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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
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暦の上では、もう春ですが、まだまだ寒い間に、
書き上げたかったお話です。

友雅さんが、若干ヘンな人になってます。

どこまでも、かっこいい彼がいい〜! という方は、
さくっとスルーということで、宜しくお願いします。

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「雪玉が、ぶつかって」

 
 冬というのは、まったく無粋な季節だと思っていた。どんなに美しい女人でも、綿の入った厚手の衣で、着ぶくれていては、魅力が減ずる。火桶にかじりついて、離れない様子など見せられた日には、もはや幻滅である。
 そもそも、夜歩きの時に、しんしんと寒さが身に染みるし、部屋に上げてもらえるまでの床の冷たいこと。おまけに、幾重にもかさねた冬衣を脱がせるのは、常より数段手間がかかるのだ。
  そんなわけで、恋の狩人たる自分には、実に好ましくない季節だというのが、友雅の見解だった。
 だが、冬嫌いの友雅も、雪だけは、悪くないと思う。純白に塗り替えられた雪景色がもたらすしんとした静寂は、まるで別の世界に来たような錯覚を起こさせる……。この白銀の国ならば、冷めはてた自分の胸に、情熱を灯してくれる何かが見つかるかもしれない。そんなはかない夢をかいま見せてくれるから……。
 夢は夢に過ぎないと諦めていた友雅だったが、彼の運命を変える女人が現れた。龍神の神子として、異世界から京に呼ばれた少女、あかねである。京にまき散らされた穢れを祓い、平安をもたらした彼女は、友雅の胸に眠っていた熱い感情をも呼び覚ました。
 遥かな桃源郷の月のように思えていた情熱は、曇りない瞳をした少女となって、友雅の元に舞い降りたのであった。
 
 そのあかねは、今も、藤姫の館で暮らしている。いずれは、正式に娶るつもりだが、異世界から来た彼女が、この京で、貴族の正室となるためには、それなりの知識や作法を身に着ける必要がある。気持ちの通い合った藤姫の元で、少しずつ教わり、馴染んでゆけばよいというのが、友雅をはじめ、彼女を愛する周囲の人間の考えであった。
 相応の準備期間を経て、気候のよい陽春から夏にかけて、佳き日を藤姫が占い、正式に婚姻を、というのが、おおよその計画だった。

「雪が、随分降り積もったな」
 藤姫の館の門前。牛車から降り立った友雅は、周囲を見回して呟いた。このところ、職務が立て込んでいたために、なかなかあかねに会いに来る時間が取れなかった。会えない間、あかねはどのように過ごしていただろうか。慣れない京の寒さに、風邪など引いていないだろうか。
 それからそれへと、想いは巡るが、頭であれこれ考えるよりも、あかねの顔を一目見れば、安心できるというものである。胸に募る“会いたい”という気持ちを噛み締めた。顔なじみになっている門番に見送られて、友雅はあかねの姿を求めて、歩き始めた。
 今日の空は、青く晴れ渡り、日光が雪に反射して、まぶしいほどだった。扇をかざして、陽光をさえぎりながらたどる小径は、門から母屋に至るまで、十分に雪かきがなされ、歩きやすかった。
(この館の下人は、骨身を惜しまず、よく働くとみえる)
 館の主である藤姫の、幼いながら、誠実と気品を兼ね備えた人柄が、下々にまで反映しているのだろうと、友雅は考えた。
(まあ、あかね殿と藤姫のためなら、この私ですら、手を貸そうという気になるのだからね)
 いとしい少女と、愛らしい姫と、花が並び咲いたような様を頭に浮かべた友雅だったが。その期待が、少々外れてしまう瞬間が近づいていた。
 
