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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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予告通り、脈絡のない更新です(^_^;
好きなんですよ~、東宮さまV (たとえ、少数派でも、私、泣かない!)アンジェのティムカ様も、かなり好きですが、やはり雅さプラス少年っぽい笑顔とか! 涙とか! が、たまらんのですVVV 
写真は、某演歌にも、歌われているサザンカです。いや、その歌詞がなかなか美しい絵を思い描かせてくれたもので……そこからいろいろこねくり回して、彰花にしました。私にしては、甘いお話になったかな~と思われます。てへ。


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「紅、ひとひら……」


 雪が、降った。止まっていた時を、急ぎ取り戻すかのように、一夜をしんしんと降り込めた雪は、京を真白に染め上げた。
 その朝、彰紋は、花梨のもとを訪ねた。門番の一礼を受け、一歩足を踏み入れる。すると、館の下人たちが、母屋から門に至るまで、人が通れるように、雪をかき分けて道を作る作業をしていた。彼らは、彰紋を見ると、慌てて一斉に平伏した。
「申し訳ございません。まだ全部できておりません」
 頭らしい男が、申し訳なさそうに言うのに対して、彰紋は微笑んで、首を振った。
「いいえ。朝からご苦労様です。おかげで歩きやすくて、助かります」
「いえ、そんな、もったいないお言葉で……」
「皆さん、どうぞ立って下さい、お仕事の手を止めさせて、すみませんでした。続けて下さい。御苑殿や紫姫のために」
 一同にそう言うと、彰紋はゆっくりと踏み固められたばかりの道を通って、館の建物へと向かって行った。その背後で、下人たちは、緊張から解き放されて、わやわやと作業に戻った。ただ、頭の男だけが、彰紋のまっすぐな背を見送っていた。
(お若いのに、ほんに行き届いたお方だ。だけど……)
 館の中でも、身分の低い彼は、彰紋が八葉であること、東宮であることを知らない。館の奥に住まう乙女のもとへ通っているらしいと、下人部屋で噂になることはあったが。また、昨今の京の情勢が語られる中で「えらい神子様と、八葉と呼ばれるその従者が、穢れを清めて下さっているらしい」と聞くことはあったが。まさか、当人たちを目の前にしているとは、露ほども思わなかった。彼にとって彰紋は、身分の高そうな感じのいい若様、という程度の認識だった。
 それでも。無学ではあるが、人並みに世渡りの苦労をして来た彼に、推し量れる部分もあった。
(俺らが、あの年頃だった時分は、荒れ馬みてえに、跳ね回ってたもんだ。まあ、雲上人には、俺ら下々の者にはわからねえ決めごとや、縛りがおありなさるんだろうが……)
 いつ誰が見ても恥ずかしくないようにと、まっすぐ伸ばされた背が、少々痛々しく見える……。そんな考えをまとめる前に、声がかかった。
「もし、何をぼんやりしてなさるんで?」
 手下の者に、袖を引かれて。彼ははっと我に返った。
「何でもねえ。そんなことより、さあ、みんな、他のお客様が見えないうちに、とっととやっちまわねえと、御苑さまからお叱りを頂くぞ」
「はい!」
 一筋の白く細い道が、下人たちの手で、できてゆく。この細い道をたどり、花梨に会いに来る八葉たちが、どんな思いで、何に立ち向かっているのかを、彼らは知る由もないのだった。

