしかけて、俺は、はたと気づいた。
「おい、日野。まずいんじゃないか、私有地だろ、ここ。 竹林の中に“タケノコ採るな”って、立て札もしてあったぞ」
「ああ〜、竹林は管理している人がいるみたいだけど、 ここのお家は、大丈夫だよ。何年も空き家だもん」
言われてみれば、確かに土塀もところどころ崩れている し、庭木も伸びほうだいで、荒廃している感じはする。
「だから、タケノコはダメだけど、びわはいいの。 どっちみち野鳥のエサになるんだから、私たちが少しぐらい もらったって、罰は当たらないって」
そして日野は、ふっとびわの実を見上げた。
「子供の頃、ここを見つけて、ずっと採れたらいいなあって、 見上げてたの…」
……わかった。わかったから、びわをそんな切なそうな目で 見るなっての。
「……採ってやるよ。ただし、少しだけだぞ?」
「うん!」
こういうのを、多分無垢な笑顔っていうんだろう。 たく、そんな笑顔を向けられる俺の気持ちも、少しは考えろ。 そんな思いをうっちゃりつつ、俺はとりあえず手の届く枝を 引き下ろし、空いた手で実をもいだ。俺が落とす実を、日野は 嬉々として拾い集め、さっき立ち寄ったコンビニの袋に入れて いく。まあ、こんなもんだろうと、手を止めようとしたその時 だった。
「いいやああああああっ!!!!」
日野がとんでもない悲鳴を上げた。
「うわっっ」 俺の方が肝をつぶした。
「おい、なんて声出すんだよ!」
慌てて、枝を離し、傍に行った俺の胸に、日野が飛び込んで来た。
「取って! 早く! お願い、お願い〜〜!!!」
言われてみると、日野の肩の上で、毛虫がもくもくと歩い ていた。
「ああ、これか。ほら、取ったぞ」
指先でつまみ取り、そっと草の葉の上に置いた。
「ほんと? もういない?」
「ああ、それにしても、なんつー声を出すんだ」
「だって、苦手なんだもん、毛虫だけは」
涙目になった日野がふくれてみせたその時。 土塀が曲がって続いていると思われる角の辺りから、 人声がした。
「今、何かすごい悲鳴がしなかったか?」
「ああ、こっちの方から聞こえたぞ」
何人かが近づいて来るようだ。人の家の木の実を採って いるってのも、基本的にまずいが、涙目になっている 日野。その傍にいる俺。いらない誤解を生みそうな シチュエーションだと、瞬時に判断した。
「おい、逃げるぞ!」
二人分の通学カバンを、手早くかき集めると、俺は日野 の手を取り、脱兎のように、元来た方へ走り出した。
「足…足、速すぎるよ、土浦君〜」
「うるせ! それぐらい我慢しろ! 自業自得だ!」
日野の泣き言は、とりあえず無視して、竹林を抜け、あの 穴を再びどうにかくぐって、児童公園までたどり着いた時に は、俺の息は上がっていた。平坦な道なら、普段の俺にとっ ては、どうってことない距離だが、足場が悪かったのと、 日野を守らなければという緊張感を伴っていたせいだろう。
日野も大きく肩で息をしている。二人で、どっとベンチに 座り込んだ。しばらく無言で息を整え、ようやく話せるよう になった日野が言った。
「あ〜、息、苦しい。でも、面白かったね! どきどきしち ゃった」
「おまえは〜〜、変なことに俺を巻き込みやがって。でも、 確かに面白かったな」
喉の奥から、笑いが込み上げてきた。二人でバカみたいに 大笑いした後、日野が俺の目を見つめた。
「土浦君に、お礼しなきゃね」
「いいって、そんなの」
「ううん、待ってて」
日野はすっと立ち上がり、水飲み場の方へ駆けていった。 ビニール袋から、何個かびわを取り出し、水洗いをすると、 俺の傍へ戻ってきた。そして、手早く皮を剥いたびわの実を……。
「はい、戦利品。あ〜ん」」
「よせよ、恥ずかしい」
顔を背けようとしたら、日野はちょっと眉根を寄せ、一心に 俺の口元を見つめる。
「だめ、ちゃんと味わって。あ〜ん」
……言いながら、半開きになった唇が、妙に色っぽい。俺の中の 欲を刺激する。それとともに、日野との帰り道からのこの何十 分か、何とか収めてきた感情の波が高くうねり始める。
(味わえってんだな、よおし)
俺は、日野の手首を捕まえると、その指先ごと、びわの実を口 に含んだ。驚いた日野が、慌てて指を引いてから、実を噛みし めた。甘酸っぱい味が口に広がる。
