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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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「Amber&Jade」さんの一周年企画への投稿作品です。
お題「成長〜Growing up〜」に対応するつもりだったのですが、
う〜む、若干ズレているような^^;
shineさんが、とっても素敵に展示して下さり、感激ですv
すんごい引き立って見える〜〜v

こちらは、まあ、原文ママというか、素体というか。
そういう感じで、いろいろ想像して頂ければ、幸いです←(苦しい)

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「その星が生まれた理由(わけ)」

 四角い画面に切り取られたのは、漆黒の宇宙。覗き窓のようなものだと、エルンストはふと思った。この部屋にいながらにして、遥かに遠い聖獣の宇宙の情報をも、呼び出すことができる。
 元々神鳥の宇宙には、各地に設置された定点観測衛星から集まって来る膨大な情報を蓄積し、観測するシステムがある。アンジェリーク・コレットによって、聖獣の宇宙が産声を上げたその時から、エルンストは同様のシステムを新宇宙にも導入し、観測を続けるとともに、より使い勝手がいいように、改良を重ねて来た。
 今は座標さえ指定すれば、瞬時に画面上で、領域から領域へ、観測場所をホッピングすることができる。最初はあまり見るべきところのなかった、無の空間に次々と星雲が生まれ、星星の光が増えてゆく様は、何ともスリリングで、エルンストの探究心をかき立てずにはいられなかった。
 女王試験中、エルンストは、その興奮を努めて押さえつつ、二人の女王候補に、育成のためのデータを提供していた。だが時々たがが外れて、立て板に水のごとく、熱弁をふるうこともしばしばあった。そんな時、宇宙生成学の分野で、天才少女と謳われるレイチェルに、あきれられたり、鋭くつっこまれたものだった。対するアンジェリークは、恐らく話の内容が、さっぱりわからないことも多かったはずだが、いつもにこにこしながら、耳を傾けてくれた。
 その愛らしい笑顔に心癒され、惹かれるようになったのは、いつの頃からだったか……。彼女が王立研究院を訪れる土の曜日を、心待ちにするようになったのは……。次元の扉から新宇宙の様子を、その目で確かめる彼女の笑顔が、次第にやりがいと自信に支えられて、輝きを増してゆくのを、エルンストはまぶしい思いで見守った。そして、その輝きが最高潮に達した時、アンジェリークは、その背に白い翼を広げた。
 “候補”ではなく、“女王”になる彼女に、個人的な想いを告げる選択肢は、エルンストにはなく……。明日は新宇宙に旅立つという日に、アンジェリークが挨拶に訪れた時も、一切口に上せることはなかった。
「エルンストさん、今までありがとうございました……」
 アンジェリークの澄んだ瞳が、エルンストを見つめる。
「……エルンストさんが、ずっと宇宙の姿を見せて下さったから……ここまで来られました」
「いいえ、アンジェリーク。私こそ、あなたにはお礼を言わなくてはなりません。新しい宇宙が生まれ、成長していく過程を、目の当たりにできるなんて、望んでも得られる機会ではありません。……私は、同じ時代に生まれて、あなたと、あなたの宇宙に出会えた天の配剤に感謝しますよ」
 その言葉を、エルンストが終えるや否や、アンジェリークは、ひたと彼を見つめた。そして、今、どうしても、というひたむきさで言った。
「だったら……私があっちの宇宙に行った後も、エルンストさんは、見ていてくれますか? 私と……私の宇宙を!」
「もちろんです。あなたと……あなたの宇宙は、私にとって、尽きせぬ興味の対象ですから!」
 研究者として、という意味合いを匂わせた。その奥にある、あなたに惹かれる男として、という感情は、何とか隠しおおせた。
「ご覧下さい」
 エルンストは、愛用の端末を操作し、聖獣の宇宙を観測できるメニューを立ち上げた。
「私は……ここからいつも見ています。あなたと……あなたの宇宙を」
 アンジェリークは、画面の中の宇宙—自らが育て、明日飛び込んでいく新宇宙—に、しばらく見入っていた。そして、独り言のように、つぶやいた。
「……まだ、こんなにも暗い……」
 語尾を飲み込み、すっと息を吸い込んだ。画面から、エルンストの方へ向き直り、泣き笑いのような表情を浮かべた。
「……この宇宙に、私はたくさんの星と、命を育てます。だから……ずっと見ていてくれますか?」
 エルンストは、大きくうなずいた。
「ええ、私はここから、見守っています。私の命のある限り……」
 アンジェリークも、うなずき返した。その瞳からは、ついに涙が転がり落ちたが、彼女はそれでも微笑んでみせた。
「エルンストさんが……この宇宙がどんなに素晴らしいものかを、たくさん話してくれたから、私、頑張れました。だから……エルンストさんが、私に伝えてくれた、思い描かせてくれた宇宙を、きっと……!」
「アンジェリーク……!」
 ためらいがちに肩に腕を回して、引き寄せると、アンジェリークは、エルンストの胸に顔を寄せ、涙を流し続けた。
 熱い涙が、胸元の布地からしみ通って来た時、エルンストは少女のひたむきな想いを受け取った。運命を受け入れながら、その中で一心に自分を慕う、その心を。
 少女の肩に回した手に、エルンストは力を込めた。言葉にすることは、やはりできなかったが、先ほどはごまかそうとした気持ちを、その手にこめた。自分が……彼女をどれほど愛しているかということを。
 するとアンジェリークは、一瞬息を詰めたが、エルンストの胸に更に顔を深く埋め、とめどなく涙を溢れさせた。心が通じ合った喜びよりも、翌日に迫った別れの切なさに支配されて、二人は無言で立ち尽くしていた。

