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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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先日行った2周年記念アンケートで上位だった、
土日の小話です。
ポチして下さった方、ありがとうございましたV

ほんとに短い短編(汗)
付き合い始めて、数カ月ぐらい?な二人。微エロです。

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「輝く月の下で」

 
 こんなに月の明るい晩は、もう少しいいだろうと思ってしまう。
秋の日は短くて、あっという間に夜の帳が下りる。コンサートが終わって、ホールの外へ出て来た時には、もう夕焼けの名残すらなかった。
 肩の触れる距離を歩いている香穂子は、さっき聞いた四重奏のメロディを、口の中でそっとハミングしている。聴こえるか聴こえないかの、控えめなコピーと、月に照らされた白い頬を見ていると、土浦の胸は締め付けられる。
 まだ帰したくない、もう少しいいだろう。
 しかし、こうして二人で出掛けられるのは、家族の信頼があってこそだということも、土浦はわきまえていた。姉の帰りが予定より遅いと、心配して落ち着かなくなる母を、土浦は何度となく見ている。香穂子の母親も、きっと同じことだろう。
 帰したくない。でも、帰さなくては。
 こみ上げる気持ちを、何とかねじ伏せようとしている間にも、香穂子の家は、どんどん近くなっていく。
 そんな土浦の葛藤を知ってか知らずか、香穂子はのんびりと歩きながら、ハミングし続けている。だが、その足が、小さな叫びとともに、ふと止まった。
「あ……」
「ん、どうした?」
 公園にもつながっている歩道の脇には、背の低い灌木と、数メートル間隔で、人の背の高さほどの木が植えられている。香穂子が足を止めたのは、街灯の傍らで、明るく照らされた一本の木の前だった。
「キンモクセイ、もうほとんど落ちちゃったね」
 数日前には、緑の葉の間から、こぼれるばかりに咲きにおっていたはずのオレンジ色の花が、ごくわずかになっていた。落ちた花は、根元にうっすらとつもっていた。
 香穂子は、身をかがめると、土に還ろうとする花を、指先でかき混ぜるようにした。
「子供の頃、よく集めて帰ったなあ。匂いが残ってたらと思って。でも、落ちた花って、もうあんまり匂わないんだよね」
 言いながら立ち上がると、香穂子は同意を求めるように、花に触れた指先を、土浦の前にかざした。甘い香りが……わずかに匂ったような気もしだが、土浦の感覚を揺さぶったのは、目の前に差し伸べられた香穂子の白い指だった。
 土浦は、その指を自分の手で包むと、そのまま唇に押し当てた。
「つ、土浦君! 私の手、汚れてるよ!」
 言いながら香穂子が、慌てて引こうとする手を、より強い力で引き寄せ、その勢いで倒れかかってくるからだを抱き締めた。
 土浦が、せわしなく唇のありかを探し始めた時、あえぐように香穂子は、ささやいた。
「……ここじゃ、いや。恥ずかしい」
 言われて初めて土浦は、今立っているのが、街灯のたもとであり、夜とはいえ、かなりはっきりと自分たちの姿が照らし出されることに気づいた。
「ここじゃなきゃ、いいんだな?」
 耳元で低く尋ねると、香穂子は一瞬身をかたくしたが、すぐにかすかに首を縦に振った。その応えを受け取るや否や土浦は、香穂子の手を取り、足早に歩き始めた。二人がこれからすることを、光が暴き立てない、闇を探して。
 公園の木立の奥の、人目につかない一隅までたどり着くと、土浦は香穂子の方を振り向いた。
「ここなら、いいか」
 おとなしくここまでついて来た香穂子だったが、土浦の押し殺した声音に、少し脅えたようだった。しかし、もし「いや」と言われても、それを受け入れてやることは、もはや土浦には、できそうになかった。
 ほの白い月明かりにぼんやり浮かぶ香穂子の表情は、よく見えない。けれど、小さくではあるが、香穂子は応えを返した。
「うん……」
 了承を得た次の瞬間には、土浦は香穂子を抱き寄せていた、桜色の唇を貪り、衣服の上から、ずっと知りたかった香穂子のからだの温もり、弾力を確かめる。 
 土浦の強い手のひらに、腰や胸を包まれ、押し上げられて、香穂子の足先は、何度も危うく地面から浮きそうになる。口づけの合間に漏れる香穂子のくぐもった声は、苦しげで、それでいて、まぎれもなく甘さをひそめていて、それが一層土浦を駆り立てた。
