管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
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「VD2011」に提出したものです。
フランシーのお貴族な感じを、前面に出したつもりの
話です。(自分で書いて、あまりのカユい出来に驚いたもんだ)
ん〜、ジュリアス様は、大臣とか務める、
地位も権力もある大貴族って感じですが、
フランシーの貴族性のキーワードは、一言”退廃”じゃないかと。
傍流というか、実は国王の隠し子なんだけど、
養子に出されたとかいう、裏事情のありそうな
イメージですね。
フランシーのお貴族な感じを、前面に出したつもりの
話です。(自分で書いて、あまりのカユい出来に驚いたもんだ)
ん〜、ジュリアス様は、大臣とか務める、
地位も権力もある大貴族って感じですが、
フランシーの貴族性のキーワードは、一言”退廃”じゃないかと。
傍流というか、実は国王の隠し子なんだけど、
養子に出されたとかいう、裏事情のありそうな
イメージですね。
「レディは憂鬱」
(来るんじゃなかった……)
会場に足を踏み入れた瞬間、そう思った。輝くシャンデリアの下で、とりどりのドレスに身を包んだ、きらびやかな女性たち。泡立つシャンパングラスをかち合わせて談笑する紳士たち。……私には、不似合いすぎて、足がすくんだ。
その時、傍らからやさしい声が、降って来た。
「どうなさいました、レディ?」
深い瞳が、私を見下ろす。
「フランシス様……」
私のパートナーは、この場にぴったりと馴染んでいた。というより、りゅうとした正装も、洗練された身のこなしも、この場所にいる誰よりも、抜きん出て見えた。フランシス様を見る人たちの目は、皆感嘆に見開かれ、特に女性たちの視線は、火花が出そうなほど熱かった。
「あの……私、場違いな気がして……」
するとフランシス様は、にっこり笑った。
「そんなことはありませんよ、レディ。ドレスアップしたあなたは、いつもとは違った魅力にあふれています。一瞬も目を離したくないほどですよ。さあ、どうぞ、私にあなたをエスコートする名誉を与えて下さい」
そう言うと、私の手を取って、華やかな会場の中心へと、導いた。弦楽器のハーモニーが、柔らかく耳に届く。
「何も恐れることはありませんよ……」
耳元でささやかれたその言葉は、どんな音楽よりも、甘く美しく、私の胸に響いた。
「今度、アルカディアで開かれる夜会に行ってみませんか? ああいう場所に出るのも、気分が変わってよいかもしれませんよ」
そう薦めてくれたのは、フランシス様だった。
「え、でも、私、ドレスとか持ってませんし、そんな場所でのお作法もわからないんですけど」
「ドレスやアクセサリーは、宜しかったら、私に用意させて下さい。作法など、それほど堅苦しく考える必要はありません。いつも通りのあなたで十分。料理やダンスを楽しめばいいのです」
そう言われても、と思ったけど。フランシス様がエスコートして下さるという魅力に、私は負けてしまった。数日後に届いた、見たこともないような素敵なドレスにも。
その時、思ったのだ。フランシス様が、あのビロードのような声で、私を呼ぶ、その通りにならなくちゃって。
「レディ」
フランシス様が、微笑みながら、呼びかけてくれる時、もちろん嬉しいんだけど、何か違うような気がしていた。“私は、あなたにそんな風に呼んでもらえるようなものじゃない”って。
フェミニストのフランシス様が、私を含めて、相対する女性すべてに敬意を払って、レディ扱いするんだってことは、もちろんわかっている。
けれど……息をするのと同じぐらい、優雅さと洗練が身に着いたこの人が、田舎出の小娘の私を、なんでそんな風に呼べるのだろうと、いつも思わずにはいられなかった。
それでも、エスコートしてもらう以上、私がきちんと振る舞わなければ、パートナーであるフランシス様に、恥をかかせることになる。だから……それが求められる場所では、私はフランシス様に釣り合うレディになろうと、心に決めたのだ。
そこで、夜会までの間、できるだけの準備をした。ロザリア様のところへ行って、マナーを教わったり、オリヴィエ様に髪型やドレスの着こなしの相談に乗ってもらったり。付け焼き刃には違いないけど、何とか“レディ”らしく見えるように。
