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何となく書き始めた話だったのですが、予想より
苦戦しました(汗)

聖地は、めったに雨降らないので、トロワの舞台アルカディアを
頭に置いて書きましたが、それを色濃く打ち出しているわけでは
ないので、未プレイでも、問題ありません。

微弱ながら、艶もの描写がありますので、苦手な方は、
ご注意下さい。

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「やさしい雨」


「……まだ帰って来ないの。もう、とっくに戻っていてもいい時間なのに」
  金の髪の女王が、心配そうに眉をひそめる。
「傘も持ってないはずなのに」
 その言葉と、ふいと動いた視線に釣られて、オスカーも窓に目をやった。半時間ほど前に、急に降り出した雨。その雨脚は強く、未だ止む気配はなかった。
「この天気なら、ロザリアのことですから、多分どこかで雨宿りしているのでしょう。ご心配なら、俺が行って、彼女を捜して来ますが」
 すると金の髪の女王は、ほっとした様子で笑みを浮かべた。
「悪いけれど、そうしてもらえる?」
「陛下のお役に立てるのでしたら、喜んで」
「じゃあ、お願いするわ。よろしくね」
 信頼に満ちたまなざしに送られて、オスカーは退室した。
(王立研究院に行ったんだったな)
 女王から与えられた情報をもとに、ロザリアの情況を推測する。王立研究院にいる時点で、雨が強く降っていたとしたら、そのまましばらくとどまると、連絡を寄越すはずである。だが、それがないところを見ると、恐らく帰り道の途上、連絡のできない場所で、ロザリアは足止めを食っているのだろう。
 王立研究院から宮殿に到るまでの間は、舗装されていない道が続く。オスカーは、馬で出掛けることにした。防水機能のある外套を着込み、背嚢の中には、ロザリアにまとわせるレインコートを収めた。
 そうしてオスカーは、しのつく雨の中を、走り出した。だく足で馬を進める間、遠くまで見渡せるその鋭い目で、ロザリアの姿を捜した。行程のほぼ半分に差し掛かった頃、枝を張った大きな木の下に、オスカーは目当ての人影を見つけた。
 降り止まぬ空を見上げて、立ちすくんでいるようなそのシルエット。(早く行ってやらなくては)と、オスカーは馬の脚を急がせた。
「ロザリア!」
 まず大きく名前を呼んで、近くまで馬で馳せつけた。だがロザリアは、その声がまるで聞こえなかったかのように、じっと鉛色の空を見続けている。
「ロザリア」
 馬を下りて、彼女の目の前まで歩み寄り、もう一度呼びかける。するとロザリアは、ぴくんと肩を跳ね上げ、ようやくオスカーの方に顔を向けた。
「オスカー? どうして、ここに?」
 青い瞳が、驚きに見開かれる。
「君を迎えに来たんだ。この雨に降られてるんじゃないかと、陛下が心配されてな」
「ああ、それで……。すみませんでした」
 ロザリアは、しとやかに頭を下げた。高い位置で束ねられた濃紫の髪は、水気を含んで、重たげに揺れた。
 彼女の頭上にある、茂り合った葉は、かなり雨を防いでいたが、葉にたまった雫が、時折ぽたりぽたりと落ちて来て、髪を、肩を、濡らしていた。
 つややかな頬は、いつにも増して白く、透けそうな肌合いになっていた。冷たい雫に濡れ、体温を奪われつつある彼女は、はかなげにオスカーの目に映った。
「こんなところに、いつまでもいたら、風邪を引いてしまう。宮殿に戻ろう」
 背嚢からレインコートを取り出し、肩を抱くようにして、ロザリアに着せかける。するとロザリアは、礼を述べながら、袖を通したが、馬の方へ導こうとするオスカーの手を、なぜか取ろうとはしなかった。
「ロザリア? どうしたんだ?」
「あの……オスカー。もう少しここにいては、いけません?」
「ダメだ。君のからだが冷えきってしまう。今でも、こんなに冷たいじゃないか」
 オスカーの伸ばした指先が頬に触れると、ロザリアは少し身じろぎをして、半歩後ろに下がった。そして、瞳をひたとオスカーに当てて、懇願した。
「お願い、オスカー。あと少しだけ」
 そんな風に訴えられて、むげにできるオスカーではない。だが、彼女のからだのことも心配だ。二つの気持ちの間で揺れながら、オスカーは問いを投げた。
「なぜ、ここにいたいんだ? 十分雨がしのげるわけでもないのに」
「雨を……雨を、見ていたいんですの」
「?」
 怪訝な表情を浮かべるオスカーに、ロザリアは懸命に言葉を連ねてみせた。
「わたくしたちの聖地では、めったに雨は降らないでしょう? だから、わたくしも、すっかり傘の用心を忘れてしまったのですけれど。こんな風に雨に濡れるのも、久しぶりで……。懐かしいような気がして……」
 ロザリアの瞳に、せつなげな色が浮かぶ。
「雨というあたりまえのものが、いつの間にか、遠いものになってしまっていたのですわ……」
 ロザリアの言いたいことが、オスカーにはわかる気がした。女王補佐官という、宇宙の発展、安定を護る立場になった時、彼女はそれまで慣れ親しんでいた“あたりまえ”を失ったのだ。
 それは、オスカーとて同様だった。守護聖を任じた時から、それまでの人生で得たすべてを捨てることになった。運命を恨んでいるわけではない。自分にしかできない役目だと、誇りと信念が持っているからこそ、今までもこの先も、オスカーは前へ進んでゆける。
 だが……時折どうしようもなく失ったものへの哀惜に襲われることがある。取り戻せないとわかっていながら、遠い記憶をたどらずにはいられない時が……。
 ロザリアも、きっと今、そういう心境なのだろう。