「おまえも、味わえよ」
言いながら俺は、日野の手首を引き、唇を合わせた。舌先で唇 をこじ開け、俺の口からびわの実を流し入れた。日野は空いた手 で、俺の顔や肩を押しのけようとしたが、難なく押さえ込み、 じっくりと味わった。びわと…日野の唇の味を…。
しばらく日野は、顔を真っ赤にして、うつむいていた。 そして、ぽつりとつぶやいた。
「ひどいよ〜、土浦君。いきなり…」
「……イヤだったのか?」
問うと、日野は一瞬はっと顔を上げ、しばらく首を傾げて 考える風だったが、やがてゆっくり首を横に振った。
「……ううん。ビックリしただけ」
「そっか…」
日野の言葉に、俺は心底ほっとした。
「帰るか?」
「うん、あ…」
ベンチから立ち上がり、歩き出そうとした時、日野が小さな 声をあげた。
「どした?」
「びわ、半分こしようよ。土浦君が採ってくれたんだもん」
言いながら、ビニール袋を開けて、びわを取り出そうとする 日野の手を俺は押しとどめた。
「俺はいいから、おまえが全部持って帰れよ」
「でも…戦利品…」
「子供の頃から、ずっと食べたかったびわだろ? それに戦利 品なら、俺は十分もらったさ。おまえからな」
言いながら、指で唇に軽く触れると、日野はうつむき、それ こそ首筋まで朱に染めた。
「……十分なら、もう、あげない!」
「いいや、これから、もっともらうさ。…おまえさえ、イヤ じゃなきゃな」
情けないことに、語尾がちょっと震えてしまった。 日野は顔を上げ、俺の目をしばらく見つめた。心の奥底にもや い綱を掛けようとするかのように。そして、微笑んで言った。
「イヤ……じゃないよ? 前向きに検討するね」
胸の中に、日野のあたたかさが染みて広がった。思い切り抱 き締めたかったが、それでは日野の精いっぱいの答えに対して、 あまりにせっかちに過ぎる気がした。
「ああ、そうしてくれ」
感情のぶれが極力出ないようにして、やっと言えた言葉は、 それだけだった。日野は、軽くうなずくと、胸の前で小さく 手を振った。
「じゃあ、今日は、ここで。付き合ってくれて、ありがとう。 また、明日」
「おう、また、明日な」
日野は、もう一度、俺にうなずきかけると、さっと身を翻し、 駆けだした。長い髪が羽のように舞い踊るその後ろ姿が、角を 曲がって消えるまで、俺は見送っていた。
そして、帰宅した俺の、泥汚れのみならず、かぎ裂きまで作 った制服のズボンを目にしたおふくろが、般若と化したのは、 言うまでもない。
「…戦利品だけじゃなく、賠償請求しても、いいかもな…」
クリーニング代と、かぎ裂きを補修する(おふくろの)手間賃 をむしり取られ、薄くなった財布を眺めながら、俺はつぶやいた。
また、明日…。日野の声が、ふっと俺の耳に甦る。 そう、明日、また、日野に会える。俺たちの新しい関係が始まる。 おまえが引き出したのは、俺の中に眠っていた音楽への思いだ けじゃなかったんだな。俺も……おまえの中の情熱を、引き出して みたい。
「…ガキみたいなヤツだからな。長期戦になりそうだ」
けれど、日野のために、いくらでも時間を掛けられる自分を、 俺は確信していた。 ハンガーに掛けながら、ふと見ると、制服のシャツの袖口に、 オレンジ色の染みが付いていた。
「これから、びわ食うたびに、思い出しそうだな」
俺は、そっとその染みに唇を押し当てた。甘酸っぱい日野の香 りに、ふわりと包まれるような気がした。
「おやすみ、日野。また、明日な…」
(終わり)
土浦君も何とか男の意地を示せたのでは、ということで^^; 植えっぱなしなんで、多分あんまり甘くないびわだと思うんで すけどね。そこはそれ、土浦君にはもう、甘く感じられたので しょう。さんざん焦らされた後だけに(爆) ああ、それと、種を飲み込むと危ないですから、よい子の皆さ んは、マネしないでねV (ていうか、つっこまないでねV)
このお話に関しては、以前本館で載せた時に、感想コメントも頂いたのですが、こちらに反映できません……。恐らく私の動作環境のためです。コメントを下さった方々、ごめんなさい。
PR
この記事にコメントする