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管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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一周年記念に、ちどりさんからリクエスト頂いた小話です。
「ヘンな那岐」というのをご所望でしたので、
やってみましたが……。どうよ、これ?^^;
あ〜、一応シリアスに見せかけたギャグもどきとゆーことで。
笑って許してやって下さい(汗)

なお、このSSは、ご本人のみお持ち帰りOKでございます。
ちどりさん、リクありがとうございましたV

拍手




『秘やかにしておきたい』

「あ、那岐、ごめん」
 千尋は、今し方スーパーで買ってきた物を、レジ袋から取り出しながら、那岐に声を掛けた。
「アイスコーヒー、加糖のヤツ、買って来ちゃった」
 那岐は、形のいい眉をわずかにしかめた。
「またかい。シロップで甘さを調節できるように、無糖のにしてくれっていつも言ってるじゃないか」
「うう、ごめん。両方同じところに陳列してあったんで、つい」
「ここにちゃんと表示があるよ。たく、注意散漫なんだから」
 つけつけと言われて、千尋は小さくため息をついた。那岐の口の悪いのには慣れっこになっているとはいえ、少々閉口してしまう時もある。
「……那岐の奥さんになる人って、苦労しそうだよね」
 ぼそっと呟くと、那岐は白いまなじりの辺りに、ほのかに色を上せた。
「大きなお世話だ。ほんとに千尋には付き合ってられない。僕は部屋で昼寝する!」
 ダン、ダンっと足音を響かせて、那岐が二階へ上がっていくのを見送りながら、千尋は肩をすくめた。
「何、怒ってるのよ。そういうところが難しいんだってば」
 千尋は、那岐を怒らせる原因となった、レジ袋を見やった。
「今日は、きのこいっぱい買って来たのにな」
 千尋は、軽く息を吐くと、夕食の支度をするために、手早くエプロンを付けた。メニューを那岐の好物のきのこ入りのパスタにしようと思いながら。


 昼休みの中庭には、そこここに昼食の輪ができる。日差しにあたためられた芝生の上は心地よくて、弁当を広げるのに、正にうってつけだった。
(今日のきんぴらの出来はまあまあかな)などと思いながら、箸を使っていた千尋は、差し向かいに座っている仲のいい級友に、急に膝を詰められて、危うく喉に食べ物を詰まらせそうになった。
「だから、ねえ〜、行こうよ、千尋!」
 ペットボトルのお茶で食べ物を何とか流しこむと、千尋は友人に答えた。
「なんで? デートなんでしょ。彼と二人で行けばいいじゃない」
「いや〜、そこなんだけど〜。中学の時からずっと友達感覚で来たから、今更恥ずかしいっていうか……。彼も、そうみたいでさ。だから、お互い友達連れて来ようっていうことになったの」
「でも、なんで私?」
「それは〜彼の友達が、前から千尋のこと、気になってるみたいなんだよね。でも、なかなかきっかけがなかったんだって」
 その言葉に、千尋本人より他の少女たちが、さざめき立った。
「わあ〜、それって、もしかして恋の予感?」
「いいなあ、千尋。モテ期が来たのかもよ、このこの〜」
 口々に冷やかしたり、周りの方が楽しげに盛り上がる中、千尋は困ったように眉をひそめた。
「そんなこと言われても、私、その人のこと、全然知らないし」
「だから〜、今度のダブルデートでお互い知り合えばいいじゃない。千尋にだって、彼氏ができるチャンスかもよ? だから、行こう! ねっ?」
 いささか強引に話を運ぼうとする友人に、反論しようとしたその時だった。
「そんなの、行く必要ないよ」
 千尋たちが座っているすぐ傍の植え込みの向こう側に、姿を現したのは那岐だった。不機嫌そうに眉を寄せ、植え込みの切れ目を抜けて来て、少女たちのすぐ目の前に立った。
「那岐!?」
「きゃ、那岐くん、もしかして、今の話、聞いてたの?」
「聞いていたも何も、至近距離でピーチクパーチクやられたんじゃ、イヤでも耳に入るだろ。気持ちよく昼寝してたのに」
 言いながら那岐は、千尋を見下ろした。
「で、言っとくけど、行く必要ないから」
「那岐……」
 千尋が言葉を返すより早く、先ほどから千尋を誘っていた級友が、不満げに言った。
「えー、那岐君には関係ないじゃん。横から入って来て、口出ししないでよ」
 すると那岐は、周囲の気温が2、3度は下がりそうな冷たい視線を、級友に当てた。
「……千尋だって、あんたの恋愛に関係ないだろ。巻き込むなよ」
 あまりの剣呑さに、級友は気圧されて黙り込んだ。それを見て、ようやく当事者の千尋が口を挟んだ。
「言い過ぎだよ、那岐。……私、別に行ってもかまわないんだし」
 那岐は、苛立ちを滲ませて、千尋を見た。
「……後でやっかいごとにならないように、予防線を張ってやってるっていうのに……。じゃあ、好きにしなよ。その代わり、泣き言は聞かないよ?」
 そう言い捨てると、強ばった背を千尋に向けて、行ってしまった。残された少女たちの間には、気まずい空気が流れた。
 別のひとりが言った。
「もう、教室に戻ろっか」
 それをしおに、一同はそそくさと自分の身の回りを片づけ、立ち上がった。楽しい時間が一転、後味の悪くなった感じは否めなかった。