 館の者に、花梨に面会したい旨を告げると、庭にいるとのことだった。彰紋は、建物に沿って、花梨の部屋に面した庭へとまわった。歩くと足が沈むほど雪の積もった庭には、誰の影もなく。花梨の姿を求めて、あちらこちらに目を向ける彰紋の視界に、ふと鮮やかな紅い色が飛び込んで来た。それは、雪の積もった葉の間から顔をのぞかせた、サザンカの花だった。
 真白な雪の中で、ぽつりと紅く浮かび上がるその鮮やかさに、吸い寄せられるように、彰紋は傍へ寄った。枝を掴み、軽く揺すると、葉に積もった雪は落ち、その下からいくつも花が姿を現した。しかし、それと同時に、花びらも幾分落ちてしまった。雪の地面に舞い散ったその紅を、彰紋は惜しいと思った。自分が揺すらなければ、まだ散らなかったかもしれない、と。
 その時、背後に人の気配がした。
「何をしてるの、彰紋君?」
 振り向くと、そこには、彰紋が心秘かに“天女”と呼ぶ少女がいた。その曇りない、笑みを含んだ瞳に、胸を高鳴らせながら、彰紋は答えた。
「おはようございます、花梨さん。庭にいらっしゃると聞いて、こちらにまわらせてもらったら、このサザンカの色が目に付いて」
「そうだね。雪の中で、紅い花はいつもより目立つみたい。その隣の木は、白い花が咲いてたんだけど、わからないものね」
「そうなのですか」
「うん」
 花梨は、紅い花を付けたサザンカの、隣に植わっている木に近づくと、木を覆っている雪をそっと手で掻きのけた。
「ほら、ね」
 花梨の言葉通り、雪の間から緑の葉と白い花が現れた。
「こうして雪が降ったら、まぎれちゃうけど、白い花もきれいだよね」
 微笑みながら、紅い花と白い花を見比べる花梨を、彰紋は見つめた。いとおしく、やるせなく……。
 雪は、降った。京を縦断し、二分していた結界を壊したがゆえに、時は、もはや動き出している。……鬼の首領アクラムに、総力をもって立ち向かう日は、恐らくもう、そう遠くない。それは、花梨との別れが近づいていることをも、意味している。
 この雪の中で……自分の中に息づいている彼女への想いを、紅い花のように、表に顕してしまうのか、それとも白い花のように、気づかれぬように、
まぎらわしてしまうのか……。
 彰紋は、唇を結び、目を地面に落とした。そこには、先ほどの紅い花びらが散っていた。明らかにしたのと同時に、自分の想いも、こんな風にはかなく散り落ちるかもしれない……。
「彰紋君? どうしたの?」
 目を上げると、息がかかるほど、花梨が傍にいて、心臓がとくんと飛び上がった。
「いえ、何でも……。ぼんやりして、すみません。そうだ、今日は探索に出られますか? 出られるのなら、お供します」
「うん、そうだね。行きましょうか。支度をしてくるね。寒いから、上がって待っていて」
「いえ、僕はここで……。もう少し、花を眺めていますね」
「そう? サザンカの花、好きなんだね」
「ええ」
 花梨は、はにかむように笑うと、小さい声で言った。
「私も好きだよ、サザンカ。……今、好きになった」
「花梨さん? なんとおっしゃいましたか?」
「ううん、何でもない。すぐ来るね」
 パタパタと音が立ちそうな勢いで、花梨が室へ入って行くのを。彰紋は微笑ましく見送った。
 冷たい風が、彰紋の頬に粉雪を吹き付けて来る。ほんの少し肩をすくめ、サザンカの木を振り返った。先ほど花梨がしていたように、そっと指先で雪を払ってみる。たとえ雪で覆い尽くされようとも、そこに確かに花はあり、紅であれ白であれ、自分の持てる色で、精いっぱい咲いている。今の自分に、できることをせよと、いうように……。
「彰紋君!」
 明るい声が、彼を呼ぶ。紫姫の心遣いだろう。室の奥から現れた花梨は、分厚い綿入れで着ぶくれていた。その様が愛らしくて、彰紋はつい笑わずにいられなかった。
