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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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4日遅れになりましたが、どーしてもSSの1本は、
上げたかったので。ぜーぜー、こ、これで、一つ目標は
果たしたぞ、と。


※ぬるいですが、性描写がありますので、
苦手な方はご注意下さい。

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「ただ一つ、願ったこと


 目覚めた時、ふわりと、香りが舞った。起き上がってみると、見覚えのある袷がからだを覆っている。
「あ、これって……」
 布地に指を滑らせてみれば、上質の絹の感触。そして、何よりもたちのぼる香りが、その持ち主を花梨に知らせた。
「彰紋くん、掛けてくれたんだ」
 だが、傍らにいたはずの彰紋の姿は、周囲に見当たらなかった。彼が花梨に読み聞かせてくれていた書物は、きちんと重ねられて、文机の上にあった。穏やかな声の響きと、まだ浅い春の日射しのあたたかさに誘われて、いつか寝入ってしまったらしい。
「まさか……帰っちゃったってことは、ないよね?」
 彰紋ともにいられる貴重な時間を、寝て過ごしてしまった自分に、歯噛みした。彼は、多忙な時間の隙間を縫って、会いに来てくれたのに。
 真二つに分たれて、淀んでいた京の気が、元のように巡り始めると同時に、刷新の気運が高まるこのごろ、東宮である彰紋に寄せられる期待も大きくなっている。兄である今上帝の信任も一層深まり、政務上の意見を求められたり、大臣たち高官を集めての合議に連なる機会も増えているという。
 出会った時から、いや、この世に生を享けた時から、彼は京のまつりごとを担うことを宿命づけられている。頭では理解していたが、胸の中に恋心が育つにつれて、会えない時間が、やるせなくなっていく。
(もっと会いたい。傍にいてほしい)
 だが、そんな願いを、口に出すわけには、いかなかった。忙しそうではあったが、会うたびに、彰紋の表情には力強さが加わり、内面的な充実を感じさせた。この変革期に信頼され、期待されることで、以前にも増して責任感とやりがいを覚えている様子だった。にも関わらず、二人だけの時は、心に掛けているはずの職務のことを、ほとんど口にすることもなく、彰紋はひたすらにやさしかった。
(我が儘言っちゃいけないよね……)
 気持ちを抑えるとともに、彼がその身と心を傾けて、護ろうとしている京について、もっと知るべきという思いが、花梨の中に芽生えた。そこで、紫姫に頼んで、京の歴史やまつりごとの仕組みについて、書かれた書物を取り寄せてもらって、学び始めた。
 わからないところは、深苑や、時折訪ねて来る幸鷹に質問した。二人は、それぞれ熱心に教えてくれた。深苑は「恥をかかないように」、幸鷹は「神子の向学心に応え、伸ばすために」
 同じ屋根の下にいるだけに、深苑は容赦がなかった。彰紋が講読をしてくれている最中に、眠り込んでしまったのも、前夜におそくまで、深苑にみっちり指導されて、頭とからだが、相当疲れてしまったためだった。
 理由が何であれ、彰紋との得難いひとときを失ってしまったことが、悲しくて、せつなくて。花梨は、彼の袷を丁寧に畳むと、立ち上がって、その姿を捜し始めた。
 そして、庭で、彰紋が咲き始めた梅の木を見上げているのを見つけた時、喜びと安堵が、胸にあふれた。
「彰紋くん!」
 名を呼んで、走り寄ると、彰紋は視線を梅から花梨へと移した。
「ああ、花梨さん。目が覚めたんですね」
「ごめんなさい! せっかく彰紋くんが来てくれたのに、私、眠っちゃうなんて……」
 頭を深々と下げる花梨に、彰紋はふわりと微笑み、首を振った。
「謝ることなんて、ないですよ。紫姫から聞いています。最近、熱心に勉強されているそうですね? お疲れだったのでしょう」
「でも……!」