 それから午後の授業の合間にも、下校時にも、那岐は千尋と一言も口を聞かず、さっさと先に帰ってしまった。その日委員会があったため出遅れた千尋は、家でもう一度那岐と話そうと、帰宅の足を速めた。
 できるだけ近道をして、家まで後少しという三叉路に来た時だった。千尋は、見慣れた姿が角を曲がって行くのを認めた。
「あれ、那岐? どこ行くんだろう?」
 その道の先は、ショッピングモールがある駅前のにぎやかなエリアではなく、町はずれへと続くはずだった。
(こんな時間に、あっち方面に何の用があるんだろう?)
 不審に思った千尋は、那岐の後を追いかけることにした。迷いのない足取りで進んでいく那岐の速度はけっこうなもので、なかなか追いつくことはできない。
 そのうち、住宅街を抜けて、田や畑が広がり始めたが、それでも那岐が足を止める様子はまるでなかった。車一台がやっと通れるほどの広さになった道をどんどん歩いて行き、やがてとある民家の横手から、裏山へ続く山道へと入って行ってしまった。
(那岐〜、どこまで行く気?)
 日もすっかり傾き、夕闇がそろそろ下り始めてきていた。こんな時間に、街灯もない山道を歩くのは、何とも心細くて、ためらわれた。だが、ここまでついて来て、那岐の目的を知ることなく帰るのは、どうにも納得がいかなかった。千尋は、もうほとんど意地で、那岐の後を追った。
 そうして気がつくと、うち捨てられて長い年月の流れた畑の前にやって来ていた。畑は、わずかに畝の起伏と用水路を残すのみで、草がぼうぼうに生い茂っていた。その畑の傍には、もう誰も住んでいない廃屋が建っていた。
(ここって……小学生の頃、お化け屋敷って言って、探険に来たところじゃなかったかしら。那岐ったら……高校生にもなって肝試しでもないでしょうに)
 家のトタン屋根は傾き、破れた窓ガラスから、生活の残骸が板間に散らばっているのが見える。お化けなど出ない、ただの廃屋だとわかってはいても、暮れなずんでいく中で、荒れ果てた風情でたたずむその姿は、あまり気持ちのいいものではなかった。
 那岐は、その不気味さにたじろぐ様子もなく、家の裏手にさっさと回っていく。千尋は、慌てて那岐に追いつくべく、小走りになった。この場所で、もう那岐と離れていたくはなかった。
 建物の後ろ側に回ると、荒れ放題の裏庭の一隅で、那岐がこちらに背を見せてしゃがみこんでいるのが見えた。
(ここが、目的地なの? 何をしてるの、一体??)
 胸の中にわき上がる疑問の答えを得るために、千尋は呼んだ。
「那岐!」
 那岐の後ろ向きの肩がぴくりと上がり、ゆっくりと千尋の方を振り向いた。
「千尋、なんだってこんな所まで来たんだ?」
 その顔は怒っているというより、心底呆れた様子だった。
(よかった……怒ってない)
 胸をなで下ろしつつ、千尋は更に追及した。
「それは、こっちのセリフだよ。何してんの、こんなところで。その手に持ってるのは、何?」
 那岐は、別段隠す風でもなく、千尋に手を広げて見せた。
「これって……ミョウガ?」
「そうだよ。見てごらん」
 那岐が顎で指す方を見ると、庭木の根元に、数え切れないほどのミョウガが顔を出していた。そして土の上には、那岐が今し方摘んだと思われるミョウガがびっしり入ったビニール袋があった。
「……あの、もしかして、これを摘みに来たの?」
「そうだよ」
「こんなところまで?」
「スーパーで売ってるのって、せいぜい3個ぐらいしかパックに入ってないし、ここだったら、採っても文句言われる心配ないし」
「……そんなにミョウガが好きだったの?」
 那岐は、むんずりと口を曲げた。
「好きっていうか……僕の精神衛生のためだ」
