管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
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乙女ゲーとか映画とか書物を愛する半ヲタ主婦。
このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
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予定三本、やっと終わりました〜。
♂×ロザリアは、実はアンケートで第一位だったのですよね。
こんなに遅くなって、申し訳ありません。
そして、更に、何かビミョウなできばえで^^;
やっぱり炎様は、かっこよくなりませんでした。
すみませ…っっ!
♂×ロザリアは、実はアンケートで第一位だったのですよね。
こんなに遅くなって、申し訳ありません。
そして、更に、何かビミョウなできばえで^^;
やっぱり炎様は、かっこよくなりませんでした。
すみませ…っっ!
「資格授与」
かすり傷ではあった。執務の合間の息抜きを兼ねて、宮殿の中庭で、ランディに剣の稽古をつけていた時。最近とみに鋭さを増して来た、ランディの剣先を弾きそこね、肩口に薄く切り込んでしまったのだ。
「すみません、オスカー様」
申し訳なさそうに頭を下げるランディを、オスカーは軽くいなした。現にオスカーにとって、この程度の傷は、取るに足らないものだった。普段なら、簡単に消毒だけして、そのまま放置するところだ。
だが、恐らく近いうちに、相当の困難を覚悟して、臨まねばならない任務が、発生する。大事の前には、些細なことでも、マイナス要因は取り除くべきだろう。そう考えたオスカーは、宮殿の医務室に足を向けた。頑健なオスカーには、日頃あまり縁のないところだが、聖地内の総合病院から出向している医師がいて、症状に応じた治療を受けられるはずである。
ドアを軽くノックし、声を掛けてから、部屋に入った。
「先生、手間をかけてすまないが、ちょっと診てほしいんだが」
ところが、衝立の向こうから返って来た声は、初老の医師のものではなかった。
「先生は、今、お留守ですわ」
凛と涼しい声とともに、姿を現したのは……。
「ロザリア、なぜ、君がここにいるんだ? 具合でも悪いのか? 怪我でもしたのか?」
その身を案じるがゆえの、矢継ぎ早のオスカーの問いに、ロザリア本人は少々面食らったようだった。軽く手を挙げて、押しとどめるしぐさをして、言った。
「順番にお答えしますから、少し待って下さいな。まず初めに、わたくしは、病気でも怪我でもありません。近々行いたいと思っている守護聖方の健康診断について、先生にご相談に参りましたの。必要な器材や人員などを検討するために、先生は今病院に戻って下さっています。ですので、わたくしが、お留守番をしておりますの。急を要する場合は、すぐに病院にいらっしゃる先生にご連絡をすることになっています」
「なるほど、補佐官殿の用向きは、理解した。しかし、健康診断か……」
「あなたにも、もちろん受けて頂きますわよ、オスカー。それよりあなたこそ、診察を受けにいらしたのでは? どうかなさったの?」
ロザリアの瞳が、隙のない構えで、オスカーを見つめる。なるべくなら、彼女には怪我をしたことを知られたくはなかったが、言い訳のしようもない。仕方なく、オスカーは答えた。
「ああ、ちょっとした不注意で怪我をしてしまってな。ほんのかすり傷なんだが、処置をしておいてもらった方がいいか、と」
すると、ロザリアの顔が、みるみるうちに厳しくなった。
(ああ、やっぱり……)
てっきり小言を言われるものと、肩をすくめたオスカーだったが、思いもかけぬ言葉が返って来た。
「……もちろん、処置をしなくては、なりませんわ。どこを怪我なさったの? ちょっと傷を見せて下さい」
「見せるって……君にか?」
「補佐官として、守護聖のコンディションを把握しておくのは、当然のことですし、先生にわざわざお戻り頂かなくとも、簡単な手当ぐらい、わたくしにだって、できますわ」
「しかし……」
言いながら、思わず傷を隠すように、肩口に手をやってしまったオスカーのしぐさに、ロザリアは真面目な顔で頷いた。
「肩、ですのね? シャツを取って下さい」
「!? 脱げっていうのか? しかし、レディの前で、そんなみっともない格好は……」
渋るオスカーに対して、ロザリアは眉を吊り上げた。