 
 それからエルンストは、アンジェリークとの約束通り、聖獣の宇宙を見守った。日に日に星の数が増し、生命の活動が活発化していく様が、各地からのデータとして上がって来る。女王アンジェリークと、補佐官レイチェルの努力は、聖獣の宇宙で確実に実を結んでいた。
 そんなある日、エルンストは、ある座標で、ばら色に輝く小さな星を見つけた。けっして大きくはなかったが、強く清浄な光を放つその星に、エルンストは心惹かれた。そう、この星は、どこかアンジェリークに似ているように感じられた。エルンストは、秘かに“アンジェリーク”とその星に名付け、かの宇宙を、白い翼で護るいとしい少女の面影を重ねた。そして、星のアンジェリークの浮かぶエリアを、いつでも見たい時に見られるように、自分の端末に設定した。
 王立研究院の業務の合間や、徹夜の作業明けの白い朝日の中でも、星のアンジェリークは、いつもそこに輝いていて、エルンストに微笑みかけているように思えた。二つの宇宙に、からだは隔てられても、想いはいつも彼女へと通ってゆく。エルンストは、ばら色の星を見つめながら、自分の心がどこに向かっているかを、日々自覚していた。そして、それは月日が経っても、宇宙がそこにある限り、褪せはしない。彼女と、彼女の宇宙は、エルンストの中で分ちがたく、重要な位置を占めるものであったから。
 そうして、いつしか一年が過ぎ去った。エルンストは、胸躍る知らせを受け取った。即位一周年の祝福を、神鳥の女王から受けるために、聖獣の女王が聖地を訪問するというのだ。
(アンジェリークに……会えるだろうか?)
 女王が、何日も宇宙を離れるわけにはいかない。様々な公式行事が短い滞在日数の中に組み込まれ、分刻みのスケジュールで、アンジェリークが行動することが予想された。けれど、一目だけでもその姿を見て、言葉をかわすことができたなら……。
 かなり難しいことであると知りながら、それでもエルンストは期待せずにはいられなかった。
 聖獣の女王来訪の期日を、こっそり自分用のスケジュールに登録して、指折り数えて、いよいよ明日となった日。エルンストは、いつも通り王立研究院の自分のラボにいた。明日、聖殿に行く時間を少しでも長く、そして回数も多く取れるように、前倒しで作業を進めていた。そうして何時間も食事も休憩を取らずに没頭していたため、ふと気づいた時には、かなり疲労が溜まっていた。
「……もう、こんな時間になっていたのか。一息入れることにするか……」
 目頭を揉み、作業机の引き出しから、常備している栄養補助食を取り出して、口に入れる。そうする間に、キーボードの上に指を滑らせ、星のアンジェリークの画面を呼び出した。この操作は、日常的にこの一年間やってきたので、今では目をつぶっていても、できるほどだった。
 画面の中のアンジェリークのばら色の輝きに見入っていた時、誰かが背後からそっと肩に手を置いた。
「ミリガン? 予定のデータはそこに上がっています。確認して下さい。ああ、それからすみませんが、コーヒーを一杯淹れて来てもらえますか」
 部下の研究員だと思ったエルンストが、画面から目を離さずに、話しかけると、思わぬ答えが返って来た。
「はい、コーヒーですね。お疲れさまです」
 その柔らかな女性の声は、部下のものではなかった。慌てて振り返ったエルンストの視界に入って来たのは……。
「アンジェリーク……陛下……!」
 ずっと心の中にしまっていた少女の姿が、そこにあった。
「お久しぶりです、エルンストさん」
 変わらない愛らしい笑み。だが、さらさらと長い髪が揺れるようになった彼女は、最後に会った時より少し大人びて……。内なる誇りと責任を感じさせる女性へと成長を遂げていた。
「明日、こちらにいらっしゃる予定だったのでは?」 
まぶしいような思いで、目が離せないまま問うと、アンジェリークはで、少し睫毛を伏せた。
「レイチェルに無理を言って、一日早めたんです。……自由な時間が欲しかったから……。エルンストさんに会えるように……」
「……アンジェリーク……!」
 この一年間、胸の底に秘め続けて来た思いの掛けがねが外れた。エルンストは、手を差し伸べ、夢にまでみた少女を、自分の胸の中に収めた。抱き締めた肩は、一年前と同様に細かったが、彼女はもう弱々しく泣き崩れたりはしなかった。
 ぎゅうとエルンストの背に腕を回し、そっと囁いた。
「信じていたし、感じていたわ……。あなたがずっと見ていてくれたこと」
「アンジェリーク……無論です。あなたと、あなたの宇宙のことを、私が片時も忘れるはずはありません」
 するとアンジェリークは顔を上げ、彼の瞳をひたととらえた。
「……でも、今は……。あなたの傍にいられる今だけは、私の宇宙ではなく、私だけを見つめて?」
 この一年間、想いを積み重ね、今日という機会を得るにあたって、ようやくアンジェリークが口に出せた言葉。ひたむきな瞳に、エルンストはつい引き込まれそうになったが、かすかに理性を呼び起こして、問うた。
「……見つめるだけで、すみそうにないのですが、いいのでしょうか?」
 するとアンジェリークは、こっくりと頷いた。
「……何のために、無理をして、今日ここへ来たと……。……!?」
 言い終わるより先に、エルンストは彼女の唇を塞いだ。そして、見つめて来た、傾けて来た想いのすべてを、腕の中にいるアンジェリークに注ぎ、そのぬくもりで確かめた。堰を切った情熱の波。その一時だけは、宇宙も何もなく、ただお互いだけがそこにあった……。
 