「? 何、それ?」
「ミョウガを食べると、物忘れをするっていう言い伝えが昔からあるんだよ。ほんとかウソか知らないけど……。だから、忘れたいようなことがある時は、食べることにしてるんだ」
 千尋は、もう一度ビニール袋に目をやった。
「こんなに、たくさん?」
「甘酢に漬け込んだら、結構食べられるよ」
 そう言われると、最近酢の減るペースがはやかったような気がする。
「食べてるの、見たことないよ」
「う〜ん、まあ、夜、思い出したくないことを思いだした時とかにね」
「どこに保存してるの?」
「冷蔵庫に決まってるだろ」
「でも、そんなの見たことないよ!」
「野菜室の奥だよ。もう、いいだろ!」
「……」
「……」
 そっぽを向いてしまった那岐を見ているうちに、千尋はすまない気持ちでいっぱいになった。
「……ごめん、那岐。私、ちっとも気づかなかった」
 那岐の目が、うつむく千尋に注がれる。
「こっそりこんなところまで摘みに来て、漬け物を自作して、夜中に食べるほど、ミョウガが好きだったなんて」
 那岐の肩が、がくりと落ちた。
(謝るところは、そこじゃないだろっ! たく、誰のおかげで、忘れたいことが増えてると思ってるんだ!)
 少しばかりおとぼけで、自分の魅力をまるで自覚していない、可愛い千尋。その傍にいることで、どれだけ自分が気を揉んだり、その結果、自己嫌悪に陥ったりしていることか……。
 しかし、さながら雨に打たれた花という風情でうなだれている千尋を見ていると、そんな恨み言を言う気も失せる。
「ああ、もう、いいから! 暗くなって来たし、一緒に帰ろう」
 そう言うと、千尋は上目遣いに那岐を見上げ、怒っていないことを確認して、安心したように微笑んだ。
「うん」
「じゃあ、行くよ」
 さっさと、先に立って歩こうとする那岐を、千尋は慌てて呼び止めた。
「あ、待って! 那岐ったら、せっかく採ったミョウガ、忘れてるよ」
 千尋が差し出す袋を、しかたなしに受け取ると、那岐はむんずりとして歩き始めた。
「それ、私が甘酢漬けにしたげるね。あ、カツオのたたきの薬味にしても、いいね。おみそ汁に入れてもいいし。那岐、堂々と食べていいんだよ」
「……」
 千尋が言葉を重ねれば重ねるほど、那岐の気持ちは下降線をたどった。
(これだから、いやだったんだ……)
 秘やかなストレス発散の手段だったミョウガが、新たなストレスの原因に変わったことに対して、千尋にわからないように、こっそりため息をつく那岐なのだった。
 家の門が見えるところまで来ると、風早が立っているのが、見えた。帰りの遅い二人を心配して、出てきたのだろう。
「風早、ただいま〜」
 千尋が駆け寄ると、風早は笑顔で出迎えた。
「お帰りなさい。随分、今日は遅かったですね。夕食の支度ができていますよ」
 那岐にうなずきかけ、千尋の背中を押すようにしながら、風早が片目をつぶった。
「今日は、お向かいの奥さんから、いい物を頂きましたよ」
「え〜、何〜?」
 子供のように期待して問い返す千尋に、風早は楽しそうに答えた。
「奥さんお手製のミョウガの漬け物です。絶品ですよ〜」
「わあ、ミョウガだって。よかったね〜、那岐」
 はしゃぐ二人から目をそらし、那岐は額を押さえた。
(……今日は厄日か?)
 人生というヤツは、もしかして自分をバカにしているのではなかろうか。
そんな暗い想念に、ふととらわれそうになる。
「那岐ってば、何してるの〜?」
「冷えて来ましたよ。早く家に入りなさい」
 ドアから洩れる燈火を背に、千尋と風早のシルエットが浮かび上がっている。
その光は、しかし、とても温かく那岐をも照らしているのだった。

