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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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1月のCOMIC CITY大阪で配ったペーパーに載せたものです。
ヴィクトールのお誕生日祝いということで、書きました。
がむばれ、ヴィクトール!(笑)

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「彼 ココニ 善戦ス」

「……いや、困った。どうしたものか……」
 ヴィクトールは、いつものどっしりと落ち着いた彼には似ない速度で、私室の中をぐるぐる歩き回っていた。
 小卓の上には、今朝届けられた、花をあしらった美しい籠が置かれている。それは、意中の人、女王補佐官ロザリアからの贈り物だった。
 籠の中には、ロザリアのお手製と思われるマフィンがたくさん入っている。その大量のマフィンの贈り物は、まったく問題ではない。ロザリアのお菓子作りの腕前は、今まで何度か招かれたお茶会で、実証済みである。
 この見た目もにおいも、おいしそうな大量のマフィンを、さして時間もかけず、たいらげる自信がヴィクトールにはあった。だが独り占めするのは、恐らくロザリアの意には沿わないだろう。後で、同僚の教官たちや、生徒である女王候補たちと、分け合って食べようと、ヴィクトールは楽しく考えた。
 問題は、この贈り物に添えられた、手書きのカードだった。ほのかに花の香りのするそのカードには、独特の優美な筆跡で、二週間後のヴィクトールの誕生日にささやかな祝いの席を設けたいこと、ヴィクトールの許しと、出席を求める旨が記されていた。
「誕生祝い……。そういえば、そうだったな」
 軍人として、常に厳しい現場に身を置いて来たヴィクトールにとって、自分の誕生日など、さして重要視するものではなかった。ただ、何年かごとに更新の必要がある身分証の書き換えを思い出す程度だった。
 それでも妹からは、毎年欠かさず、身の回りの品や郷里の食べ物が、箱詰めで送られて来て、胸のあたたまる思いがしたものだ。
 身内ならともかく、自分の誕生日をわざわざ祝ってくれようというロザリアの厚意は、身にしみて嬉しく、ありがたかった。
 早速快諾の返事をするところだが、ヴィクトールは何か引っかかるものを覚えて、改めて文面を読み直した。
「こ……これは!?」
 ヴィクトールは、思わず目を剥いた。そこにはくっきりと“私邸で”と記されているではないか。いつもお茶会などが催される聖殿の中庭や、テラスなどではなく、ロザリアの私邸で、ということは、完全にプライヴェートである。そして、それは女王補佐官の教官に対する心遣いではなく、ロザリアのヴィクトールに対する個人的な好意によるものであることを、物語っている。
「……まさか、ふ、二人きり、ということでは??」
 ここまで考えて、かつて経験のない“のぼせ”に支配されたヴィクトールは、しばし思考能力を失ってしまった。しかしそこは、何度も修羅場をくぐり抜けて来た軍人である。鍛え上げた危機管理への感覚が警鐘を鳴らし、数瞬後には、はっと我に返った。自分の両頬をぴしゃりと叩くと、考えをまとめ始める。
「何を血迷っているんだ、俺は。二人きり、なんていうことがあるはずがないだろう」
 また、ここで早急にきちんと返事をしなければ、ロザリアのせっかくの好意を無にするだけでなく、他の客人への招待状の発送を含めて、一切の準備に彼女が取りかかれないであろうことに思い至った。
 ヴィクトールは、早速コンソールに向かい、聖地内に張り巡らされている通信網を使って、ロザリアに快諾と感謝の返事を送った。そうして、ほっと一息をついたところで、新たな問題点が浮上した。
 ロザリアがわざわざ催してくれる、そういう場所に、どういう服装で、また招待に対する感謝のしるしとして、何を持参すればよいのか、ということだ。
 長い軍隊生活で、少数の女性の同僚以外、日常接することもなく、ましてや、ロザリアのようなタイプの女性と交流することなど皆無だった。
 どうしたら礼を失することなく、ロザリアに喜んでもらえるのか。もし失敗して、ロザリアに嫌われるようなことになったら……。
 かくして冒頭のごとく、絨毯をすり減らすほど歩き回って、考えあぐねるはめになった。軽く聖地を一周できるぐらいの距離を踏破したところで、とうとうヴィクトールは白旗をあげた。自分では、どうしようもないことは、人に助けを求める他はない、と。
 しばし熟考した挙げ句、ヴィクトールは、ティムカを相談相手として選んだ。
若年ながら、その才能を認められて、品位の教官として聖地に招聘されたティムカは、ヴィクトールの目から見ても、さすがと思わせられるものがある。
 また王族である彼は、こういう場合にふさわしい作法を、熟知していると思われる。加えて、素直で誠実で、ぶしつけに詮索したり、余人によけいなことを言うようなことはあり得ないという点で、信用が置ける。
 ヴィクトールは、思い切って、ティムカの執務室のドアを叩いた。

