管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
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ようやく、でけました。二日遅れちゃったけど^^;
誕生日の期日を間違えたお詫びもかねて、書きました。
こんなマトモなオスカー様を書いたのは、何年ぶり?
って感じです(笑) オスカー×エンジュ(いや、逆?)
ってことで、宜しく。
このところ、ちょっとお話の書けないテンションになって
いたので、仕上げられてほっとしました^^
誕生日の期日を間違えたお詫びもかねて、書きました。
こんなマトモなオスカー様を書いたのは、何年ぶり?
って感じです(笑) オスカー×エンジュ(いや、逆?)
ってことで、宜しく。
このところ、ちょっとお話の書けないテンションになって
いたので、仕上げられてほっとしました^^
「宣戦布告」
雪がちらちら舞い始めた。冬の短い日は、雪原の果ての地平線に沈み、低くたれ込めた雲の合間に、わずかに茜色を残すのみとなった。その紅がかき消えて、夜の帳が降りて来るのに、さして時間はかからないだろう。
「冷えて来たな。寒くはないか、お嬢ちゃん?」
薄やみの中でも、アイスブルーの瞳が、強い光を放って見える。エンジュは、自分の普段の目線より大分高いところにあるその瞳を、見返した。
「いいえ、平気です、オスカー様」
まだ帰りたくないという気持ちをこめたつもりだった。だが、オスカーは、ちょっと笑って、わずかに首を振った。
「俺も、お嬢ちゃんと一緒にいたいのは、やまやまなんだがな。大事なエトワールを遅くまで連れ回して、風邪を引かせるわけにもいかない。帰ろう、船まで送るぜ」
言葉とともに、オスカーのまとっていたマントが、エンジュの肩をくるみ込んだ。
「あ、オスカー様。いいです、私、平気です」
慌てて外そうとするエンジュを押しとどめ、オスカーは更にしっかりとマントを彼女のからだに巻き付けた。そして、ゆるく笑みながら、言った。
「ほんとは、俺のこの腕で、お嬢ちゃんを暖めてやりたいところなんだが。まあ、せめてこのマントを俺と思って、役立ててくれ」
「もおっ! オスカー様ったら!」
エンジュが思わず拳を振り上げて見せると、オスカーは声を立てて笑った。
「ははは、血の巡りがよくなったようだな、お嬢ちゃん! 頬がバラ色に染まってるぜ。さあ、その熱が冷めないうちに、行こう。でないと俺は、寒さに震えるお嬢ちゃんを、本気で暖めたくなっちまうからな」
「……」
よどみなく繰り出されるキザな言い回しに、エンジュは反論する気力を失った。
(ほんとに、オスカー様ってば、よくまあ次から次と……)
半歩先を歩いて行くオスカーは、肩越しに端正な横顔をこちらに見せている。その落ち着き払った表情を見ていると、胸の中がじりじりする。
(……誰にでも、つらっとこの人はそんなことを言うのに……。ドキドキしちゃうなんて悔しい……)
エンジュが奥歯を噛み締めたその時、一陣のつむじ風が、雪原を走るように、吹きつけて来た。ひゅうとうなる風の音に、エンジュが身を縮めようとすると、視界が広い背中でいっぱいになった。そして、彼女は気づいた。オスカーが半歩先を歩いているのは、先導するためだけではなく、彼女を凍るように冷たい風からかばうためだったのだと。
そうしたオスカーのふるまいは、“大事なエトワール”を守るために、無意識にやっていることだろう。また強靭なからだと意志を持つ彼にとって、自分よりか弱い女性たちは、ただそれだけで庇護の対象なのだろう。だが、そのごく当たり前の行動の中に、はたして“エンジュ”は、くっきりと意識されているのか……。
できることなら、この揺るぎない背中を、自分の前から押しのけてしまいたい。エンジュはそう思った。女の子なら、誰にでも、余裕しゃくしゃくとふりまかれる、そんなやさしさは要らない、と。
「お嬢ちゃん、どうした? すっかり黙り込んでしまったな」