 とはいえ、このまま、彼女を雨風にさらしておくわけにはいかない。そこで、オスカーは妥協案を示した。
「わかった。だが、後、少しだけだ。それから後は、俺の指示に従ってもらう」
「ええ、承知しましたわ」
 ロザリアは、微笑んでうなずくと、再び空を仰ぎみた。その様子にちらと目を走らせてから、オスカーは連絡用の端末を取り出した。部下を呼び出し、ロザリアを見つけたこと、雨宿りのために帰着が少し遅くなることを、オスカーからの報告として、金の髪の女王に伝えるようにと、指示を与えた。
 必要な連絡をすませてしまうと、後はロザリアを連れ帰るタイミングを計るだけだった。ぶしつけにならないよう、注意しつつ、そっとロザリアの横顔をうかがう。精緻に彫り込まれたカメオのような輪郭、いつもより少し色を失った唇、空に向かってさまよう青い瞳……。
 雨に打たれる白薔薇のようだと思った。そんなロザリアを、いじらしく思うと同時に、じりりと焦げるような感情が広がる。
(俺が、今、ここに、君の傍にいるのに……。昔の思い出の方が大切なのか?)
 雨は、なおも降り続いている。地に注ぐ音、頭上の葉を打つ音が、耳を満たし、煙る雨脚のために、周りのすべての輪郭が薄れ、ぼやけて見える。
 雨に包囲され、ただ二人、閉じ込められたようにこの場所にいるのに……。ロザリアは、オスカーを見ない……。
 苛立ちと、嫉妬のような感情が、オスカーの中に頭をもたげる。その強さ、熱さに、オスカー自身が戸惑わずにいられなかった。
 ロザリアの貴婦人と呼ぶにふさわしい容姿と立ち居振る舞い、責任感の強い清廉な人柄に接するのは、これまでも大きな喜びではあった。だが、彼女を“手に入れたい”と思ったことは、なかった。
 女王候補と守護聖という、公的な立場で出会った二人の関係は、形が変わっても、宇宙の命運に関わるという共通の使命とともにあり、これから続いていくはずだった。
(どうしちまったんだ、俺は……)
 これはまずいと考える一方で、ロザリアから、なお目が離せない。そんな情況に、いよいよ焦れて来た、その時だった。
「わたくし、以前は雨が嫌いでしたの……」
 ロザリアが雨を見つめ続けながら、ぽつりと言った。
 「……そうなのか?」
 独り言のようにひそやかな声だったが、オスカーは聞き逃さなかった。ロザリアは、視線を空からオスカーへと、ゆっくりと移動させた。
「ええ……。まだスモルニイに通っていた頃、雨の日には、必ず家の者が、迎えに来るのがイヤだったんですの……」
 学校帰りに、友達と寄り道をするのは、女子高生の日常的な楽しみである。女王になることを人生の目標として、研鑽に励んでいたロザリアだったが、時には友達と雑貨店やカフェに立ち寄りたい気持ちもあった。
 ロザリアが自分にそれを許すのは、友達に5回誘われるうち1回という程度。羽根を伸ばせる貴重な時間でもあったのだ。
「今日の放課後は、お友達と過ごそうと約束していても、雨が降ると、家の車が校門の前で待っていて、有無を言わさず、乗せられてしまうんですの。でも一度だけ、迎えの車に捕まらずに、お友達と町へ出るのに、成功した時がありました……」
 ほろ苦い笑みが、唇に浮かぶ。
「何時間か、お友達と楽しく過ごして家に帰ったら、大騒ぎになっていましたの。いくら待っても私が校門から出て来ないものだから、迎えの者が、あちらこちら探しまわったそうで……。父に厳しく叱られました。『使用人に、主人を迎えに行くという仕事をまっとうさせず、余計な不安を与えるのは、心得違いだ』と……」
 ロザリアの長い睫毛が揺れる。
「そのことがあってから、お友達と放課後を過ごすのを、一切やめました。責任を伴う立場だと、自覚したからですわ。それ自体は、正しいことだったと思っています。けれど……」
「けれど?」
 続きを促すオスカーに、ロザリアはさびしげに目を伏せた。
「他愛もないおしゃべりや、少しの自由が、楽しくて仕方のなかったあの頃は、もう二度と戻らないのだと……雨を見ながら考えていました……」
 語り終えた瞬間、ロザリアの口から、小さな悲鳴が上がった。
「オ……オスカー? 何を……!?」
 男の強い腕が、彼女をとらえ、胸の中に抱き締めたためだった。驚いて、小さくもがくロザリアの動きを、難なく封じると、オスカーは熱い息とともに、心のうちからの言葉を告げた。
「君が失ったものを取り戻してやることは、できない。だが……その代わりに、別のものを君にもたらすことができる」
「別の、もの?」
「ああ」
 オスカーは、一旦腕の力を緩めると。近々とロザリアの瞳を覗きこんだ。
「過去ではなく、俺を見てくれ。俺は……俺の情熱と、この先、共にある時間を、君に捧げる……」
「オスカー……」
 ロザリアは、言葉の意味を推し量るように、オスカーの目をまじまじと見つめ返した。そして……まなざしから、オスカーの真情を受け取り、理解したようだった。光がぽっと差したように、柔らかな笑みが、広がる。
「……誓って下さるの?」
「ああ。この胸に湧き出ずるすべての愛と、情熱を、君に」
 言いながら、ロザリアの手を取り、唇をそっと押し当てた。ロザリアは、ぎゅっと目を閉じ、高鳴る胸の鼓動と、からだの中で起こった緩やかなざわめきに耐えた。彼女は、うつむき、恥じらいながら、かすかに言葉を押し出した。
「……あなたの手も唇も、あたたかいわ」
 オスカーの指が、ロザリアの顎を押し上げる。食い入るような視線を彼女にぶつけながら、ゆっくりと問うた。
「……もっと欲しいか?」
「……ええ。欲しいわ」
 とぎれとぎれの、だが、確かに彼女の意志で発せられた答えを受け取ると、オスカーは肩を抱いて、ささやいた。
「……では、行こう。お互いの熱を交わせる場所へ」
 