 花梨は、ぱっと顔を上げた。彰紋のいたわりは、嬉しい。でも……。
(一緒にいられる時間は、そんなにないのに……!)
 後の言葉は、告げられなかった。
「でも……?」
 彰紋の目が、問うように、促すように、花梨を見つめる。
「……ううん、何でもないの」
 目をそらしてしまった花梨の頬に、そっと彰紋の手が伸ばされた。
「あ……」
 手のひらに頬を包まれ、顔の向きを彰紋に向けて戻される。その手の感触に、花梨の胸はざわめき……だがその手がすっかり冷えていると気づいた時、花梨は声を上げた。
「彰紋くん! こんなに手が冷たい! ああ〜、私に着物を掛けてくれたから! ダメだよ、すぐ部屋に戻ろう! 風邪引いちゃう!」
 彰紋は、にっこりすると同時に、意志を秘めた口調で言った。
「そうですね。ですが、その前に、先ほど言いかけてやめてしまった言葉の続きを聞かせてくれませんか。でなければ、僕、あなたの部屋には戻りません」
 交渉ごとや、駆け引きの場数を踏んだ、怜悧な東宮の片鱗が覗く。
「そんな……」
 言葉に詰まった花梨は、うつむくしかすべがなく。すると彰紋は、そんな花梨の両の頬を、手で挟むようにして、柔らかく言葉を重ねた。
「すみません……。僕を思いやってくれる、あなたのやさしさにつけ込んで、こんなことを言うのは、卑怯、ですよね。でも、あなたには言葉を飲みこんでほしくない。気持ちをぶつけてほしいんです」
「彰紋くん……」
 注がれる眼差しのやさしさに、目を閉じて、甘えまいとした。言葉と気持ちを封じるために、唇を噛んだ。だが。
「花梨さん?」
 重ねられた呼びかけにこもる慈しみと、頬を撫でる指先の感触に、花梨の意地は崩れた。
「……なら、今日は帰らないで。傍にいてほしいの」
 ついに言ってしまった。彰紋は、呆れてはいないだろうか。目を開き、おずおずと彼の顔を見返した。
「花梨さん……」
 彰紋は、驚いたように目を見開いていたが、すぐに微笑んでうなずいた。
「わかりました。では、行きましょう、あなたの部屋に」
「え? ええ?」
 ずっと言ってはダメだと思い続けてきた願いを、彰紋があまりにあっさり受け入れたので、花梨は驚き、少々尻込みしてしまった。だが、花梨の肩を包みながら歩く間にも、彰紋は「今日は、この館にとどまる」と、必要なところに連絡が行くように手配りをし、花梨の部屋に着く頃には、すべて終わっていた。
 事態の急展開に、花梨は戸惑うとともに、ほんとうによかったのかと、思わずにはいられなかった。彰紋には、自分を訪ねた後の予定があったのではないだろうか。それがあったとしたら、自分のために断ってしまって、あとあと支障を来さないだろうか。
 部屋に戻り、膝近く向き合った時、思い切って聞いてみた。
「あ、あの、彰紋くん、ほんとうによかったの? 何か予定があったんじゃ?」
 すると彰紋は、笑ってわずかに首を振った。
「大丈夫ですよ。今日はあなたとゆっくり過ごしたいと、最初から思っていましたので。だから、書物を持って来たんです」
「あ、ああっ、ごめんなさい! せっかく読んでくれてたのに」
「いいえ、どうか、気にしないで。その……可愛らしかったです」
「え?」
「あなたの寝顔。日だまりに咲いている花みたいで……。ずっと見ているのも失礼なので、僕、庭に出ていたんです」
「やだ、恥ずかしい!」
 顔を両手で隠すようにすると、ふわりと空気が動いた。いつの間にか、彼のものと言い当てられるようになった香りが、より濃くなったと感じた時、ささやくような声がした。
「隠さないで……。僕、ほんとは、あなたの顔をずっと見ていたい……。先ほども、今も……」
「あ、彰紋くん……?」
 顔を隠した手が、そっと取りのけられる。そこには、近々と花梨を見つめる彰紋の瞳があった。そこにたたえられた、直ぐな色に心乱され、堪えきれずに、目をぎゅっと閉じた。すると、おとがいを指がなぞり、それに続いて……唇に同質のものが押し当てられた。
 初めての口づけの後、ぼうっと酩酊している花梨に、そっと、だが、揺るぎない言葉が届けられる。
「……どうぞ、心の準備をしてくださいね」