そうして、やって来たこの日。迎えに来て下さったフランシス様の目の輝きを見た時、無理して、背伸びしていることを全部忘れた。慣れないハイヒールで痛むつま先も。アップにした髪を引っぱるピンの違和感も。
フランシス様の差し出した手に、自分の手を委ね、傍に寄り添って。……胸が震えた。
でも、いざこの場所に来てみると、後悔ばかりが、襲って来る。……行き交う女の人たちは、私より、ずっと綺麗で、しとやかで……。あの人たちに比べたら、私はドレスを引っ掛けたかかしみたいに、見えるんじゃないかって。
彼女たちが、ちらちらと私に投げかける、揶揄するような視線は、一層私を縮こまらせた。でも、フランシス様が、私の傍にいて下さる幸福感に比べれば、些細なことだと思えた。
私に注がれる目も、手も、何もかも優しく、温かく。そして、私が心地よくいられるように、ずっと気を配って下さったから。
金の泡が上がっているシャンパン、熱気、それから時々フランシス様がこぼす楽しそうな笑い声……。それらに、私は、ぼうっとのぼせてしまった。そんな私の変調を、フランシス様は気遣って下さった。
「人いきれで疲れましたか? 少しあちらの椅子で休みましょうか」
椅子の並んだ壁際へと移動し、腰を落ち着けたその時だった。
「これは、フランシス様。ここでお目に掛かれるとは、何と幸運なことでしょう」
背も、横幅も、たっぷりある紳士が、声を掛けて来た。
「ごきげんよう、市長」
「ごきげんよう。いや、ありがたい。ちょうどご相談したいことがあったのです。こんな席で、何なのですが、アルカディアに新しく建設する美術館のことで、少々ご意見を伺いたいのですが。宜しいですかな?」
「市長、申し訳ないのですが、今日は連れがいますので……。そのお話は、また後日にお願いできませんか」
「おお、お連れがいらしたのですか。これは失礼しました」
紳士は、残念そうに肩をすくめ、がっかりした様子だった。本当によい機会だと思ったのだろう。それだけこの人は、フランシス様の意見を必要としているんだ。そう思った時、私の口から自然に言葉が出た。
「あの、フランシス様。どうぞお話してらして下さい」
「ですが、レディ」
「私なら、ここで、休んでいますから。大丈夫です」
「よいのですか、本当に?」
「はい」
私たちのやりとりを見守っていた紳士は、我が意を得たりという表情になった。
「すみませんな、お嬢さん。フランシス様をお借りしますよ。では、フランシス様、こちらへ」
「すぐ戻りますからね、エンジュ」
フランシス様は、立ち去りがたいという感じで、何度か私の方を振り返った。その度に、私は“心配ない”と手を小さく振って、笑ってみせた。人々の間に、フランシス様の背中が消えてしまったその時だった。聞こえよがしのひそひそ話が、私の回りに広がった。
「ご覧になって? あの方、手なんか振って」
「ええ、見たわ。自分はフランシス様と特別親しいと、見せつけたいのかしら」
「まあ……。でも、あの方、あれでフランシス様と釣り合うとでも、思ってるのかしら?」
「そうよね。何だかフランシス様の陰にばかり隠れて……。あんな方のお守りをなさっているフランシス様が、お気の毒だわ」
聞き流そうとは思った。でも彼女たちの言葉の中の棘には、正に私が思っていることを、言い当てているところもあった。
(……確かに、私はフランシス様には、釣り合わない……。ご迷惑をかけてるかもしれない……)
そう思うと、居たたまれなくて、涙が出そうになって、席を立った。背後で嘲るような笑い声がしたけれど、耳をふさいで、聞かなかったことにして、テラスに出た。
幸い、そこには人がいなかったので、泣き出しそうな顔を、誰にも見られずにすんだ。丸テーブルと数脚の椅子が置かれた、割合広いテラスの向こうには、中庭が広がり、噴水の水が、月明かりに光っていた。
室内では、音楽とさざめきがずっと続いているけれど、中庭は静かで……。宵闇の降りたその風景は、私の高ぶった気持ちを、少し落ち着かせた。
「はあ〜」
椅子に腰掛け、テーブルの上に置いた腕に顔を伏せる。私があの場所にいなかったら、戻って来たフランシス様が心配するだろうと思ったけれど、会場に入る気になれない。
肩から腕に掛けた柔らかなケープに顔を埋めて、さっきのできごとを、思い返してみる。……どうして、こんなに胸が痛いんだろう?