「そんなことを言ってる場合? 早く消毒をしないと、化膿してしまうかもしれませんわ」
「わかった、わかった。脱げばいいんだろう」
シャツに手を掛け兼ねない勢いのロザリアに押されて、オスカーは不承不承に、ボタンを外し始めた。
(……しかし、真っ昼間に、よりによって君に脱げと言われる方が、むしろ居心地が悪い……)
意中の乙女に、上半身とはいえ、裸を見せることに、いささか抵抗を覚えるオスカーだった。そうして柄にもなく、恥ずかしさを覚える反面、目的が治療のためであるとしても、自分を脱がせるのに、ロザリアが何の羞恥も覚えない様子であることが、軽くショックでもあった。
(……要するに、男として、見られていないということだな……)
正直、この潔癖で、生真面目な女王補佐官に、どのようにしたら、自分を恋愛対象として見てもらえるのか、手がかりさえ掴めていないというのが、オスカーの現状だった。
(……ジュリアス様といい、俺はどうもこのタイプに弱いらしい……)
潔癖で一途で、どこか不器用な人間を見ると、陰になり日向になりして、役に立ちたいと想う自分の傾向を、オスカーは薄々自覚していた。
ジュリアスに関しては、部下としての忠誠を捧げることを受け入れられ、本分と真心を尽くすことで、オスカーの心情は十分満足している。
だが、匂うように美しく、それでいて手厳しい青い薔薇に対しては、そういうわけにはいかない。彼女に接するたびに、胸でとどろく高鳴りは、忠誠を捧げるだけで、収まる種類のものではない。それなのに、想いを遂げるきっかけさえ、いまだ掴めずには、どういうことなのか。
(俺としたことが……)
この世という花園の、あちらこちらに咲く美しい花や舞い飛ぶ蝶を、こよなく愛し、いくつもの甘美な夢を、分かち合ってきた自分であったのに。うかつに手を出せない……この青い薔薇にだけは。
拒まれたら、相当のダメージを負うことを予想するがゆえに、一歩が踏み出せずにいる……それは、取りも直さず、胸の奥に食い込んだ想いが、深く真摯なものであるためだった。
(どうも、岡惚れしてるらしい……)
このところ、幾度となく陥っている思考のループにとらわれたオスカーは、うっかり見逃してしまったのだが、実際は彼の思い込みとは、いささか違う部分もあるようだった。
オスカーの筋肉に覆われた上半身があらわになると、ロザリアは一瞬ぱっと頬を染めた。だが目を閉じて、息を一つ吸い込むと、すぐに傷口を改め始めた。
「……確かに、そう深い傷ではありませんけれど、どういう情況で、こうなったんですの?」
「ああ、ランディに剣の稽古をつけてやっていてな。ちょっと剣がかすったんだ」
「ということは、金属ですのね?」
ロザリアは、更に引き締まった表情を浮かべると、洗面器いっぱいに水を汲み、消毒薬や包帯などを手早く取り揃え、手当に取りかかった。
「まず、よく洗い流さないと、少し冷たいでしょうけれど、我慢して下さいね」
「ああ」
ロザリアは、水気をたっぷり含ませた清潔なタオルで、傷口を洗い始めた。初めて目にするオスカーの肌は、なめらかだったが、ところどころに、やはり鍛錬で付いたと思われる、古い傷跡がうっすら浮かんでいた。
(傷を負ってまで、強くなろうとするのは、一体なぜなのかしら?)
そんな想いが、ふと胸に兆して来る。人として“強さ”が必要なのは、理解できる。困難に耐え抜くこと、信念を貫くこと、などなど、そういう精神面に於ける強さなら、わかる。だが、我が身を痛めつけてまで“腕力”や“人をねじ伏せる力”を手に入れようとする気持ちは、想像さえできなかった。
目の前にいるのは、あまねく人々に“強さ”を与えるサクリアをその身に宿した、炎の守護聖。代々軍人の家系の出自だと聞いている。だから、彼が執務の合間をぬって、剣の鍛錬に怠りなくいそしんでいても、今まで気にしたことはなかった、そのからだに刻まれた傷跡を、こうして目の当たりにするまでは。
ランディが、彼と剣の稽古をしたがるのも、その強さに憧れ、自分もそうなりたいと望むためだろう。叩きのめされても、何度も立ち向かって行く様も、何度か見かけている。
だが彼がサクリアをもって、与えようとする“強さ”は、むろん剣を振るうといった、力一辺倒なものではないだろう。そう単純ではないはずだ。だのに、なぜ、オスカーも、そしてランディも、自分のからだを痛めつけるようなことをするのだろう? また、それが、なぜ今、こうも自分は気になるのだろう?