 それからの数時間、花梨は、わけのわからないまま、大わらわになった女房たちに、右へ左へと、引き回されることになった。湯浴みをさせられ、ああでもないこうでもないと、着物を着せ替えられ、かもじを付けられるやら、紅を差されるやら。
「あの、これって?」
「ええっ、なんで?」
 何度か疑問を投げかけたが、恐ろしいほど真剣な女房たちは、花梨に有無を言わせはしなかった。
「東宮さまをお迎えするのに、そそうがあっては、なりません」
「深苑さま、紫姫さまの恥ともなります」
「この館の存亡がかかっているのです」
 それに対して、
「え? だって、彰紋くん、今までだって、しょっちゅう来てるじゃない」
 と、思わず、問い返して、花梨は合唱で反論を食らった。
「お泊まりになるのは、意味が違います!」
「え。ええ〜〜?」
 確かに、帰らないでほしいと言った。彰紋は、それを受け入れた。だが、それが「泊まる」という行動につながるとは……。
そして「泊まる」ことは意味が違うというのは……まさか! 
 ここに至って、ようやく、事態がおぼろげにわかりかけた。そして、慌ただしい夕餉のあと、深苑と紫姫が、顔を揃えて、部屋に挨拶に来た時、“まさか”が現実のものであることを、花梨は悟った。
「神子さま、おめでとうございます」
 笑顔の紫姫の横で、深苑は、例によって口元をまげた。
「まったく、彰紋さまも、物好きでいらっしゃるとしか、言いようがない。だが、神子をこの館で世話している以上、一切を取り仕切るのが、我らの責」
 深苑はここで一旦言葉を切り、困惑したような、だが、やさしさを含んだ目をして、後ろに控えた年配の女房へと、花梨の注意を向けさせた。
「我らには、正直、よくわからないことゆえ……、この者に以降のことは、聞くがよい。その……うまくいくよう、願っている」
「神子さまのおしあわせを祈ってますわ」
「ではな」
「あ、ちょっと! 二人とも!」
 呼び止める間もなく、するすると双子が退室した後、花梨はこの後の段取りについて、女房から説明を受けた。そこで花梨は、改めて彰紋の東宮という身分の重さを、思い知らされることになった。
(傍に、いてほしい)が、おおごとになってしまう立場なのだと。それと同時に、彰紋がこれまでの人生で、立ち居振る舞いや言葉の選び方まで、東宮らしくあろうと努めてきた、そのわけも、理解できる気がした。
(彰紋くん……)
 時折彼が見せる少年らしい笑顔や、ふとこぼしてしまった涙を思い出す。元々豊かな感情を、相当に自制しているのだろう。その胸のうちを思うと、胸が締め付けられそうに、切なかった。