 館の入り口で、女房に案内を請おうとした時、何やらにぎやかな声が、中庭の方から響いて来た。その中に混じった笑い声が、友雅の注意を引いた。
(もしかして、あかね殿もいるのか?)
 そこで館には入らずに、そのまま中庭に行ってみることにした。
 母屋の周囲をまわり、入り口とは反対側の中庭に向かって、角を曲がった瞬間。
「うっ……!」
 いきなり冷たいものを、目から鼻にかけて、ぶつけられた。雪玉だった。さして痛くはなかったが、雪に肌を濡らされて、気持ちがいいものではない。
「友雅さん!? ごめんなさいっ!」
「なんだ、友雅、来たのか」
 雪を目から払い落としながら、徐々に情況を把握する。中庭にいたのは、あかねとイノリで、どうやら雪玉を投げ合って遊んでいたらしい。距離を取った二人の間には、大きな雪だるまも鎮座していた。
「ごめんなさい、友雅さん! 大丈夫ですか?」
 あかねは、少々雪に足を取られながら、急いで友雅の傍へやって来た。ふくふくした綿入れを身に着け、着物の裾をからげ、およそ年頃の姫のするものとではないその姿。けれど寒気のために、上気した頬の色は、冴え冴えと美しく……。そんなあかねの様は、友雅の胸に、一時に様々な感情を巻き起こした。
(……まったく、困った姫君だ)
 乱れる想いを、それでも表に出さないよう、薄い笑みを刻み、友雅はあかねの肩に手を置いた。
「これでも武官なのでね。君が投げた雪玉ぐらい、どうということはないよ」
「だったら、俺がお見舞いしてやろうか? そしたら、雪玉だって馬鹿にしたもんじゃねえって、わかるぞ?」
 腕をぐるぐる回すイノリに、友雅が答えるより早く、あかねがかばうように、両手を広げた。
「だめ! 友雅さんにぶつけちゃ!」
「何、言ってんだ、あかね! 友雅だって八葉だぞ? おまえがかばうのは、筋違いだっての。てか、これから男と男の勝負すんだから、邪魔するな」
 いつの間に、イノリと勝負をすることになったのか。友雅は苦笑しながら、軽くいなした。
「あいにくと私は、君と勝負をするつもりはなくてね。それより、少々着物が濡れてしまったし、暖を取らせてもらえまいか。あかね殿の手もこんなに冷たい。そろそろ部屋に入る頃合いだろう」
「はい!」
 あかねが素直に頷いた時、騒ぎを聞きつけたらしい藤姫が、館の奥から姿を現した。
「にぎやかですわね。まあ、友雅殿、いついらしていたのですか。ちっとも知りませんでしたわ」
「楽しげな声に誘われてね。先にこちらへ通らせてもらったのだよ。ところで姫、いたずらっ子のおかげで、少々着物が濡れてしまったよ。部屋で火に当たらせてもらっても、いいだろうか?」
「もちろんですわ。どうぞお上がり下さい。神子様も、イノリ殿も、そろそろ休憩なさっては?」
「うん、そうするよ」
「じゃあ、俺も、上がらせてもらうかな」
 中庭から三人は、渡廊へと上がった。
「神子様、お召かえをなさいませ。誰か、友雅殿を奥へご案内して。イノリ殿は私とご一緒にこちらへどうぞ」
 藤姫が、てきぱきと指示を出した。
「ええ、なんで、友雅はあっちで、俺はこっちなんだよ?」
 藤姫に、あかね、友雅とは、反対の方向を示されて、イノリは不服そうに、唇を尖らせた。
「イノリ殿、友雅殿が、こちらにいらっしゃるのは、十日ぶりなのですわ」
「ですから、二人のお時間が必要なのですわ」
 藤姫と、年かさの女房に、なだめるように言われて、イノリは渋々うなずいた。
「ちぇっ、つまんねーの。おい、あかね、また遊ぼうぜ。友雅、この次は、きっちり勝負着けるからな」
 イノリの呼びかけに、あかねは「うん、またね」と手を振り、友雅は苦笑した。
(やれやれ、イノリにも、そろそろものの道理を、わかってほしいものだね……)
 心の中で、そうつぶやくと、友雅は女房の先導に従って、奥の部屋へと足を向けた。