考えを巡らせるうちに、なぜか胸が詰まって来て、涙がじわりと、こみ上げて来た。すると、おとなしくされるがままになっていた、オスカーが薄い笑みを浮かべて言った。
「どうした、ロザリア? 手が止まっているようだが? ……俺のからだに、見とれたのか? まさかな」
「……!? あなたという人はっ! 心配して、損しましたわ!」
怒声に続くロザリアの行動は、力強く、しかも的確だった。容赦なく消毒薬が傷口に注ぎ、ガーゼを当て、簡単には落ちないように、包帯でぎりぎりと締め上げた。
「お、おいっ、仮にも怪我人なんだぜ? もう少し、やさしくしてくれても……」
「いくらでも、他の女の人に、やさしくしてもらったら、宜しいわ! あてはたくさんおありでしょう?」
ロザリアの勢いに、オスカーは苦笑した。
「わかった、わかった。珍しく君にやさしくしてもらえて、少々図に乗ってしまったようだ。ありがとう。しっかり包帯を巻いてくれたおかげで、痛みも和らいだし、少々動かしても、大丈夫なようだ」
言いながら、オスカーは肩を楽々と回して見せ、ロザリアに明るい笑みを見せた。
「あの……わたくしがしたのは、応急処置ですから、ちゃんと先生に診てもらって下さいね」
手早くシャツの袖を通すオスカーに、ロザリアはためらいがちに、声を掛けた。
「ああ、試練に赴く前に、なるべく万全の状態にしておきたいからな。この怪我もきっちり治すようにするよ」
“試練”という言葉が、オスカーの口から出たとき、ロザリアは、はっと胸を突かれた。そう、新宇宙のサクリアを、精霊から解放するための試練……。炎のサクリアが高まりを見せているというデータが、新宇宙から上がって来ている。遠からずオスカーが、エトワールであるエンジュとともに、計り知れない力を持った太古の精霊と、立ち向かう日が訪れるのは、確実なことだった。
「そう……でしたわね。どうぞ、お気を付けて」
「ああ。じゃあ、執務が残っているから、俺は行くよ。手当てしてくれて、ありがとう、補佐官殿」
軽く手を挙げ、ウインクをして、出て行こうとするオスカーを、ロザリアはなぜかそのまま見送ることができなかった。
「待って、オスカー!」
思わず口をついて出た、強い呼びかけに、オスカーは驚いたように、振り返った。
「どうしたんだ、ロザリア?」
「教えて……頂きたいことが、ありますの……」
青い瞳が、ひたとオスカーを見据えるうちに、うっすらと涙が盛り上がってきた。
「ロザリア?」
涙を見て、慌てたオスカーは、彼女のすぐ傍まで戻って来た。
(君が泣くなんて……どうしたんだ、一体?)