 そして、夜の帳が降りる頃、再び彰紋が部屋に来た。
「花梨さん」
 灯影に浮かび上がる彼は、昼間とは違って見えた。明るい色の髪も、瞳も、つややかな翳りを帯び、繊細な顔立ちを際立たせた。波立つ胸を、懸命に花梨はこらえていたが、それは彰紋も同じだったらしく。
「こうして夜お会いするあなたは……いつもと違う人みたいですね」
 戸惑うように、けれど熱に潤んだ瞳で、花梨を見つめた。
「……変、かな?」
 短い髪に付けたかもじと、唇の紅が、似合わないように思えて、実はずっと気になっていた。
 彰紋は、ゆっくりと首を振った。
「いいえ……綺麗です、とても……」
「あ……」
 息のかかる距離に膝を進めてきた彰紋に、手を取られた時、びくんと、からだが強ばった。そんな花梨の緊張と動揺を、彰紋は敏感に察知したようだった。花梨の手を、自分の手で包みこむようにしながら、穏やかに言った。
「……怖い、ですか? だったら、無理をしなくても、いいんですよ」
(え……?)
 思わず顔を見返すと、彰紋は。ちょっと困ったような笑みを浮かべて、言葉を接いだ。
「あれからずっと考えていたんですけれど、もしかしたら、あなたはこうなると、予想していなかったのでは? あなたがいた世界と、この京では風習も、言葉の意味するところも、違うでしょうし。
ただ、こうなった以上、僕があなたの部屋に泊まらないと、かえってあなたの名誉に傷を付けてしまうことになるので、今夜はここで過ごさせてもらいますね。でも、安心して下さい。僕、離れて、寝むことにしますから」
 そっと手を離して、彰紋は立ち上がろうとした。その時、花梨の中で、こらえてきたものが、弾けた。
「……いや! 離れないで!」
 あちらを向きかけていた彰紋の袖をとらえ、しっかりと握りしめる。彰紋は、驚いたように振り返り、そのまま花梨の傍に膝を付いた。
「……いいんですか? ほんとうに?」
 押し殺したような問いかけに、花梨の感情が雪崩のようにあふれ出す。
「……離れたくないの! ほんとは……ほんとは、ずっと傍にいたいの!」
 叫ぶような訴えとともに、花梨が投げかけたからだを、彰紋の腕が、しっかりと抱きとめた。
「……嬉しいです。あなたは……東宮としてではなく、僕自身を求めてくれるんですね?」
 彰紋の胸に頬をすり寄せながら、何度もうなずいた。すると……かすれる声が、だが、きっぱりと告げた。
「では、僕、もう我慢しません……!」
 くまなく押し当てられる唇の感触。もどかしげに、ほどき、押しひらき、衣の下に隠していたものを、あらわにしていく指先。
 陶然と身を任せながら、彰紋がぶつけてくる熱と想いを、花梨は受け取った。そして、それに負けぬほど強く、深く、自分の中にたたえられていた想いを、彼に返した。
 絹糸の髪に、そっと手を差し入れ、彰紋の頭を胸に抱き締める。汗ばんだ全身が、花梨の肌に覆いかぶさり、とぎれとぎれに、名を呼ぶ声がする。
「花……梨さ……」
 何ものも受け入れたことのない門が確かめられ、いたわりをもって、押し開かれる。
「くっ……!」
 痛みとともに、押し寄せる充足感に、花梨は全身をさらわれた。何も考えられずに漂う波の間で、一つのささやきだけを、聞き取った。
「……あなたを、愛しています……」


 朝まだき。夜の支配がまだ色濃い時間に、花梨は傍らで動く気配を感じた。目を開けてみると、しとねから身を起こした彰紋が、はらりと単衣をまとったところだった。
「……もう、帰っちゃうの?」
 ひそりと呼び止めると、彰紋は振り返った。光の乏しい中、表情はしかとはわからなかったが、その声はせつなげに響いた。
「ごめんなさい。日が昇るまでに帰るのが、しきたりなんです」
 ゆっくりと顔が近づいて来て、額にそっと唇が触れた。
「また、会いに来ます……。必ず」
「彰紋くん……!」
 腕を伸ばし、首にかじりつくと、倍する強さで、抱き締められた。身も心もわかち合う、そのいとしさを知った今では、一層離れるのが辛い。だが……その辛さの底に、確とした礎石が置かれたことも、花梨は感じていた。
(……でも、この人は、私を愛してくれてる……)
 その確信があればこそ、腕を何とかほどくことができた。
「行って、彰紋くん。あなたが行かなければならないところへ。でも、いつだって、私が待ってるってことを、忘れないで」
「花梨さん……!」
 彰紋に握られた花梨の手に、額が押し付けられる。熱い涙を手に感じて、花梨は胸をつかれた。
「……忘れません。いつだって、僕のからだも心も、あなたのところに戻ってきます。だから……花梨さんも、僕を信じていて下さい」
「うん、わかった……」
 花梨の答えを受け取ると、彰紋は顔を上げた。暗がりの中で白く光るその涙を、指先で拭いながら、花梨は重ねて言った。
「わかったよ、彰紋くん。私、あなたを信じてる、待ってるから……」
 交わされた約束と、口づけは、深く、深く、お互いの心にしみこんでいった。 