 暖炉にのぼる赤い炎が、室温を次第にあげてゆく。それでも、触れる肌の感触は、まだ冷たかった。その白い肌をあたため、またロザリアの内側の熱を呼び覚ますために、一つまたひとつと、キスを落とした。耐えかねたような吐息が、時折ロザリアの唇から洩れる。
 今、彼女をこの腕に抱いていることが、信じられないような思いだったが、甘い吐息と、敏感な反応に誘われて、オスカーは一層愛撫を深めてゆく。
 森のとば口に建てられた、狩猟小屋。狩猟期でない今の季節、人が立ち寄ることはまずない。壁面は丸太がむきだしになっており、床も冷たい板敷きのままの、粗野な造りである。
 あの木の下で確かめたロザリアの意志は揺るぎなく、この粗末な小屋に誘っても、拒まなかった。今、ここにいること自体が、彼女の勇気の証といえるだろう。
(だが、ロザリア、まだだ……。まだ、足りない……)
 時折か弱い手が、オスカーの動きを押しとどめようとする。声を立てまいと、指を噛み締める。彼女はまだ、すべてをオスカーに委ねてはいない。その弱々しいあらがいを押し切りながら、オスカーは耳元で囁いた。
「ダメだ、ロザリア。もう、ここから引き返すことは、できない。引き返せないのなら……最後まで行き着くしかないだろう? 委ねてくれ……この俺にすべてを!」
 すると胸の下で、愛撫の波にさらわれて、言葉を紡ぐこともできないロザリアが、唇をぐっと引き結んだ。青い瞳を光らせ、オスカーを睨めあげると、彼女の全身からぱたりと力が抜けた。そうして暴れ回るオスカーの手を、指を、すべてその身に受け入れた。
 彼女のからだの中心が、熱く潤んで、準備ができたことを確かめ、入り口をこじ開けるように、オスカーは徐々に自分自身を埋め込んでゆく。ロザリアの細い眉は苦痛に歪んだが、彼女は勇敢にも、その細腰を引くことはしなかった。
 幾度となく突き上げるうちに、さしものロザリアの自制も崩れ始め、最奥までの侵入を受け入れた時、細く高いすすり泣きのような声を上げた。
 からだを隅々までぴたりと重ねながら、オスカーは自分が放出した熱と、彼女の内部から溶け出した熱が、一つになるのを感じていた……。