場違いだっていうのは、始めからわかっていたこと。でも、フランシス様は“いつものあなたで十分”と言って下さった。確かに、本心を隠すのが上手な人だけれど、その言葉に嘘はなかったと思うし、今日も緊張はしたけど、フランシス様の傍にいるのは楽しかった。
それなのに、あの女の人たちの言葉が、どうしてこんなに胸に刺さるのか……。それは“他人の目からみたフランシス様と私”は、まったく釣り合わないし、何よりもフランシス様と私が“別の世界”にいるということを、突きつけられてしまったからだと思う。
……私が気後れし、二の足を踏んだ、あの華やかな世界で、フランシス様は馴染む以上に、輝いているんだもの……。
そう、私は、たまたまエトワールに選ばれた小娘に過ぎなくて。フランシス様と出会えたことも、傍にいてもらえることも、ほんとに幸運な偶然でしかない。
……人々を安らぎへいざなう、深い瞳の、優美な人……。
あの人と私では、あまりにも、いる場所が違いすぎる……。
改めて考えると、また涙があふれて来た。
それなのに。抑えなければいけないのに、胸の奥から想いが、噴き上がる。
(それでも、好き……。あの人が、好き……)
ぎゅっと自分で自分の腕を掴んで、こらえようとした。でも、悲しみに支配された胸からは、次々と涙が絞り出されて、私はせめて声を立てないように、泣いた。
その時、肩に温かいものが触れた。はっとして顔を上げると、フランシス様がそこにいた……! 私の顔が濡れているのを見て取ったフランシス様の瞳が一瞬見開かれ、たちまち悲痛な色で満たされる。
「ここにいらしたのですね、エンジュ。どうなさったのです? 何がそんなにも、あなたを悲しませているのですか? どうか、その悲しみを私に預けて下さいませんか、お願いです……!」
頬に手が掛けられ、そっと柔らかいハンカチを押し当てられる。私の涙を拭くフランシス様の瞳も、潤んでいた。
……このまま、このやさしさに溺れてしまいたい……。
そう思ったけれど、私のからだは、勝手に動いて、フランシス様から、離れた。
「レディ……?」
フランシス様の手が、心配そうに、私に向かって伸ばされる。その手を押し戻した時、私の中でいっぱいいっぱいになったものが、破裂した。
「……レディなんて、呼ばないで下さい! 私は……私は、レディになんかなれない! ドレスを着たって、髪を上げたって、ヒールを履いたって! 私はただの田舎娘のエンジュなの!」
唇を噛み締めたけど、嗚咽が洩れてしまった。目をぎゅっと閉じたけど、後から後から、涙が湧いて来る。……こんなヒステリー、フランシス様だって、きっと呆れてる。
(もう、もう、これで終わり……!)
そう思った瞬間、私はぎゅうっと抱き締められていた。
「エンジュ、エンジュ! 私があなたを傷つけてしまったのですね? どうか、許して下さい!」
「ち、違います……! そうじゃない! ただ、私、今日、ここへ来て……。フランシス様と私は、住む世界が違うんだなって、思い知らされて……」
私を抱く力が、もっと強くなった。……声も出せないほどに。
フランシス様の声が、矢継ぎ早に降って来る。
「どうして……。そのような言葉をあなたの口から、聞きたくない……! あなたが私に手を差し伸べ、あなたが私に、新しく生き直す術を与えて下さったのではないですか! ……この宇宙で! あなたの傍で……!」
「フランシス様」
「どうか、どうか、あなたと私の住む世界が違うだなんて、言わないで! いいえ、もし、そうだとしても、私はあなたを、別の世界になど、行かせはしない……! こうして、私の腕の中に、閉じ込めます、ずっと……!」
「フランシス様……」
こんなに心のうちをさらけ出してくれるなんて、思ってもみなかった……。注意深く、注意深く隠して来て、それがもう、習い性のようになっている人なのに。
この人は、こんなにも、私を求めている……!
私の答えは、一つしかなかった。
「……私も、離しません、フランシス様を……! 誰が何と言ったって……!」
震える背中を、力いっぱい抱き締めた。絹の感触と、トワレの香りと……フランシス様の匂いが、私を包んだ。……他に望むものは、何もなかった。
「そうですね……。今のままでも、もちろん悪くはないのですが、こうしましょう」
人目のない、中庭の東屋で、そう言いながらフランシス様は、私の頭にのっていたティアラを外した。
「あの……フランシス様。もう、いいです。帰りませんか?」
「おや? 私を信用して下さらないのですか? あなたに何が似合うかという判断に関しては、誰にも引けを取るつもりは、ありませんが?」
「いえ、そういうわけでは!」
「では、どうぞお任せ下さい」
にっこり笑顔で、押し切られた。
私が、女性たちに、すっかり引け目を感じてしまっていたことを話すと、フランシス様は、自信を持って、会場に戻れるように、手を加えると言い出したのだ。
正直、もう戻りたくはなかったのだけれど。
フランシス様が、
「このまま“負けた”気分で帰るのは、よくありませんよ。それに、あなたがそのように傷つけられたままというのは、私は我慢ができません」
と、底の深い笑みを浮かべて、譲らなかったのだ。