                               (終わり)




那岐はデリケートなので、ささいなことにストレスを感じ、また溜めてしまうので、
それをうっちゃるために、しょっちゅう昼寝してるんじゃないかと思います。
ミョウガが物忘れをさせるというのは、俗説です。
あのぴりっとした刺激が、食欲増進につながるようなので、
めちゃくちゃ量を食べる年頃なのに、イマイチ食欲がなさそうな那岐には、
ちょうどいいかもしれません。
タイトルは、夜中にミョウガを食うこともですが、千尋ちゃんへの思いも、
那岐は秘やかにしておきたいだろうという、そんな意味で付けました。

ちどりさん、あんまり面白くならなくて、ごめんなさひ〜!>私信

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無題
こんにちは。早速リクエストにお答えいただき、ありがとうございました。携帯から夜中に暗がりで読んだんですが、「こっそりこんなところまで摘みに来て~」の台詞に吹き出してしまいました。
ミョウガは私には天敵ですが、那岐はああいうじじむさい食い物がすきそうです。
ナイーブ加地とデリケート那岐。どっちもガラスのハートの持ち主なんでしょうけど、加地のほうが世間と上手く渡り合っている&甘トークという切り札がある分だけごまかしがきくのかもです。
でも、はっきり言ってどっちも変だから!
こりずにまた書いていただけると嬉しいのです。
それと今更ですが1周年おめでとうございます。これからも応援してますので、いろいろな分野にチャレンジなさってください~
ちどり 2008/09/16(Tue)15:07:44 編集
粗品でございます
リクエスト、ありがとうございました^^
自分判定では、この話は擬音で言うと”ぷす”って感じの、
スカしっぺ的笑いが出ればいいかなと思いましたが、
笑って頂けたようで、ほっとしました。

>でも、はっきり言ってどっちも変だから!
人を煙に巻くか、見えないバリアを張るか、本心を見せない
ための方向性は違うようですが、二人ともヘンですね、確かに(笑)

>こりずにまた書いていただけると嬉しいのです。
精進させて頂ければ、と。水面下で思春期迷路な感じが、
那岐のポイントだと思っています。(難しいっすけどね^^;)

>それと今更ですが1周年おめでとうございます。これからも応援してますので、いろいろな分野にチャレンジなさってください〜
ありがとうございます(感涙) これからもたぶんごった煮だと
思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。
【2008/09/17 09:27】
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