管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
カテゴリー
フリーエリア
最新記事
(08/27)
(05/22)
(09/26)
(08/03)
(07/20)
(06/28)
(06/10)
(05/26)
プロフィール
HN:
コマツバラ
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
ブログ内検索
最古記事
(09/13)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/18)
アクセス解析
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
キリ番8888を踏んで下さった、小倉どらさんから
リクエスト頂きました、なぎちひ です。
「可愛くしてね♪」というご要望でしたので、
私なりに、その方向を目指してみました。
ご本人のみ、お持ち帰りOKでございます。
どらさん、リクエスト、ありがとうございましたV
リクエスト頂きました、なぎちひ です。
「可愛くしてね♪」というご要望でしたので、
私なりに、その方向を目指してみました。
ご本人のみ、お持ち帰りOKでございます。
どらさん、リクエスト、ありがとうございましたV
「忘れられた色」
時々、風早は、僕と千尋の間に、お菓子を一つだけ置いて、二人で分けるようにと言うことがあった。スナック菓子とか、ガムとか、まあ、いろいろだったけど、僕と千尋は、お互いの取り分が平等になるように、随分慎重に分けたものだった。(多分風早は、譲り合いとか、平等といったことを、幼い僕たちに、教えようとしたのだろう)
千尋が一つ、僕が一つ。那岐が一つ、私が一つ。
配るのは、暗黙の了解で、交代でやった。前のクッキーの時は、僕が配ったから、今回のキャラメルは、千尋が、といった具合に。
でも、ただ一つ、そんなルールを無視して、千尋が自分が配ると、譲らないお菓子があった。それは、カラフルにコーティングされた、チョコレートだった。銀色の眼鏡みたいな枠に収まったそのチョコを見ると、千尋は電光の速さで、自分の手の中に収め、有無を言わさない調子で言うのだった。
「これは、私が配るから!」
千尋が、なんで、そこまでそのチョコに執着したのか。理由はただ一つ“ピンク色”だった。くだんのチョコには、朱色や黄緑、黄色と何種類か色があるけれど、千尋は必ず何個か入っているピンク色を、すべて自分のものにした。
僕は、食べられれば色なんて、何だってよかったけど。千尋があんまり躍起になって、ピンク色を取るから、時々わざとため息をついて見せた。
「……まったく、僕のところには、いつも黄色と黄緑しか来ないじゃない。たまには違う色も分けてくれない」
すると千尋は、すまなさそうな顔をして、朱色を一粒か、二粒、僕によこす。けれど、どんなにあきれてみせても、軽く拗ねてみせても、ピンク色だけはダメだった。ああ、でも、一度だけ、さんざんためらった挙げ句「いいよ」って、笑って、一粒くれたことがあったっけ。
あのチョコは、あの時分、千尋が手にできる、それほど貴重なピンク色だったのだ。
風早は、なぜか千尋に一切ピンク色を身に着けさせなかった。グリーンや水色、黄色といった色の服ばかり選んで、千尋に着せていた。女の子をより可愛らしく見せ、小さな自尊心を満たす、ピンク色。千尋が、近所の同じ年頃の女の子の、ピンク色のいかにも女の子女の子した服装を、うらやましそうに眺めていたのを、僕は知っている。