「やっぱり変かな? こんなに着なくてもいいって、言ったんだけど。風邪引いちゃいけないからって、みんなが無理矢理……」
「いいえ、それぐらい着ていて、ちょうどいいと思いますよ。歩き回って暑くなったら、脱いで調節したらいいですし」
「そう?」
 着慣れない防寒着に、手こずる風情で、花梨はよたよたと彰紋の傍へ来た。彰紋は、そんな花梨に、手を差し伸べた。
「歩きにくいようでしたら、どうぞ僕の手に捕まって下さい」
 花梨は、ちょっと驚いたように目を丸くしたが、遠慮がちに、自分の手を彰紋に委ねた。
「ありがとう」
 手の中に収めた花梨の手は、幼子のように小さく思えた。この手で花梨は、八葉たちの心を一つにまとめ、京に巣食っていた穢れを払って来たのだった。尊くも、清らかな手……。そんな想いとともに、そっと力を込めると、花梨が握り返してきた。
「花梨さん?」
 驚いて、思わず顔を見直すと、花梨はほんのり頬に色をのぼせて、言った。
「彰紋君てば、手が冷たいよ。私があたためてあげる!」
「花梨さん……」
 彰紋は、胸が詰まった。京を救うその手が、今はただ自分をあたためるためにあるのだ、と……。
「ありがとうございます……」
 ようやく口から出たのは、そんなありきたりの言葉。だが、彰紋の中で、静かに心が固まった。この胸に咲いている想いのすべてで、花梨を守ろうと。たとえはかなく散ったとしても、それがこのぬくもりに対する答えだと。
「花梨さん……」
 想いをこめて、花梨の目を正面から見つめた。
「ん? 何? 彰紋君?」
 澄んだ瞳が、彼を見つめ返す。 彰紋は、すっと一息吸い込み、言葉を続けた。
「……恐らく、そう遠くないうちに、アクラムと雌雄を決する時が来るでしょう。その前に、聞いて頂きたいことがあるんです」
「それって、どんなこと?」
「それは……。耳を少し貸して頂けますか」
 桜貝のような耳に口を着け、そっと想いの一端を告げた。花梨の頬に、次第に朱の色がのぼっていく。
「彰紋君……!」
 両手を口に当て、花梨は戸惑いに揺れるまなざしを、彰紋に向けた。
「突然、こんなことを言って、すみません。僕が今言ったことに、すぐに答えを頂こうとは思いません。ただ……少しだけ、考えてみて下さいませんか。どんな答えであれ、それを僕は受け止めますから」
「……はい」
「では、行きましょうか」
「はい」
 ゆっくりと歩き出した彰紋の後を、すっかり言葉少なになった花梨がついてゆく。
「あ……」
 雪に足を取られた花梨の口から、小さい悲鳴が漏れた。雪に倒れ込む手前で、彰紋の腕が彼女をしっかりと抱きとめた。
「大丈夫ですか?」
「うん……ありがとう」
 彰紋の腕の中の花梨のからだは、細かく震えていた。
「花梨さん?」
「ご、ごめんなさい。彰紋君。今日、出かけるの、やめた方がいいみたい」
「そうですか……。では、お部屋まで、お送りします」
「あ、大丈夫! いくらも歩いていないし、すぐ戻れるから!」
 言いながら花梨は、彰紋の腕から、身をもぎ離すようにすると、今歩いて来た足跡をたどり始めた。
(花梨さん……)
 やはりよけいなことは言わない方がよかったのか……。後悔が胸を噛んだ。と、その時、花梨が彼の方を振り向いた。
「あ、彰紋君。明日また来られる?」
「ええ、それはもちろん」
「今日ぐらいの早い時間に?」
「大丈夫です」
「だったら、明日、また来て! ええと、庭の、あのサザンカの前に!」
「はい、わかりました」
 彰紋がうなずくと、花梨は安心したように、笑った。
「じゃ、じゃあ、今日は、ほんとにごめんね? また明日!」
 言い終えると花梨は、一足ごとに、雪にずぼと足を取られながら、遠ざかって行った。彰紋の口から、小さな吐息が漏れた。どうやら望みは、まだ残っていると。期待と不安と……花梨の手のぬくもりを抱いて、彰紋は内裏へと戻った。