「え? 身分の高い若い女性に招かれた時の服装と、贈り物、ですか?」
 遠慮がちにヴィクトールが切り出した問いに、ティムカは面食らった。よりによってヴィクトールから、このようなことを聞かれようとは、夢にも思わなかったためである。
 しかし、そこは年に似合わない聡明さを備えたティムカである。この年長の同僚が、相当の葛藤を乗り越え、恥を忍んで自分に尋ねに来たであろうことに、すぐに思いが及んだ。また日頃から、自分にも温かい言葉をかけ、何くれとなく配慮もしてくれるヴィクトールの、役に立ちたくもあった。
「そうですね。公のものか、プライヴェートなものか、また夜か昼かによって、変わってくると思いますけど……」
 言いながら、視線を返すと、ヴィクトールはちょっと小首を傾げて考え、律儀に答えた。
「昼間の……プライヴェートな集まりだ」
 ここで、ヴィクトールが赤面したことで、ティムカはある程度の事情を察した。だが、賢しくも自分が気づいた様子を、一切表には見せなかった。
「でしたら、略式の礼装でいいとおもいます。贈り物は……やはり花が無難じゃないでしょうか」
「は、花!? この俺が持って行くのか!?」
「ええ。あまり高価な品物も、かえって失礼ですから、その辺りがいいんじゃないかと」
「う、う〜む……」
 無骨な自分が、女性に花を贈る……その違和感に頭を抱えたヴィクトールだったが、ティムカがそれを最善と言うのなら従おうと腹をくくった。
「おまえがそう言うのなら、それが一番いいんだろう。感謝する」
「いいえ。お礼を言われるほどのことでは、ありません。僕も、いつもヴィクトールさんには、お世話になってますし。ご招待の席で、ヴィクトールさんが心地よく過ごせるよう、僕も願ってますね」
「ああ、ありがとう」
 ヴィクトールは、にっこりと頷き、晴れ晴れした様子で、室を出て行った。
(ヴィクトールさん、どうか頑張って!)
 そんなヴィクトールに、ティムカは拳を握って、声には出さないメッセージを送っていた。

 そして、いよいよその日がやってきた。いつにも増して早く起床したヴィクトールは、シャワーを浴び、クリーニング済みの軍の第二礼装に、もう一度ブラシを掛けた。(すでに五回目である)
 出発の三十分前には身じまいを整え、何度も姿見でチェックをし、髪も撫で付けた。(いくら撫で付けてみても、彼のこわい髪が立ち上がって来るのは、いかんともしがたかったが)
 事前に花屋に注文しておいた花束も、無事手元に届いた。意を決してヴィクトールは花束を抱え、出来うる限りの準備を整えて、ロザリアの私邸に向かった。
 そうして到着した誕生会の席。ロザリアのこぼれるような笑顔に迎えられたヴィクトールは、とんでもない危機に直面することになった。
 ロザリアが招いたのは、主役であるヴィクトールただ一人だったのである! それからの数時間、ロザリアという、このうえもなく心拍数と血圧に悪い相手を前に、ヴィクトールがいかに善戦したか。当の本人とロザリアのみが知る……。                        
                              (終わり)


相談相手は、セイランにしようかとも思ったのですが。
彼は、形式を重んじるタイプではないので^^;
それにティムカの方が、フツウに親切ですからね〜。
(セイランの親切は、少々屈折気味・笑)
楽しい誕生会の席になったと思います。
てか、罠にかかった獲物よろしく、ロザリアに押し倒されたらいいよ(笑)
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無題
コマツバラさーんっ!!(叫び)
うわー///ヴィクさまがかわいいです!あ、かわいいっていうのは失礼なのでしょうか??えと…癒し?(笑)
何気にヴィクさまの創作読むのって好きなんですv
ロザリア相手なのはAVPで拝見したのが初だったのですけど。
AVPに投稿されたお話も、またアップされて嬉しいです〜v
宏菜 2009/04/03(Fri)19:39:34 編集
ため息が出る~
コマツバラさん、こんにちは。萌です。
AVP中は大変大変お世話になりました。
なおかつ最後の最後にとびっきりの置土産(?)までいただきまして、もうあれだけで、しばらくはチャーリー萌えMAXでチャージ不要っす。

お礼かたがたふらふら~っと遊びに来たら、なんと素晴らしいことにヴィクロザが!
何でしょう、この純情オヤジは!
絨毯がすり減るほどって、着ていく服に5回もブラシを掛けるって!もうこれじゃヲトメじゃないですか!
そしてそんなヲトメを押し倒す漢なロザリアって(大爆笑)