 すべてのことが終わった後、オスカーは、まだばら色に肌を火照らせているロザリアに問うてみた。
「なぜ、俺を受け入れたんだ?」
 すると甘く潤んだ瞳で、見つめ返された。
「あなたの腕が温かかったから……。それと、投げ出してみたくなったんですわ、多分……」
「投げ出す?」
「ええ。昔も今も、自分のため、周囲のためと、小さな楽しみさえ遠ざけて、高く保ってきたわたくし自身を……」
 ゆっくりと言葉を紡ぐ間に、まなじりから、涙がこぼれ出す。その涙を指先で拭ってやりながら、オスカーは語りかけた。
「ありがとう、ロザリア。君が誇りとともに、守ってきたものを……俺に委ねてくれたことに、感謝する」
「オスカー……」
「愛してる、この先、ずっと……。俺の愛は、君のものだ」
  涙に濡れた頬に、降るように口づけが落とされる。うっとりと身を任せながら、ロザリアは囁いた。
「こんなにも温かい雨があったのね……」
「何のことだ?」
 唇を離して、オスカーが問い返すと、はにかんだ微笑みとともに、答えが返ってきた。
「あなたの、キスの雨」
 いとしさに胸を突かれながら、オスカーは微笑み返した。
「お望みなら、いくらでも降らせよう」
 その言葉通り、再び雨は、ロザリアのからだに降り注いだ。始まりは温かく、やがて、熱く、甘く……。


 日もとっぷりと暮れた頃、ようやく宮殿に立ち戻った二人は、心配のあまりすっかり拗ねてしまった女王の機嫌の回復に、かなりの労力を要することになった。だが、それぐらいは、当然払うべき対価というものだろう。実際、二人にとって、手にしたものの大きさに比べれば、何ほどのことではなかったのだから……。
 

 その晩、いつも通り就寝の挨拶をするために、ロザリアは女王の部屋を訪れた。
「アンジェリーク、今日は心配をかけて、すみませんでした」
「うん。今日みたいなのは、もうなしよ? 私、すごく心配したんだから」
 不機嫌の余波を漂わせつつ、ちょっとふくれてみせた女王は、ふと親友の白い首筋に目を留めた。
「どうしたの、そこ? 赤くなってるわ」
 指摘されてロザリアは、慌てて、その箇所を手で覆った。頬をたちまち真っ赤に染めた彼女を、女王は怪訝そうに見つめた。
「ロザリア?」
 問いを重ねて、理由を探ろうとした女王は、次の瞬間、はっと息を飲んだ。さながら大輪の花のような笑みを浮かべて、ロザリアがゆっくりと答えた。
「やさしい雨に……少々やけどしてしまったようですわ」
「雨……? やけど……?」
 言っていることの不自然さよりも、ロザリアのまばゆいほどの笑みに、女王は圧倒された。
「……」
 女王が二の句を告げられずにいる間に、ロザリアは深々と頭を下げ、するりと部屋を抜け出してしまった。
「ロザリア……?」
 言葉の意味はわからないまま、しかし女王はロザリアの確かな変化を感じ取っていた。そう、この日を境に、彼女はこれまでとは違う花を開き始めたのだ。


 雨空を見上げて、憂いにとらわれることは、もうないだろう。
 あの日から、やさしい雨は、ずっと、ロザリアだけに降り注いでいる。
 
 始まりは、温かく、やがて、熱く、甘く……。
                            (終わり)






ロザリアは、簡単には手折れないよ〜ん? とか思いつつ書いたら、
ちっともエロくなくなってしまいました……(汗)


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