オスカーが、ちらと振り返った。睫毛や、唇に、白い粉雪がまとわりつき、寒気にさらされた頬が赤らんでいる。その皮膚の下には、きっと誰よりも熱い血が巡っている。その熱で、いっそ……。
それ以上、考えを追うのを、エンジュはやめた。おとなしく目を伏せると、オスカーにハンカチを差し出した。
「何でもありません。これ、よかったら使って下さい」
等間隔で並んだ街灯が、ほの白く照らす舗道の向こうに、セレスティアの中心部のにぎわう町並みが見えて来た。
「さあ、後少しだ。帰る前に、あったかいココアでもごちそうするぜ、お嬢ちゃん」
振り向いたオスカーは、自分の背を見つめていたらしいエンジュの瞳の鋭さに、どきりとした。目が合うと、エンジュはすぐさまその光を消し、笑顔を作ってみせた。
「はい、オスカー様」
そう答えたエンジュは、まったくいつもどおりの、快活な少女だったが……。認めたその瞬間に消えた鋭い光が、オスカーの気にかかった。そう、今見上げる夜空にきらめく星にも似た……。オスカーは、空を仰いだまま、ゆっくりと問うた。
「星のいい晩だ……。このまま帰るのも、少し惜しい気がするな。お嬢ちゃん、寒さを我慢できるなら、ちょっと遠回りしていかないか?」
エンジュが息をのむ気配がした。一瞬断られるかと思ったが、少女は答えた。
「はい、オスカー様」
「じゃあ、こっちだ。静かな小径を通っていこう」
小径に足を踏み入れると、町のにぎわいが一切見えなくなった。黒々と茂った常緑樹と、枝振りをあらわにした裸木が、延々と続く中を、ゆっくりと歩いて行く。ひときわ大きいもみの木の前で、オスカーはふと足を止めた。
「オスカー様?」
振り返ったオスカーは、またあの鋭い光が、エンジュの瞳から素早く消えるのを見た。
(また捕まえ損ねたか)
軽く舌打ちをしたくなるような思い。だが、追究しなくとも、瞳に宿るその光の意味を、知っているような気がした。思い過ごしかもしれなかったが……。
(……仕掛けてみるか)
オスカーは口火を切った。
「今日という一日が終わっちまうが、お嬢ちゃん、俺と過ごしてくれたこと、感謝してるぜ」
「いいえ、私の方こそ。ありがとうございました」
「お嬢ちゃんといると、気持ちが安らぐ……。これもエトワールの聖なる力か、それともお嬢ちゃんの魅力、かな」
くすりと笑ってみせたのに対して、エンジュは、きゅっと唇を結んだ。目に次第に例の光が、刺すような表情が、次第に立ち上って来る。
「オスカー様……私、まだ帰りたくありません。もっと、オスカーさまと一緒にいたいんです」
(やはり、そうか……)
オスカーは確信した。少女の小さな胸のうちから、溢れ出してしまった言葉。しかし、それに応えるわけにはいかない自分がいた。
「残念だが、今日は、ここまで、だな。これ以上、ここにいたら、楽しさの余韻と、星明かりに浮かれて、よけいなことを言っちまいそうだ、俺もお嬢ちゃんも……」
分別くさいことを、砂糖にまぶして言いながら、オスカーは自分の“ずるさ”が、胸にこたえていた。彼女の本心を確かめ、心のどこかで喜びながら、その思いに釘を刺そうとする自分……。
エンジュは、一瞬突き刺すような視線を返したが、うつむいて答えた。
「はい……オスカー様」
それからアウローラ号までの帰り道は、ほとんど言葉を交わすこともなかった。部屋まで送って「おやすみ」のあいさつをした時、気丈な少女の瞳は、濡れていた。……ドアをばたんと閉じた瞬間に、ぎりぎりで踏みとどまっていたその涙は、あふれだすに違いない。
やるせない思いに胸をかまれたが、それも自分の引き受けるべき責任の一部だと、オスカーは受け止めた。
少女もまた、重い使命を背負っている。お互い、深入りしない方がよいのだ、と。
聖地の朝は、穏やかな明るさに満ちている。季節のないこの地には、昨日セレスティアで感じたような肌を刺すような寒気はない。
珍しく早朝に出仕してきたものの、すぐに机の前に座る気にはなれず、オスカーは窓辺に寄った。胸に浮かぶのは、凍てついた星の輝きと、そして……。
物思いにふけっていた時、ノックの音がした。
(朝っぱらから、誰だ? ……ジュリアス様か?)