それなのに、風早が、なぜ千尋にピンク色を禁じたのか。千尋に似合わないはずがない、むしろ千尋がピンクを着たら、そこいらにいる女の子よりも、もっとずっと可愛らしくなるのは、誰の目にも明らかだったのに。
千尋本人も、疑問だったろうけれど、僕も子供心におかしいと感じていたから、風早に尋ねたことがある。
「なんで、千尋には、ピンクの服がないの?」と。
すると風早は、例の穏やかなくせに、頑として根底は動かない笑みを浮かべて、答えたものだ。
「千尋は、可愛いだけじゃ、ダメなんですよ」
子供だった僕にしてみれば、その答えに、納得できないような、できるようなあやふやな感じだったけれど。風早が、誰になんと言われても方針を変えるつもりがないことは、わかった。
今なら、風早の意図していたところが、わかる気がする。
さらさらした金髪と青い目、白い肌。何も手を加えなくても、十分美しい千尋。着飾らせたら、きっとフランス人形のようになることだろう。
そんなちょっと次元の違う千尋の美しさを、更に際立たせるような装いは、人目を惹き付けもし、賞賛されることは間違いない。周囲に「可愛い、可愛い」とほめそやされ、評価され続けることで、千尋の中に虚栄心や、美しいことを第一とする価値観が育まれるのを、風早は恐らく避けたかったのだろう。
だからこそ、いやが上にも、千尋を可愛らしく見せるピンク色を排除したのだ。
事実風早は、千尋のことを大切にしていたけれど、決して甘くはなかった。それは僕に対してもだけれど、背筋を伸ばすこと、嘘をつかないこと、天に恥じない行動を取ること……とにかくまっすぐに生きることを、繰り返し粘り強く、しつけられた。
(僕の場合は、長じるに従って、一緒に千尋を護る同志として、みなすようになったので、そっちの方を言われることが多くなったけれど)
そのせいで千尋は、少々かた過ぎるぐらい、真面目で、責任感の強い性格になってしまった。でも豊葦原という国を、一身に背負って、戦わなくてはならなくなった今、千尋のその強さ、廉直さは、必要な資質だといえる。風早は、こうなる未来を見越して、千尋を育てていたのだ。
そうして千尋は、いつしかピンク色を求めなくなった。中学、高校になって、ある程度自分の好みで、服を選ぶのを許されるようになっても、ピンク色を手に取ることはなかった。
幼い頃、あんなにもピンク色に執着していたことを、からかい半分に指摘すると、小揺るぎもしない、まっすぐな瞳で言った。
「そうね。でも、今は、ピンクは私の色じゃないって気がするの」
成長過程で、周到に摘み取られた虚栄心や甘え。千尋のまっすぐな性格は、もちろん嫌いじゃなかったけれど、何だか風早の思う通りの型にはめられてしまっているようにも思えて、そこが、ちょっと気に入らない。
もし、その型を……はみ出させたら、どうなるのだろう。千尋を、思いっきり女の子らしく飾り立ててみたら? そんな好奇心が、頭をもたげる時がある。
もし、千尋に、風早ではなく、僕が何らかの影響を及ぼすことができるのなら、いつか、ピンクを身に着けるように、言ってみよう。
子供の頃、千尋があれほど欲しがっていたピンク色を、僕はあげることができなかった。だから、いつか、僕も千尋も、自分の足でしっかり歩いて行けるようになったら……。
そんな思いを、胸の中に、ずっと抱くようになっていた。
だから、僕の目の前で、無造作にそれをやられてしまった時、からだ中の血が沸騰するような気がした。
あの出雲の領主、常世の若雷シャニが、馴れ馴れしく、千尋にピンクの蓮の花を贈り……。毒も薬もない子供のすることだからと、千尋があっさり受け取って、髪に飾った時……! しかも、露をたたえた新鮮なその花が、思いのほか、千尋に似合っているのを見た時……!