 通された部屋で、しばらくくつろいでいると、あかねが自室で待っていると、女房が呼びに来た。
(ようやく、逢瀬が楽しめるというものだね)
 他人に、それと気づかせることは、まずなかったが、あかねに二人きりで会える喜びで、友雅の胸は騒いでいた。
「あかね殿、失礼するよ」
 一言かけて、室に入ると、笑顔のあかねが、友雅を迎えた。淡い桃色のうちきに装束を改め、ちょこんと座っていて……やっぱり厚着だった。だが、厚着であるにも関わらす、友雅の左胸のあたりで、化学反応が起こった。
(何と……愛らしい!)
 胸がときめくのを感じた瞬間、友雅は自分で、自分に驚いた。
(いや……確かに愛らしいのは、愛らしい。だが、だが、あのような色気のない有様にそそられるような私では、なかったはず……)
 長年かけて培って来たはずの美意識と自意識に照らして、あり得ない自分の心の動きに、友雅は軽く混乱していた。
「友雅さん? どうしたんですか?」
 あかねが、小首を傾げて尋ねる。小鳥のように可愛い。すると、またしても盛大に、心臓が跳ねた。
(…………私は、いったいどうしたというのだろう?)
 思わず額を押さえる友雅を見て、あかねは見当はずれの心配を募らせた。
「あの……もしかして、さっき雪玉をぶつけたところが、痛むんですか?」
 (雪……玉……)
 友雅の脳裏に、先ほどの中庭でのあかねの様子が浮かんだ。桜色の頬をし、着物の裾をからげて、白い膝小僧を見せていたその姿を思い出すと、動悸が激しくなった。そう、あの時は持ち前の斜に構えた姿勢で、何とか持ちこたえたのだが……あの時すでにときめいていたのである! 
(何ということだ……!)
「友雅さん!?」
 左胸を押さえて、うずくまった友雅を、あかねは懸命に抱きとめた。心臓発作でも起こしたのではという恐れが、彼女に押し寄せる。
「誰か……っ!?」
 大声で人を呼ぼうとしたあかねの口を、友雅は手を伸ばして、塞いだ。
「ふが……ふがはふぁん?」
 目をまんまるに見開いて、ふがふがとそれでも友雅の名を呼ぶあかねに、どうにか笑みを作ってみせる。
「心配はいらないよ……。それより、やっと二人きりになれたのに、人など呼ばないでおくれ」
「ほんとに、大丈夫なんですか?」
「ああ、からだの方は、何ともないよ。ただ、その……思ってもみなかったような感情が湧いて来てね」
「思ってもみなかったような感情??」
 訳が分からないという顔をしたあかねを、友雅は腕の中に抱き込んだ。
「え……? ちょ……友雅さん?」
 驚き、もがくあかねの耳に口を付けて、熱い息とささやきを吹き込む。
「……君が、愛らし過ぎるのが、いけないのだよ」
「友……雅さん」
 あかねの頬が、真っ赤に染まる。火照ったその頬に、唇を繰り返し付けると、友雅は腕を少し緩めた。あかねのからだを抱え直すと、膝の上に乗せる。
「友雅さん。……恥ずかしいです、ちっちゃい子みたいで」
 戸惑いに揺れるその瞳に、友雅はにっこりと笑いかけた。
「恥ずかしがることはないよ。君と私、二人だけなのだからね。さあ、それより、私が君に会いに来られなかった間、どんな風に過ごしていたのだい? 聞かせてくれないか?」
 もの柔らかな態度に安心して、あかねは話し始めた。
「ええっと……雪がたくさん降ったので……。館の人たちや、頼久さん、イノリ君と一緒に雪かきをしたり……」
「雪かき? 君もやったのかい?」
 そんなことは、本来下人の仕事である。イノリは特に何とも思わなかっただろうが、頼久は恐らく一度は止めたはずである。
「はい。ちょっと大変だったけど、楽しかったです。」
 頼久の制止も、受け流すか、もしくは、この笑顔で押し切ってしまったのだろう。
「皆で、声掛け合ったり、冗談言ったりしながらやると、はかどるんですよね」
 門から母屋まで、丁寧に道が作られていた様子が、思い起こされる。あかねとともに、館の者たちも、多いに楽しんで仕事をした結果だと推測できた。
「イノリ君が、頑張ったご褒美だって、雪うさぎを作ってくれました。このくらいの大きさの、とっても可愛いのを」
 あかねは、手で大きさを作ってみせた。その無邪気な喜びの表情を見ていると、どろりと熱いものが、胸の奥から噴き上がるのを感ずる。
(……雪うさぎなど……作った記憶も、絶えてない)
 あかねを抱く腕に、思わずぐっと力が入る。
「友雅さん?」
 あかねが驚いて、身をかたくするのを感じて、友雅は、もう一度やさしく見えるであろう笑みを作り直した。
「いや……そうか。イノリがね」
「イノリ君は、雪だるまを作るのも、とっても上手なんです。こんな大きな、壊れない雪玉を作っちゃうの」
(それが、あの中庭の雪だるまで……。あかね殿は、イノリと実に楽しく過ごしていたというわけだな)
 頬を染めて、白い膝小僧を跳ね上げて、弾んだ笑い声を立てて……。そんなあかねを、自分の知らないあかねを、イノリは見ていたのだ……。熱いものが、胸のうちに激しく渦巻くのを感ずる。認めたくはないが、それは嫉妬だった。
「イノリ君は……」
 なおも話し続ける唇を、友雅は自分のそれで塞いだ。
「とも……」
 唇を割って、侵入させた舌で、容赦なくあかねの声も、呼吸も絡めとる。そうして、肩で息をするあかねの耳を甘噛みしながら言った。
「……私の前で、他の男の話はしないでくれないか。……私の理性にも、限界があるものでね」
「友雅……さん」
「呼ぶのは、私の名前だけでいい。そして……君のそんな声を聞くのは、私だけでいいんだ」
「あ……ん……」 
 唇をあかねの耳から首筋に這わせ、うちきをかきわけて、胸のありかを探す。
……が、重ねられた衣のために、感触のわかる辺りまで、手が行き着かなかった。
(……これだからっ!)
 舌打ちしたい気分だったが、荒々しい男の所作に、あかねのからだが、脅えて硬直するのを感じて、それ以上踏み込むのを思いとどまった。
「……怖がらせて、すまなかった」
 あかねの頭を胸に抱き寄せ、髪を撫でる。
「友雅さん……」
 あかねは、顔をぎゅうっと押し付けてくる。手はすがるように、友雅の衣の胸の辺りを、握りしめている。そうして彼女は、くぐもった声で言った。
「……私が好きなのは、友雅さんだけです」
「あかね殿……!」
 いとしさが、胸に広がり、占拠する。愛する女に愛されるしあわせを味わいながら友雅は、嫉妬に駆られて、彼女を無理からに求めなかったことに安堵した。
(……今は、これでいい。君の準備ができるまで、私は待つことができる……)
 決意に包まれながらも、あかねを抱く腕は、なぜか背から、腰へと勝手に滑り下りて行く。
 そして。
(あの裾をからげた衣装の方が、案外容易かもしれない)とか
(彼女によく似合う薄物を、夏には必ず)とか、
 頭の隅で、次から次へと考えてしまう、しようもない友雅なのだった。