また来ます!絶対来ます!そして隅から隅までいっぱい読みます!
ではっ!
2009/04/03(Fri)20:27:46 編集
無題
あははははは~!罠ですか!この後ロザにヴィクが押し倒されるお話だったんだっ!?(そりゃもう逃げようがないな!笑)
ヴィクロザはロザが押してる感じがいいですよねー。食べちゃえ食べちゃえ、がぶりといっちゃえv
そして、なんというか、ヴィクロザの輪に涙浮かぶ今日この頃ですv(↑だって賛同者様がこんなに…!歓喜)
ののん 2009/04/03(Fri)22:59:25 編集
わわっ♪
たくさんコメントを頂き、ありがとうございますV

>宏菜さん
いやん、名前、叫ばれちゃったわV
この話に関しては「かわいい」で、ストライクざますよ〜。
なにげにヴィク創作、お好きなんですか。
きっと彼のどこかに宏菜さんのハートを吸引するものがっ!
オヤジスキーと呼ばれることを恐れず、これからも萌えて下さい(にっこり)
ヴィクロザはかなり希少性が高いようです(笑)
もっと普及したらいいなと思います^^


>萌さん
ああ、いえいえ、こちらこそエルンストさんには、いっぱいお世話になりましたV(競争率が高かったので、エスコートして頂く機会には恵まれませんでしたけど・笑)
萌さんは、いつもゲストのためにキャラを演じて下さっていたので、私ごときのやったチャーリーを気に入って下さったのなら、喜んでもらいたかったなあと思いましたのです。(そのため熱い告白というよりは、未練たらしかったですね、アレは^^;)

ヲトメオヤジ! 萌さんの書かれた、素敵に大人なヴィクトールとは、隔世の感がありますね〜。私、トロワのヴィクトールEDの絵が好きだったので、それをロザリアでやられた日には、も〜、うっとりでございましたよV

多分このヲトメオヤジは、ろざりんの前では、固まるでしょうから、か弱い淑女であるろざりんでも、難なく押し倒すことが可能と思われます^^
また、お立ち寄り下さったら、嬉しいです〜V


>ののんさん
そらもう、本気出したろざりんから、逃れられはしますまいよ(笑)
ヴィクトールは、いろいろためらいがあるので、まず押さねば!
ではないか、と。 脇辺りからさわさわ攻めて、最終的にがぶり! 
ですかね^^
ののんさんが、たった一人の覚悟で歩んで来られた道のりを思うと、
私も涙を禁じ得ません(;;)
「そうさ、君は〜独りじゃない〜♪」ですよV
これからもフロンティア・スピリッツで頑張りましょうね!




コマツバラ URL 2009/04/04(Sat)00:38:31 編集
無題
コマツバラさん、こんばんは!
うわー、なんですかこの可愛い(失礼)ヴィク様はー!
ご挨拶にお伺いしたら、こんな素敵なヴィクロザが…!

本当に善戦しましたよ、彼は…!(ほろり)
相談相手は、ティムカで正解ですね、きっと。セイランだったら面白がってとんでもないことを吹きこみそうです(笑)
時間前に準備万端整えて、そわそわしているヴィク様v
なんだか思春期の少年の初デートを見守る気分でした(笑)

で、このあと彼はロザリアに押し倒されたのでしょうか?
そこのところが非常に気になります(笑)
2009/04/05(Sun)00:19:23 編集
わ〜い♪
汀さん、いらっしゃいませ〜V
こんな僻地まで甥で下さって、ありがとうございます。

ヲトメオヤジなヴィクトールに、ほろりとして下さったのですか!
そう、本来の彼は、見た目も情緒も、どっしりとした大人の男性だと
思うのですがね。どこか純朴というか、スレてない印象が、私には
あるのです。そんで、こんだけときめいちゃったのって、
多分彼にとって、人生初体験なんですよ(妄想まみれ)

セイランは、多分本題の相談に乗る前に、いたずら心を出して、
愛があるゆえのいぢわるをするんじゃないでしょうか(笑)
この話の、いっぱいいっぱいなヴィクトールには、それを受け流す
ゆとりは、多分なかったと思います。
なんだかんだ言って、セイランも最終的には手を貸してくれそうです
けどね。
(実はセイランが後押しのようなことをする話も、AVP期間中に書きました。汀さんの素敵セイラン様には及びませんが、彼が話に登場したのは、
多分、セイラン様の影響だと思います)

ロザリアに押し倒されたかどうかは、私も気になりますね〜(笑)
それは二人の間のヒ・ミ・ツ♪ ってことで^^
コマツバラ URL 2009/04/05(Sun)15:58:44 編集
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