対ジュリアスに備えて、威儀を正しながら返事をすると、ドアが開いた。
ノックの主を、軽い驚きをもって、オスカーは迎えた。
「これは、お嬢ちゃん。朝早くから、仕事熱心だな」
エンジュは、軽やかに室に入って来た。目がやや赤いようにも見えたが、晴れやかな笑顔とともに言った。
「そうじゃないんです。今日はオスカー様のお誕生日でしょう? お祝いをしたくて、来たんです」
「誕生日……そういえばそうだったな。自分ですっかり忘れていた。それでわざわざ来てくれたのか、ありがとう、お嬢ちゃん」
「いいえ、それで、これ、プレゼントなんですけれど、受け取ってもらえますか?」
リボンの掛かった包みが、差し出される。
「プレゼントまで用意してくれたのか。嬉しいぜ、開けてもいいか?」
「どうぞ」
包装を丁寧に開くと、中から上質の革の手袋が出て来た。
「ほう、これは……。お嬢ちゃんは、俺の好みをよく理解してくれているようだ。大事に使わせてもらうぜ、ありがとう」
「気に入って頂けたなら、よかったです」
エンジュは嬉しそうに笑ったが、まだ何かもの言いたげに、しかしためらうように、目を伏せた。胸に、わだかまる思いがあるのだろう。それをすべて受け入れることはできないが、表に出すことで、少しは楽になるのではとオスカーは考えた。
「お嬢ちゃん、どうした? 言いたいことがあるなら、言っていいんだぞ?」
努めてやさしく促すと、エンジュはゆっくり面を上げ、言葉を紡ぎ始めた。
「……昔、騎士たちは決闘の申し込みをするのに、白い手袋を相手に投げつけたって、言います。……それに、私もならうことにしました」
「お嬢ちゃん?」
予想外の決闘という剣呑な言葉に、ちょっと面食らった。すると、その隙をつくように、突き詰めた鋭い瞳が、正面から迫って来た。その迫力に、思わず気圧されて、息をのむオスカーに、震える声が告げた。
「その手袋は……宣戦布告です。オスカー様、私、納得がいくまで、あなたのことをあきらめません」
言い終えるや否や、エンジュはくるりと踵を返し、長いお下げを振って、室を走り出て行ってしまった。その後ろ姿を、魔法にかかったように、指一つ動かせず見送ったオスカーだったが。数瞬後に、太い息を吐いて、緊張をほどいた。それとともに、薄い笑みが立ち上って来る。
「……まったく、このオスカーを圧倒するとは、たいしたお嬢ちゃんだ。さすが、エトワール、だな」
くくっと喉で笑いながらオスカーは、少女がくれた手袋を手に取った。どれほどの思いで、今日彼女はこれを持って来たのか……。
オスカーは、そっと手袋を唇に押し当てた。上質の革のにおいをが、鼻を覆う。
「エンジュ、君の想い……確かに受け止めた。もう、逃げやごまかしはナシだ。宇宙も、君も、輝かせる道を、俺は全力で探そう。……ただし」
オスカーはにやりと笑った。
「この俺を釘付けにしたお返しは、させてもらうぜ。いいよな?」
開け放った窓から、さわやかな風が吹き込んで来て、オスカーの頬をなぜる。部屋に満ちる朝の白い光の中で、星の輝きは夢のようにも思えた。だが、正々堂々の宣戦布告の証が今彼の手元にあり、胸を射抜いた星のきらめきは、情熱に確かに火を点けた。
オスカーは、手袋を大切に引き出しの中に収めた。この誕生日の朝は、きっとずっと忘れられない。新しいページが、今繰られ、そこに二人は、これから一つずつ思いを確かめながら、書き記していくのだから。……そんな始まりの朝だった。
(終わり)
ずばり森の湖直前で「帰ろう」と言われた時の憤りが、テーマです(笑)
「ここまで来て帰ろうってか、おのれ〜〜!」と、無理と知りつつ、森の湖まで、引きずって行きたくなったものです。(身長180超の大男ばっかなんだけど)
聖地は季節がないのが、私としましては、アンジェの創作を書く上で、かなりネックなのですが、セレスティアを舞台にすると、その点はやりやすくなりますな。
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