管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
カテゴリー
フリーエリア
最新記事
(08/27)
(05/22)
(09/26)
(08/03)
(07/20)
(06/28)
(06/10)
(05/26)
プロフィール
HN:
コマツバラ
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
ブログ内検索
最古記事
(09/13)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/14)
(09/18)
アクセス解析
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「空に向かって」
屋上に出ると、冷たい空気が、ぴしぴし顔をたたいて来た。
「う〜〜っ、寒っ!」
思わずからだが縮こまる。それでも俺は、この季節にここに来るのが好きなんだ。なぜって、さすがにこの寒い時に、吹きっさらしの屋上に上がって来る人って、あんまりいなくて、ほとんど貸し切り状態だから。
それに、さ。何と言っても一番の理由は、このきーんと澄んだ、トライアングルの音がしそうな、冬の青空に向かって、トランペットを吹くのは、最高にいい気分だからさ。……ここで冬に吹けるのも、今年が最後だし。できるだけ多く吹いておきたい。
では、早速……。俺は、ケースから相棒のトランペットを取り出した。指がかじかんで動かなくなるまでが、勝負だからな。思い切り息を吸い込んで、吐いて、腹筋を絞めて……。
この空の、うんと高いところまで、音を投げ上げるみたいに。
どこまでも、響くといい。大好きなトランペット、大好きな学校……。
俺の思いを乗せて……。
一曲吹き終わると、後ろから拍手の音がした。
「わあ〜、誰!?」
びっくりして振り返ったら……。こんなラッキーがあっていいのかな。大好きな君がいた。
「香穂ちゃんか〜。びっくりしたあ〜」
「驚かせて、ごめんなさい。素敵な演奏だったから、つい」
香穂ちゃんは、小首を傾げて、にっこり笑った。その笑顔で言われると一着でゴールした時みたいな気持ちになるよ。ううん、それよりも、もっと……。
「火原先輩? あの……私、何か、変なこと言いました?」
胸がいっぱいになっちゃって、口の機能が麻痺した俺を、香穂ちゃんが、心配そうに見つめる。はっとして俺は、ぶんぶん首を振った。
「ごめん! その……香穂ちゃんにほめられると、俺、嬉しくってさ。ついぼ〜っとしちゃったんだ」
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと!」
「なら、いいんですけど」
香穂ちゃんは、安心したように、ほっと息を吐いた。すぐにかき消える白い息。それを見て、俺はようやく気づいた。
「か、香穂ちゃん。ここ、寒いよ? 早く中に入った方がいいんじゃない」
「寒さは、たいしたことないです。カイロ持ってますし」
ポケットに手を入れ、何かに気づいたような表情を、香穂ちゃんは浮かべた。それから、カイロをごそごそと取り出して、俺の方に差し出した。
「先輩もどうぞ。あったまって下さい」
「ああ、俺はいいから、君が使いなよ」
香穂ちゃんの手を押しとどめるようにすると、ちょっと悲しそうな顔をした。
「えっと……要らないんですか。ていうか、私がここにいたら、練習の邪魔?」
!? 俺のドジ!! 香穂ちゃんに、こんな顔をさせるなんて!! 自分で自分に腹を立てながら、俺は言葉を重ねた。
「ううん、そんなことない! 聴いてくれたら、張り合いがあるよ。ただ、コンサートも近いのに、君に風邪なんか引かせたくないからさ!」
「私のこと、心配してくれるんですね? じゃあ、もう一曲だけ聴かせてもらったら、戻ります」
「うん! そしたら、リクエスト、何かある?」
「う〜ん、じゃあ、凱旋行進曲を」
「よ〜し、任せて!」
俺は、吹いた。言葉では、もどかしくて、うまく言えない想いも、音に託してなら、伝えられる気がした。
香穂ちゃんは、ずっと目をきらきらさせて最後まで聴いて、小さな手をいっぱい叩いて拍手をくれた。
「よかったです! 私、火腹先輩のトランペットを聴くと、いつも元気がもらえます」
「そう? 君の役に立てるなら、嬉しいよ」
あ〜、顔がつい緩んじゃう。俺、今、すごいマヌケな顔してるんじゃないかな。そんなにやけた俺なのに、香穂ちゃんは、なぜかもじもじしてる。
「どうしたの? 俺に何か言いたいこととか? 君の話だったら、いつでも聞くよ?」
すると君は、照れくさそうな笑みを浮かべて、ポケットから携帯を取り出した。
「これ、見て下さい」
「え? なになに?」
香穂ちゃんが見せてくれた画像は、変わった形の花だった。う〜ん、なんか魔女の帽子、みたい?