その問いをすぐにぶつけたいところだったが、ロザリアが懸命に言葉を押し出そうとしているのを見て取ったオスカーは、ただ彼女を受け止める意志を瞳に込めて、見つめ返した。
その視線に促されるように、ロザリアはとぎれとぎれに、言葉を紡いだ。
「殿方は……あなたは、どうして、ご自分のからだを傷めてまで、強くなろうとなさるの? わたくし……わたくし……あなたが傷ついたり、危険な目に遭ったりするのを、見たくない……耐えられない……」
これだけをようやく言い終えると、ロザリアは手で顔を覆った。ぴたりと閉じられた白く華奢な指の間から、涙と、完全には押さえ込めない嗚咽がもれた。
オスカーは、そんなロザリアの姿に、深く心を動かされた。彼女が、あの誇り高いロザリアが……今、他でもない、自分のために、涙を流しているのだと。
胸がとどろくような喜びと、もっと深いところから、彼女への愛しさがこみあげてくる。
オスカーは、そっと手を伸ばすと、細い肩を抱き寄せた。その肩は、一瞬ぴくりと強ばったが、オスカーの腕の中にすっぽりと収まった。
「ロザリア……。どうか楽にして聞いてくれ。顔を見せたくないのなら、そのままでかまわない。いいか?」
オスカーの問いに、ロザリアはかすかにうなずいた。
「まず一つ。女性と違って、少々の傷は、男にとって、さほど気になるものではない。場合によっては、自慢にさえなるものだ。男というものは、君が考えているより、ずっと単純で、目に見える力を誇示することで、他の男より優位に立とうするものだ。これはもう、子供であろうが、一人前だろうが、根っこは同じさ」
バカな生き物なんだ、とオスカーは、軽く笑って、付け加えた。すると、ロザリアは、オスカーの腕の中で、ほんの少し身じろぎをした。
「ん? 何か、言いたいことが、あるのか?」
顔を覗きこむようにして、オスカーが問いかけると、ロザリアは顔を隠したまま、低い声で言った。
「……そんなバカな動機で、男の人が怪我をすることに、女はやきもきしなくては、ならないの?」
オスカーは、胸がきゅっと締めつけられるような、だが、快い痛みを覚えながら、もう一度ロザリアを抱き寄せた。ロザリアの肩先が小さく跳ね、触れあう部分の体温が上昇する。
「……ほんとに、申し訳ないことだな。だが、もちろん……そんなバカな見栄のためだけに、強くなりたいわけじゃない。……今、俺も、それを実感した気がする……」
ひそやかな問いかけが、ロザリアの白い指の間から、もれ出してくる。
「……それは、どういうことですの?」
オスカーは、心の奥底からの言葉を、ゆっくりと紡ぎ出した。
「……守りたいんだ、大切なものを。自分のこの手で、な。他のヤツになど、任せられない。己の力不足で、守ることが叶わなかったら、自分で自分が許せない。叩きのめされたって、ぼろぼろになったって、そのために強くなりたい。強くなるのは……守るにふさわしい資格を得るためでもあるんだ」
しばらく沈黙が落ちた後、その問いは、なされた。ためらいがちに、震えながら……。
「……あなたにとって、それほど大切なものって、何ですの?」
言い終えると同時に、肩に回された腕に、苦しいほど締め付けられて、ロザリアは驚き、小さな悲鳴を上げた。思わず顔に当てた手が緩んだ瞬間、そっと扉を開くように両手を取られた。
「オ……オスカー?」
蒼氷色の瞳が、近々と目の前にあった。冷たい色のその奥にたたえられた、熱く真摯な想いを正視できなくて、ロザリアはぎゅっと目を閉じた。すると深くやさしい声音が、間近でした。
「俺が自分の剣を、強さを捧げるのは、もちろん女王陛下に対してだが……。守護聖ではなく、一人の男として大切で、守りたいのは……君と、君を包み、生かし続けるこの宇宙だ……。守る資格を、俺にくれるか?」
目を閉じていても、強い意志と熱い想いが、あふれんばかりに放射され、自分一人に向かって来るのを感じる。その熱さに、身を震わせながらもロザリアはそれに応える想いが、自分の中ですっくと立ち上がるのを感じた。
ロザリアは目を開いた。そして、目の前の蒼氷色の瞳に、自分の心をぶつけた。
「……資格、などとは言わないで。あなたのお気持ちだけで……十分。十分過ぎるほど……わたくしは、嬉しいわ」
圧するような光を帯びていた、オスカーの瞳が、ふっとゆるんだ。微笑みとともに、低いささやきがロザリアの耳に注ぎ込まれた。
「……ありがとう、ロザリア。君を愛している……」
目がくらむような思いがした。何も考えられなくなったロザリアを、力強い腕が抱きとめ、くるみこむようにした。壊れ物をあつかうかのように、大切そうに……。
そして、その日がやって来た。試練に向かうオスカーを、聖獣の宇宙まで送り出す日である。ロザリアは、数名の守護聖とともに、星の小径まで足を運んだ
「くれぐれも気をつけて、行って来て下さいね〜」
「そなたのことゆえ、心配はしておらぬが。聖獣の宇宙のために、力を尽くすように。そしてエトワールの身の安全をはかるように」
見送る守護聖たちが、次々とオスカーに言葉を掛ける後ろで、ロザリアはただ立ち尽くして、オスカーを見つめていた。
胸の中は、彼が危険にさらされることへの恐れと不安でいっぱいだった。だが、それを表に出すわけにはいかない。手をぎゅっと握りしめて、耐えていたところへ、ふっとオスカーの視線が当てられた。
蒼氷色の瞳が。無言のメッセージを届けて来た。
(じゃあな、行って来る)
ロザリアは、何とか笑顔を作ってみせた。
(どうか、お気をつけて。無事のお帰りを待っています)
その想いを受け止めたのか、オスカーは笑ってうなずくと、星の小径の中心部に立った。最後の一瞬に、もう一度ロザリアに向かって。笑顔を閃かせ、オスカーの長身は、聖獣の宇宙へと転送されて行った。オスカーの姿が見えなくなると、見送りに来た一同は、聖殿に戻るべく、歩き始めた。一同の背が遠のくのを確認してから、ロザリアはがくりと膝を折った。
(どうか、どうか無事で帰って来て……!)