……千尋を飾るピンク色は、僕が贈りたかったんだ……。
悔しいやら、腹が立つやらで、胸がぎりぎりと万力で締め上げられるようだった。もちろん、それが僕が勝手に思い決めたことなのは、わかっていた。だから表面上は、何とか取り繕ったけれど。怒りや悔しさが胸の中でないまぜになり、限界状態の風船みたいにふくらんで、どうかすると、爆発しそうだった。だから、それから後はできるだけ皆から距離を取って、接触しないようにした。
誰も気づかないうちに、そっとその場を離れ、落ち着ける場所を探す。自分を守るために。
僕は、そうやってひっそり一人になることに熟達しているはずなのに、なぜか千尋にあっさり見つかってしまった。
夕風の吹き始めた天の堅庭。僕のちょっとした隠れ場所を、千尋は探し当ててきた。
「那岐」
僕の名を呼ぶ千尋の、きちんと結い上げた髪の上に、まだ蓮の花はあった。
それを見たくなくて、僕はふいと目をそらした。すると千尋は、座っている僕の目の前にまで来て、顔を覗き込んだ。
「那岐。こんなところにいたんだね。ふいにいなくなっちゃうから、探しちゃったよ」
「ふうん? 何か用?」
不機嫌があからさまな僕の対応に、千尋が眉をひそめる。
「特に用があるってわけじゃないんだけど。その……姿が見えないと、気になって。それに、今だって怒ってるみたいだし」
「……別に、僕一人の姿が見えなくたって、今、千尋の周りには人がいっぱいいるんだから、かまわないんじゃない。初対面の子供が、花くれるほど、千尋には勝手に人がすり寄って来るんだしさ」
「周りにどんなに人が増えたって、那岐は一人しかいないじゃない! 代わりなんて、誰もなれないよ!」
そう言いながら千尋は、僕が髪に向ける視線に、何かを感じたのだろう。手を挙げて、花に触れた。
「もしかして、この花が気に入らないの?」
「……もう、萎れてるよ。取っちゃえよ」
「あ、うん」
千尋は、言われるままに、花を髪からはずした。花は、たしかに萎れかけていたけれど、受け取った時の淡いピンクが、時間を経て、色濃くなっていて、それはそれできれいだった。……そう、花には罪はない。ただ、一見無邪気さを装ったあいつが、他の女にするのと同じように、お手軽にピンク色のこの花を、千尋用に選んだのが、気に入らない。
黙り込んでしまった僕を、千尋が不安げに見つめる。
「あの……那岐?」
僕はようよう言葉を押し出した。
「ピンクは、千尋の色じゃなかったんじゃないのか?」
すると千尋は、こぼれそうなぐらい、目を大きく見開いた。
「え? 何を言ってるの?」
「千尋の色じゃないから、身に着けないんじゃなかったのか?」
「だって、お花だし、せっかくきれいなのをくれたから……」
戸惑いながらも、何とか僕に説明しようとする千尋を、傾きかけた陽の、淡い赤い光が照らしている。輝く髪、光に染め上げられた白い頬。……そして、熟れた野いちごみたいな唇。……ほんとに、ピンクが似合うよ、千尋には。
僕は、つと手を伸ばして、まだ何か言っている千尋のうなじに、手を回した。
「な、那岐?」
そのまま引き寄せて、唇をついばむ。千尋のあたたかい血の色が差した、どんな花より、いとしいピンク……。
そっと手を離すと、千尋は僕の前から飛びすさり、唇を手で覆って、まじまじと僕を見返した。
「……あんまり、僕に、安心するなよ」
それだけ言うと、僕は身を起こし、立ち上がった。千尋の傍らを通り過ぎようとした時、袖を掴まれた。
「那岐……今の……?」
かすかに震えている千尋の手を、僕はそっと振りほどいた。
「……これ以上、何かされたくないんだったら、僕を行かせてくれよ。理性ってものにも、限界があるんだから」
呆然とした千尋の視線が、背中を追いかけてくるのを感じながら、僕はその場を後にした。
ごめん、千尋、ごめん。
千尋の驚いた顔に、心の中で、何度もわびた。
ふとその時、遠い日に、千尋との間に繰り返したやりとりが甦って来た。
千尋が一つ、僕が一つ。那岐が一つ、私が一つ。
ごめん、千尋、ごめん。
今、千尋から盗んだピンクは、きっと返すから。
千尋が一つ、僕が一つ。那岐が一つ、私が一つ。
千尋が望むなら、千尋が生きるこの世界を、きっと美しいものにしてみせるから……。
懐かしい、あどけない声が、聞こえた気がした。
「いいよ、那岐にあげる」
そう言って、大切なピンクを一粒くれた千尋を、あの時からずっと、
これからもずっと、僕は愛してる……。
(終わり)
那岐は、風早に養われることを、まるっと素直によしとしてなかったんじゃないかな〜と思いまして。ああいう性格ですから〜。
那岐のように、デリケートで賢い男子は、自分にそういう要素が乏しいので、なかなか書くのは難しかったりします。(那岐らしくなっているか、実は不安・汗)
その難しい、彼の屈折したところが、いとしくもありますね。
こうした形で、書く機会を頂き、ありがたく思っています。
にしても、私の書く話には、麦チョコとか、マー◯ルチョコとか、やっすいお菓子しか出て来ない辺り(笑) 庶民だな、と。
PR