「へえ、面白い形の花だね」
「名前がね、また面白いんですよ。エンジェルス・トランペットっていうんですって」
「エンジェルス・トランペット……確かにそんな感じだね」
「学校に行く道で、秋に咲いていて……。それで、名前を知った時、私、火原先輩のことを、真っ先に思い浮かべたんです」
「え? 俺?」
「ええ」
香穂ちゃんは、深く頷いた。
「……今みたいに、先輩の音は、青空を突き抜けていくみたいで……。ほんとに天使が吹き鳴らすみたいだなって……」
そう一息に言うと、香穂ちゃんは、ぱあっと頬を染めた。
「ごめんなさい。私、変なこと言っちゃって……。もう、戻りますね」
「あ、香穂ちゃん!」
呼び止める間もなく、香穂ちゃんは、くるっと回れ右をして、屋上から出て行ってしまった。ぱたぱたと階段を駆け下りる足音を聴きながら、俺は胸にじんわり熱いものが広がるのを、感じていた。
俺は、天使にはなれないけれど。君のために、吹くよ。コンサートの舞台で、君の前に立ちふさがる壁を突き抜けて、青空へ連れて行ってあげられるように。それが、きっと君への一番のクリスマス・プレゼントだよね。
俺は、トランペットを、もう一度取り上げた。
「頼むよ、相棒」
指先と唇で、感触を確かめる。
空に向かって吹こう。
大好きな君のために、最高の演奏ができるように。
空に向かって吹こう。
俺のトランペットの上に、君をしあわせにする天使が舞い降りるように。
響け、俺の音……!
(終わり)
ちょっと……いや、かなりクサいですけど、火原っちですから〜。(そこを言い訳にするな!)
火原っちは、しみきゅんとは、また違う方向で"天使"だと思いますV
俗世に生きている男子高校生では、あり得ないほど、人のいいコですよね^^
屋上に出ると、冷たい空気が、ぴしぴし顔をたたいて来た。
「う〜〜っ、寒っ!」
思わずからだが縮こまる。それでも俺は、この季節にここに来るのが好きなんだ。なぜって、さすがにこの寒い時に、吹きっさらしの屋上に上がって来る人って、あんまりいなくて、ほとんど貸し切り状態だから。
それに、さ。何と言っても一番の理由は、このきーんと澄んだ、トライアングルの音がしそうな、冬の青空に向かって、トランペットを吹くのは、最高にいい気分だからさ。……ここで冬に吹けるのも、今年が最後だし。できるだけ多く吹いておきたい。
では、早速……。俺は、ケースから相棒のトランペットを取り出した。指がかじかんで動かなくなるまでが、勝負だからな。思い切り息を吸い込んで、吐いて、腹筋を絞めて……。
この空の、うんと高いところまで、音を投げ上げるみたいに。
どこまでも、響くといい。大好きなトランペット、大好きな学校……。
俺の思いを乗せて……。
一曲吹き終わると、後ろから拍手の音がした。
「わあ〜、誰!?」
びっくりして振り返ったら……。こんなラッキーがあっていいのかな。大好きな君がいた。
「香穂ちゃんか〜。びっくりしたあ〜」
「驚かせて、ごめんなさい。素敵な演奏だったから、つい」
香穂ちゃんは、小首を傾げて、にっこり笑った。その笑顔で言われると一着でゴールした時みたいな気持ちになるよ。ううん、それよりも、もっと……。
「火原先輩? あの……私、何か、変なこと言いました?」
胸がいっぱいになっちゃって、口の機能が麻痺した俺を、香穂ちゃんが、心配そうに見つめる。はっとして俺は、ぶんぶん首を振った。
「ごめん! その……香穂ちゃんにほめられると、俺、嬉しくってさ。ついぼ〜っとしちゃったんだ」
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと!」
「なら、いいんですけど」
香穂ちゃんは、安心したように、ほっと息を吐いた。すぐにかき消える白い息。それを見て、俺はようやく気づいた。