「うまかった! ありがとな! じゃあ、またな!」
 藤姫の部屋で、温かい食べ物や飲み物を供されたイノリは、ご機嫌で別れの挨拶をした。渡廊に出たところで、人の気配を感じて、振り向くと、ちょうど友雅がゆるゆるとやって来るところだった。
「おう、友雅。あかねとの話はもう終わったのか。俺も、そろそろ帰んないといけないから、あかねに挨拶してくるな」
 奥に向かおうとしたイノリの肩を、友雅の手ががっしりと捕まえた。
「お? 何、すんだよ!」
 友雅の顔を見上げたイノリは、ひやりとするものを感じた。友雅の口元は、一応笑みをかたづくってはいたが、目はまったく笑っていなかった。
「……その必要はないよ。あかね殿は、少々疲れているようだからね。そっとしてあげてくれまいか」
「でも……」
「必要ないと言っている」
「お、おい、友雅、何かおかしいぞ、おまえ」
 突き刺すような視線に、気圧されながらも、イノリが何とか言葉を出すと、友雅はしたたるような笑みを広げた。
「そうだね……。君もそろそろ覚えた方がいい。恋する男は、時に狂ってしまうことがあるものだとね」
「と、友雅……」
 背筋に悪寒を覚えて、反射的に後ろに飛び退ったイノリに、友雅は真顔で言い放った。
「そうそう、君との男と男の勝負、受けて立とう。きっちりけりを付けようじゃないか。……私の渾身の雪玉を受けてみるといい。……君だけに、あのあかね殿の愛らしい様を、独り占めさせるわけにはいかないからね」
 どーんと重量が付加された空気を残して、友雅が立ち去ると、イノリはほっと息をついた。
「……確かに、ちょっとトチ狂ってる感じだな」
 奥手のイノリであっても、友雅の言わんとしていることは、何となく理解できる。自分という許婚のいるあかねに、いい加減ちょっかいをかけるなということなのだと。
(……そんなつもりは、なかったんだけどな)
 心に、風が吹き抜けるような寂しさを覚える。あかねといることが、ただただ楽しかっただけなのに。
(……でも、そういうわけにも、いかないんだな。あかねは……あいつの嫁になるんだから。この際、俺も、きっぱりけりを付けるか……)
 きっと唇を結び、顔を上げる。
「でも、ただでは、負けてやんねーぞ。覚悟しろよ、友雅!」
 口に出して言うと、からだから力が湧きだしてくる気がする。うんっと伸びを一つすると、イノリはいつもの元気を取り戻し、いそいそと仕事場へ戻って行った。