手を組み合わせて、祈った。オスカーの向かった聖獣の宇宙に届くように。彼女は深く頭を垂れて、祈り続けていた……。
「どうだ? ちゃんと俺は帰って来ただろう? 君の元へ」
満面の笑みで、オスカーが言う。その腕の中で、ロザリアはいささか居心地悪そうに、身じろぎをした。
「ええ、もちろん、無事に帰って来て下さって、嬉しいわ。でも……その……離して下さらない? 誰か来るかもしれませんし……」
ここは、ロザリアの執務室。試練を無事乗り越え、帰還した旨をオスカーは報告に来た。任務を終えた守護聖としては、至極当たり前のことだ。それにすでに連絡を受けていたとはいえ、オスカー自らが、早速無事な姿を見せに来てくれたことは、嬉しかった。
しかし、形式的な報告を終えるや否や、しっかりその腕に抱き締められてしまったことに、ロザリアはかなり困惑していた。羞恥の方が先に立つのだ。
「離して……オスカー」
「久しぶりに会えたっていうのに、つれないな。俺は、帰りの船の中で、君に会うことばかりを考えていたっていうのに。君は、俺のことを想ってはくれなかったのか?」
「それは、もちろん、わたくしだって……。けれど、今、ここで、こんなこと……あっ!」
言い終わる前に、ロザリアの唇は、強引に塞がれていた。
「会いたかった……君に……」
繰り返される口づけの合間に、熱っぽくささやかれ、次第にロザリアの四肢から力が抜けてゆく。
(……もう、ほんとに、この人ったら、バカみたい……!)
最後に心の中で叫ぶと、ロザリアは抵抗をやめた。執務室のドアが、来客によって、ノックされるまでのわずかな時間が、甘く通り過ぎた。
しかし、ロザリアはまったく気づかなかったのだが。実は、 “バカな現場”は、もうすでに一度他人に目撃されていた。あの日、病院から医務室に帰って来た医師は、衝立の向こうのただならぬ空気に、そっとその場を離れ、相当時間をつぶしてから、また医務室のドアを叩いたのだった。
この医師が、職業上の守秘義務を、医務室でのできごとにまで行使する、誠実で、粋のわかる人物であったことは、ロザリアにとって、まさに幸運だった。
だが、今まで相当抑制して来た分、ともすると、暴走しそうになる炎の守護聖の情熱を制御するすべは、これからまだまだ磨いていかねばならないようだった。“
“バカ”が口癖になりそうな気配が、すでに濃厚であった。
(終わり)
この前のジュリロザ小話で、ジュリアスをアフォにしたと思ったら、今度はオスカーがヴァカになってしまいました^^;(ヒドイ)
これでも、結構好きなんですよ? オスカー様。
ただ、どうも胸ときめく、というよりは、違う方向に行ってしまうようです。
かっこいいオスカー様が、書けたらいいのにっ!
(というか、それ以前にいろいろ改善点がある気配なのですが、
現時点では霧の向こうという感じなので。うだうだ考えてみたいと
思いますので、ご感想など頂けましたら、幸いです)
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