「か、香穂ちゃん。ここ、寒いよ? 早く中に入った方がいいんじゃない」
「寒さは、たいしたことないです。カイロ持ってますし」
ポケットに手を入れ、何かに気づいたような表情を、香穂ちゃんは浮かべた。それから、カイロをごそごそと取り出して、俺の方に差し出した。
「先輩もどうぞ。あったまって下さい」
「ああ、俺はいいから、君が使いなよ」
香穂ちゃんの手を押しとどめるようにすると、ちょっと悲しそうな顔をした。
「えっと……要らないんですか。ていうか、私がここにいたら、練習の邪魔?」
!? 俺のドジ!! 香穂ちゃんに、こんな顔をさせるなんて!! 自分で自分に腹を立てながら、俺は言葉を重ねた。
「ううん、そんなことない! 聴いてくれたら、張り合いがあるよ。ただ、コンサートも近いのに、君に風邪なんか引かせたくないからさ!」
「私のこと、心配してくれるんですね? じゃあ、もう一曲だけ聴かせてもらったら、戻ります」
「うん! そしたら、リクエスト、何かある?」
「う〜ん、じゃあ、凱旋行進曲を」
「よ〜し、任せて!」
俺は、吹いた。言葉では、もどかしくて、うまく言えない想いも、音に託してなら、伝えられる気がした。
香穂ちゃんは、ずっと目をきらきらさせて最後まで聴いて、小さな手をいっぱい叩いて拍手をくれた。
「よかったです! 私、火腹先輩のトランペットを聴くと、いつも元気がもらえます」
「そう? 君の役に立てるなら、嬉しいよ」
あ〜、顔がつい緩んじゃう。俺、今、すごいマヌケな顔してるんじゃないかな。そんなにやけた俺なのに、香穂ちゃんは、なぜかもじもじしてる。
「どうしたの? 俺に何か言いたいこととか? 君の話だったら、いつでも聞くよ?」
すると君は、照れくさそうな笑みを浮かべて、ポケットから携帯を取り出した。
「これ、見て下さい」
「え? なになに?」
香穂ちゃんが見せてくれた画像は、変わった形の花だった。う〜ん、なんか魔女の帽子、みたい?
「へえ、面白い形の花だね」
「名前がね、また面白いんですよ。エンジェルス・トランペットっていうんですって」
「エンジェルス・トランペット……確かにそんな感じだね」
「学校に行く道で、秋に咲いていて……。それで、名前を知った時、私、火原先輩のことを、真っ先に思い浮かべたんです」
「え? 俺?」
「ええ」
香穂ちゃんは、深く頷いた。
「……今みたいに、先輩の音は、青空を突き抜けていくみたいで……。ほんとに天使が吹き鳴らすみたいだなって……」
そう一息に言うと、香穂ちゃんは、ぱあっと頬を染めた。
「ごめんなさい。私、変なこと言っちゃって……。もう、戻りますね」
「あ、香穂ちゃん!」
呼び止める間もなく、香穂ちゃんは、くるっと回れ右をして、屋上から出て行ってしまった。ぱたぱたと階段を駆け下りる足音を聴きながら、俺は胸にじんわり熱いものが広がるのを、感じていた。
俺は、天使にはなれないけれど。君のために、吹くよ。コンサートの舞台で、君の前に立ちふさがる壁を突き抜けて、青空へ連れて行ってあげられるように。それが、きっと君への一番のクリスマス・プレゼントだよね。
俺は、トランペットを、もう一度取り上げた。
「頼むよ、相棒」
指先と唇で、感触を確かめる。
空に向かって吹こう。
大好きな君のために、最高の演奏ができるように。
空に向かって吹こう。
俺のトランペットの上に、君をしあわせにする天使が舞い降りるように。
響け、俺の音……!
(終わり)
ちょっと……いや、かなりクサいですけど、火原っちですから〜。(そこを言い訳にするな!)
火原っちは、しみきゅんとは、また違う方向で"天使"だと思いますV
俗世に生きている男子高校生では、あり得ないほど、人のいいコですよね^^
PR
この記事にコメントする