 数日後、藤姫の館の中庭に於いて、“男と男の勝負”は行われた。経験と体力、敏捷性に勝るイノリに対して、友雅が静かに本気をたぎらせ、重量級の雪玉を用いた猛攻で、辛勝したという。
「ちぇっ、しょうがねえな。まあ、負けは負けだから、認めてやるよ。おい、友雅、あかねをきっちり幸せにしろよ? でないと、ぶっ飛ばすからな」
 決戦後に、晴れやかな笑顔で言ったイノリの男っぷりに、館の女房たちの間で、株が急上昇したとか。


 雪の降る日も、次第に少なくなってきた。春を待つあかねは、少しだけおしとやかになって、花嫁修業に励んでいる。そんなあかねを見るにつけ、友雅はいとおしくなったり、やっぱり活発なあかね殿も、悪くないと思ったり。傍目に冷静に見えても、内面はいろいろ忙しいようである。
 ちなみに、あかねのための夏用の薄物も、もちろん準備中である。
 
 あかねによって、呼び覚まされた友雅の情熱は、彼が自分で想像していた以上に “トチ狂った”ものであった。自意識とまだ戦いながら、そんな自分も、まあ、いいかと、友雅は思い始めている。
 
  遥か遠く、届くことなどないと思っていた、心満たす愛が、今、手元にあるのだから。
  それに勝るものは、一つとてないのだから。

                              (終わり)





意外と、友雅さん、ギャグ方向に行ける人なんだと、思ったお話でした。
でも、ちょっとは、いちゃいちゃしてますよね? ね? ←苦しげ

イノリ君は、絶対いい男になるので、早い者勝ちだと思いますv

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