 
 許された時間が、残り少なくなった時、アンジェリークはからだを起こし、身だしなみを整え始めた。……女王に戻るために。髪を梳きながら、何気なくエルンストの端末に目をやって、小さな驚きの声を上げた。
「あ……!」
「どうしましたか、アンジェリーク?」
 アンジェリークは、喜びに瞳を輝かせて、エルンストの方へ振り向いた。
「……この星を、見つけてくれたんですね。エルンストさん、あなたって、やっぱりすごい……!」
「? どういうことでしょうか?」
 再び胸に飛び込んで来たアンジェリークを抱きとめながら、彼女の言葉の意味をはかりかねて、エルンストは尋ねた。するとアンジェリークは、少々いたずらっぽい笑みを振りこぼしながら、種明かしをした。
「……だって、あなたのことが恋しくて……。一晩眠らずに、神鳥の宇宙の方を眺めていた次の日に、この星は生まれたんですもの。一目見て、すぐわかったわ。この星は、私のあなたへの想いが、宇宙に働きかけて、現れたものなんだって。……そして、あなたは、何も言わなくとも、ちゃんとこの星を見つけてくれた……。ありがとう。私、信じることができます。どんなに離れていても、私たちの想いが確かに結ばれてるっていうことを」
「アンジェリーク……!」
 いとしさのままに、離すまじと、強く抱き締めたエルンストの胸に埋もれながら、アンジェリークは言った。
「ありがとう……。私、もっともっと星を増やすわ。あなたへの想いを……私の宇宙にちりばめる……。だから、きっと見つけて。これからも、ずっと見ていて……!」
 その瞬間、聖獣の宇宙に、また一つ新しい星が生まれた。女王の想いさながらに、ばら色に燃える星が……!

 
 エルンストは、今日も、見守っている。いとしい女王の育む宇宙を、変わらぬ思いで……。そして、時々見つけるのだ。暗く透き通る宇宙空間に“私はここにいる”と、控えめに主張する小さなばら色の星を。
 幾つもの世代を経た後、未来の人々は、どうして聖獣の宇宙に、これほどばら色の星が多いのかと、不思議に思うことだろう。
 その謎に迫るべく、様々な推測や分析が行われ、いくつもの仮説が立てられるとしても。その星が生まれた、ほんとうの理由を知るのは、初代聖獣の女王と、彼女を愛した一人の男のみ。
 注意深く秘められ、貫かれた愛の証は、二人の存在が宇宙から消え去った後も、輝き続け……。
 それを見上げる人の心を、やさしくさせるとともに、なぜ? どうして? という宇宙の神秘へと誘うだろう。

「私と、私の宇宙を、ずっと見ていて」

 想いは、形を変えて受け継がれる。人々は夜空を仰ぎ、つきせぬ憧れとともに、ばら色の星を探す。
 その中から、宇宙に生涯を捧げて悔いのない者が、また現れることだろう。

 まなざしは注がれ、人智と情熱が傾けられる。
 そこに無限の可能性と、神秘を秘めた宇宙が広がっている限り……。

                              (終わり)


守護聖なエルンストさんも捨て難いのですが、やはりSP2で初めて
声が付いた時のインパクトが残ってまして。
(「ああ、これは……!」って、こっちの方がビックリだよ! みたいな)
そのせいもあって、エルコレが書きやすいみたいです。
(ちなみにこちらが前に書いたエルコレ。やはり企画提出作品)

もうちょっと、理系ロマ〜ンスな雰囲気にしたかったのですが、
ボキャブラリーがなく…orz
オチは、当初考えたのより、いいところに行った気がします。
女王様は偉大ということで^^
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