 その翌朝。彰紋は、花梨との約束通り、紫姫の館の門を叩いた。すると昨日よりは少人数の下人たちが、新たに積もった雪を掻いて、道を踏み固めていた。
「皆さん、今日もご苦労様です」
 声を掛けると、うやうやしい礼が返って来た。昨日言葉を交わした下人頭の男が、笑みを浮かべて言った、
「おはようございます、若様。どうぞ、お通り下さい」
「ありがとう」
 男に軽くうなずきかけ、彰紋は、その前を通り過ぎていこうとした。すると……。
「あの、若様」
 不意に、男が彰紋に呼びかけて来た。
「? なんでしょう?」
 彰紋が振り向くと。男は、自分でも、思いがけない大胆なことをしたと驚いた風情だった。そうしてしばらく、手にした頭巾をひねくり回していたが、彰紋の穏やかなまなざしに促されて、思い切ったように、言った。
「き、今日一日が、若様にとって、よい一日でありますように!」
 緊張のあまり、声がうわずっていたが、男の素朴で、真率な気持ちは、十分に伝わった。男が、なぜ自分にそんな言葉を掛けるのかは、わからなかったが、実際、今彰紋は、神仏に幸運を祈りたい心境だった。これは、もしかして吉兆だろうか……。彰紋は、微笑みとともに、男に答えた。
「ありがとう。あなたにとっても、そうでありますように」
「は、はい! ありがとうごぜえます!」
 彰紋が歩み去った後、男が部下の下人たちから、驚嘆の目で見られたことは、言うまでもない。なぜまた、貴族の若様に、個人的に呼び掛けるなどという大胆な行動に出たのか。顔を覚えてもらって、目を掛けてもらう算段か、などと、下人たちは、勝手に推量したが、男は笑ってごまかした。
いつになく緊張した面持ちの彰紋に対して、励ましてあげたいという思いにつき動かされた、ただそれだけのことだったのである。
 彰紋は、実際、その短いやりとりに、心あたためられて、目的の庭へと向かった。そこに、どんな答えが待っているのか……。どんな答えでも、受け止める覚悟だった。
「花梨さん? いらっしゃいますか?」
 名を呼んでみたが、約束のサザンカの木の前にも、花梨の姿はなく。木の根元の雪の上に、たくさんの花びらが落ちているだけだった。だが、その花びらは、ただ落ちているだけではなく、何らかの意図を持って、並べられているように、彰紋には見えた。
 急ぎ近寄ってみると……確かに、それは文字を形作っていた。白い雪の上に、紅く浮かび上がっていたのは「好き」の二文字。
「花梨さん……!」
 胸をつかれた彰紋が、周囲を見回して、愛しい少女の姿を探そうとした、その時。背中にふわりとあたたかいものが触れた。
「!?」
 ほぼ同時に、細い腕が、彼の胴に巻き付いて来た。
「花梨さん……」
 花梨は、彰紋の背中に、顔を押し当てたまま、言った。
「振り向かないで。そのまま聞いて……」
 彰紋は、慌ててその言葉に従って、前を向いた。背中から、花梨のぬくもりと、早鐘のような鼓動が伝わる。それに呼応するように、自分の鼓動も、外に聞こえるのではないかというほど、高鳴っているのを感じていた。
「その花びらが……私の気持ち。アクラムとの戦いの結果がどうなろうと……。彰紋君に覚えていて欲しいの……」
「花梨さん……」
 こらえきれずに、彰紋はからだごと、花梨の方へ向いた。背中越しの、とぎれとぎれの言葉から、わかった。明るく見えた花梨が、その実必死に不安や恐れに耐えていたこと、そしてそんなさなかから、懸命に自分への想いを伝えようとしてくれたこと。
 押さえきれない、愛おしさに任せて、彰紋は花梨を抱きしめた。
「必ず……必ず、僕がお守りします。ですから、きっと勝ち取りましょう! あなたと僕、二人の想いを重ねて歩いて行けるように!」
 腕の中の花梨が、小さくうなずいた。確かに結ばれた、強いきずな。それが、何者にも打ち勝つ力になると、心から信じ合えた瞬間だった。


 それからの幾冬、サザンカの花を見るたびに、彰紋は懐かしさにとらわれることとなった。今年も彼の庭に、時を忘れずに、花は咲いた。そっと指先で、紅い花びらに触れてみると、はらはらと花びらが舞い落ちた。
(あ……)
 散らしてしまったことを悔やむ気持ちまで、あの時と同じ……。彰紋はつい微笑んだ。そんな彼を、明るい、それでいて艶のある声が呼んだ。
「何をしているの、あなた?」
「何も……。花を見ていただけですよ」
 彼は振り返り、最愛の妻に、微笑みを返した。あの日、紅い花に託され、顕された想いはそのまま、いや、より深くなり勝って、今彼とともにあるのだった。
                               (終わり)




「風花昇華」は、名曲ですよね〜。それもあって、雪にまつわる東宮様のお話を、書いてみたかったのでした。やはり、東宮様とは、一緒にソフトクリーム食うより、花を眺めて甘酒をすすりたいものです。ぜんざいでも可♪


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