「……じっとして。私に任せて」
「フランシス様……」
しなやかな手が、私の髪を束ね上げていたピンを、一つ、また一つと取り去ってゆく。ぱらり、ぱらりと、髪がほどけ落ちるたびに、張りつめていたからだも、心も、解き放されていくような気がした。
続いてフランシス様は、私の首の後ろに、手を差し入れ、髪をほぐして広げた。
「……いいですね。この方があなたらしい」
そうっと髪を梳く、やさしい指の感触に、思わずからだが震える。
「後は……これを使って……」
胸に挿していた、白薔薇を外し、私の髪に留め着けた。
「そのケープは、前で軽く合わせましょう」
真紅の宝石をあしらったブローチが、合わせ目に飾られた。そうして、フランシス様は、少し私から離れて、頭の上からつま先まで、目を走らせると、満足そうに目を細めた。
「……美しい。月の光を浴びたあなたは……妖精のようです」
「フランシス様ったら」
「ほんとうのことですよ。私の言葉を信じて頂けますね? さあ、背筋を伸ばして、自信を持って、戻りましょう」
「はい」
頷いて、歩き出そうとした私の腕を、フランシス様がそっと押さえた。
「フランシス様?」
「……すみません。あなたが、美し過ぎるので……こらえることができません」
「え? あ……」
引き寄せられ、抱きすくめられると、熱い口づけが落ちて来た。
「ん……」
息も止まるような数瞬の後、フランシス様は、私を腕の中から解放した。
「では、参りましょうか」
フランシス様は、優雅な微笑を刻むと、私がつかまれるように、腕を差し出して下さった。どきどきして、顔を上げられないまま、その腕にすがるようにすると、やさしい声が耳をくすぐった。
「大丈夫ですよ。どうか自信を持って」
誘われるように顔を見上げると、蒼い月の光と、深いまなざしが、私に注がれていた。
「……誰よりも、あなたは輝いています」
夜と、フランシス様の、魔法にかかったみたい。
私は背筋を伸ばして、答えていた。
「はい、フランシス様。もう怖くない。大丈夫です」
テラスに近づくと、室内の明るい灯と、にぎわいが流れて来た。もう恐れはひとかけらもなかった。フランシス様と微笑みを交わし、足取りも力強く、私は会場に戻ったのだった。
それからの数十分は、めくるめくように過ぎた。私は、もう誰に臆することなく、堂々と振る舞うことができたし、そうすると、意地悪なことを言っていた女の人たちも、気を呑まれたように、黙ってしまった。
フランシス様のリードで、ワルツを踊った時は、雲の上にいるみたい。
他の人なんて、もう全然見えない……。音楽と、フランシス様だけが、私の感覚を支配していた……。
そんな風にダンスは素敵に楽しかったので、もっと踊りたかったんだけれど。なぜかフランシス様は、数曲で切り上げてしまった。帰り道、その理由を問うと、薄く笑って、こう答えた。
「あなたの魅力を、あの場にいる皆に見せつけてやろうと思いましたが。あまりやり過ぎると、面白くないことになりますからね。……まったく、あなたを見る男たちの目と言ったら……! 市長も、あなたを褒めちぎっていましたし……。まったく油断も隙も、ありません」
「でも、市長さんは、かなりご年配だし、立派な紳士に見えましたけど」
するとフランシス様は、きゅっと眉をひそめて、私の両肩に手を置いた。
「……男が女性に惹かれるのに、年齢や立場は関係ないのです。理性の多寡によって、表に出て来る行動は違って来ますがね。いいですか、そのことを、よく覚えていて下さい」
「は、はい、わかりました」
こくこくうなずいて見せると、フランシス様はにっこりと笑った。
「それでこそ、私のレディ……。ああ、すみません。レディと呼ばれるのは、お嫌なのでしたね」
フランシス様は、すまなさそうな顔をしたけれど、この時、私は強い気持ちが、自分の中に湧いて来るのを感じた。
「いいえ。“フランシス様のレディ”になれるのなら、私、嬉しいです。……だから、そうなれるように、これからも指導して下さい、ずっと傍で……」
「エンジュ……」
肩に置かれていた手が流れて、私をふわりと抱き寄せる。
「ええ、もちろん、お任せ下さい。私は……あなたを“私だけのレディ”にしてさしあげます。そして……あなたも私に教えて下さい。あなたの好きなもの、嫌いなもの、あなたのすべてを……」
熱いささやきとともに、腰にぐっと手が回され、からだが密着する。
「フラ……様?」
息苦しくなって、空気を求めて、口を開いたところに、唇が重ねられた。……これまで知らなかったような、キスだった。
「ん……あ……」
甘い舌にすっかり息を吸い取られて、気が遠くなりそうな私の耳に、笑いを含んだささやきが注ぎこまれた。
「……これもレッスン課題です。ゆっくり教えて差し上げますよ……時間を掛けて、ね」
“レディ”って、そういうことなの?
これまでとは、また違う不安が胸をよぎったけれど。
それもいいかなって思えた。
何よりも、フランシス様が、大好きだから。
これからも、ずっと傍にいて……。
あなただけの”レディ” に、私、なりたい。
(終わり)
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