 昼下がり、部屋に深苑が訪ねて来た。花梨は、顔も上げられない思いだったが、深苑もいつになくきまり悪そうな顔をしていた。
「すまぬが、紫は遠慮させてもらった。その……まだ少し、早すぎる気がするのでな」
「あ、うん……」
 それを言うなら、双子の兄である深苑とて、同じことだったが。彼は、この館の当主として、役目をまっとうしようと、心に決めて来たようだった。おほんと咳払いをし、威儀を正すと、口火を切った。
「とどこおりなく、彰紋さまと一夜を過ごされた由、心よりお祝いを申し上げる。実は、内々にではあるが、彰紋さまは、おぬしを妃にと望んでおられる。館の当主として、この深苑、しかるべき手順、儀式を踏んだ後、おぬしを彰紋さまの御許に送り出す所存。これからは、このことを心に留め置かれて、日々精進して過ごされるよう、願いたい」
「あ、はい」
「“はい”ではない、ここは“謹んで承ります”というところだ」
「あ、あ、ええと“謹んで承ります”」
 慌てて頭を下げた花梨に、深苑は、しようのないといった風情で、ため息をついた。
「まったく、おぬしなどに、東宮妃が果たして務まるのか。不安は尽きぬが、我らも最善を尽くして、おぬしの後ろ盾となろう」
「ありがとう、深苑くん」
「ああ、感謝してもらいたいものだ」
 すっかりいつもの物言いに戻った深苑だったが、ふと表情を和らげた。
「しかし、まあ、何と言うか……。おぬしを嫁がせるとは、何とも複雑な心持ちだな。花嫁の父親の心境とは、このようなものであろうか」
 年齢からすれば、信じられないほど大人びているとはいえ、まだ童子と言っていい深苑のこの言いように、花梨は微笑まずにはいられなかった。
「今から、そんなこと言って。紫姫の時は、どうなるんだろうね?」
 深苑の眉間に、見る見るうちに、たてじわが寄った。
「紫には、まだ結婚は早い! 早すぎる!」
 うっかり地雷を踏んでしまった花梨は、この後、深苑に“婦女子が備えるべき慎み”について、延々お説教を食らう羽目になった。
 だが、そんな深苑も、いざ花梨が館を離れる日が来た時、物陰でそっと涙を流したとか。


 願ったのは、ただ“傍にいたい”ということ。
 だが、愛する人の背負う責任は、あまりに重く。彼を取り巻くものの中で、時に見失いそうになることもある。
 だが、そのたびに、花梨は思い出す。あの朝、この手に享けた、彰紋の涙。誰にも見せまいと、心つよく、押し込めて来たに違いない、熱い涙を。

「あなたが、笑えるように、泣けるように、私がいる」

 揺るぎない、愛の礎は、その心の中に。
 抱き締める熱情は、そのからだの奥に。

 そのすべてで、彼を愛し続けていく。
 これからも、ずっと……。
                             (終わり)






こういう話は、もすこし、こう……恋心を色濃く描写できたらいい
のにと、思います。

少年らしい彰紋さまも、
りりしい彰紋さまも、大好き、ふぉーりんらぶvvv
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