 だが、スカートの裾から、腿の内側をたどり、更にその上に手を滑り込ませようとした時、香穂子のからだは一瞬ぴくりと跳ね上がり、初めて土浦の欲に抗おうとする動きを見せた。
「……ダメ、お願い」
 か細い力で、必死に土浦の手を押しとどめ、うっすらまなじりに涙を滲ませる香穂子を見た時、土浦は自分があまりに性急すぎたことに気づいた。
 そっと腕から香穂子を解放し、肩にだけ手を掛けると、ささやいた。
「……ごめん。いやだったか?」
 すると香穂子は、首を振った。
「……ううん。いやじゃない。ただ少し、怖かったの……」
「ごめん、ごめんな……」
 香穂子の肩を包むように抱き、何度も詫びた。すると香穂子は、腕の中で小さく首を振り続けた。胸に擦りつけられる香穂子の頬の感触と、シャツに染みて来る熱い涙……。この上もなく「いとしい」と思った。「大切にしたい」とも……。
 香穂子の涙が収まるのを待って、家路へと戻った。晴れた夜空から降る月光に満たされた道を、手を繋いで歩いた。迷わぬように、転ばぬように。
 香穂子の家の門前まで送り届け、別れのあいさつを交わす時、土浦は再度詫びた。
「遅くなっちまったな。それと……悪かった」
 すると、香穂子はゆるく首を振って、微笑んだ。
「いいの……。少しでも……長く一緒にいたかったから」
 潤んだ瞳で見つめられて、土浦の胸は高鳴った。それと同時に、からだの奥底で、再びあの衝動が頭をもたげるのを感じた。香穂子自身が望んでくれるのであれば、その衝動は、弦を放れた矢のように、飛び出してゆくことだろう。それはそう遠い日ではないように思えた。
(……俺は、おまえを俺の欲からは護れない。だけど、それ以外のものからは……きっとおまえを守るよ)
 自分でも、虫のいい話だとは思った。すると香穂子は、そんな土浦の気持を読み取ったかのような行動を取った。家族がいる家の気配を少し伺うと、土浦の胸に、そっと身を寄せた。
「……いいの。いいのよ、土浦君」
 甘くやさしい、それでいて意志のこもったささやき。香穂子は、一瞬土浦のからだに腕を回すと、すっと身を離して、言った。
「じゃあ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ……」
 笑みを閃かせると、香穂子はドアの中に姿を消した。土浦は、香穂子の残像と感触を振り切れなくて、しばらく門前にたたずんでいたが、太い息を吐くと、自分の家の方に足を向けた。
 月が、もうかなり高い位置まで昇って、煌煌と夜を照らしていた、
(……月の光に浮かれたのかもしれないな)
 土浦は、心の中で呟いた。だが、それだけではないものが、自分と香穂子の間に、芽生え始めたこともわかっていた。胸の中の想い、そして衝動と理性を確かめながら、土浦は歩いてゆく。はるか虚空に浮かぶ月が、そんな土浦の後を、ついてゆく。
 
 すべての夜は、月に見守られている。       
                           (終わり)




土浦には、多少なりとエロ要素をという、私の願望のみを反映したような^^;  ご要望に応える形としては、ヴォリューム不足と思われるので、後日余力があったら、もう一本、短いのを上げられたらな、と。
余力がなかったら、誠にすみません(><)
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無題
お忙しいなか、リクエストにお答えいただきありがとうございました。
土浦の余裕のなさが青春しててたまらんです。お外だと寒そうなので思いとどまったのはえらいですが、その日の夜は、さぞかし目がギンギンしちゃって寝られないことでしょうな……。
若いっていいですね(遠い目)
ちどり 2009/10/30(Fri)21:52:05 編集
無題
いえいえ〜、こちらこそお立寄り下さって、ありがとうございますV
そですね〜、多分いろいろギンギン悶々してたのではないか、と(笑)
それでも、踏みとどまるのは、香穂子さんへの愛ゆえということで。
どうも私が書くと、青臭くなってしまふのですが、いつかもう少しオトナのカホリがするのが書けるといいですな。←希望的観測

コマツバラ URL 2009/10/31(Sat)12:30:30 編集
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