管理人の書いた、乙女ゲーの二次創作保管庫です。
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このブログ内の文章の無断転載は、固くお断り致します。
また、同人サイトさんに限り、リンクフリー、アンリンクフリーです。
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クローバーです。ほんのり赤く色づいたところが、ときメモGSの葉月王子(ときめき状態)のようだ、とか思って、嬉しがって撮りました。 そんな私は、王子のエンディングを見て、泣いたヤツです(^_^; 花言葉は、今調べたら「約束」だそうです。 よくできたゲームだ、と改めて思いました。 学園生活の一こまとして書きましたので、 GSを知らない方でも、楽しんで頂けると思います。 宜しければ、↓からどうぞ。
「一番星が出たら」 」
6時限目が、そろそろ終わろうという頃、暗さを増して来た雲から、とうとう一粒落ちてきた。と思ったら、瞬く間に勢いを増し、視界が白い雨の軌跡で埋め尽くされるほどの降りになった。
「あ〜、やっぱり降って来た。これじゃ、今日の練習、できねえよ」
「傘、持って来てよかった〜」
クラスメイトたちのざわめきの中、俺は右斜め前に座っている秋月ひなたの横顔を、そっとうかがった。呆然としている。
(…やっぱりな…)
予想していたこととはいえ、俺は軽く息を吐いた。
(傘、持ってない顔だ……あれは)
高校入学以来、1年と数カ月、同じクラスで過ごしてきたが、ひなたの天気予想が外れるのを幾度となく目の当たりにしてきた。つまり、ひなたが傘を持って来た日は、テレビの天気予報を覆して晴れ上がり、準備していない時に限って、今日のような大雨になるのだ。
運が悪いというか、間が悪いというか……。友人である須藤瑞希が、心安だてに付けた「おとぼけこだぬきさん」の名に恥じない。 とはいえ、友人の多いひなたのことだ。誰かが、喜んで駅まで傘に入れてくれるはずだ。
駅前まで行けば、コンビニでビニール傘が買えるし。そう考えた俺は、そっと彼女の横顔から、目をそらした。
(猫……大丈夫かな?)
校舎裏に住んでいる猫たちが、この雨をうまくしのげているのか、俺の思いはそちらの方に向かった。
……だから、驚いた。猫たちが無事に俺が木箱で作った住みかに収まっているのを確かめた後、体操服の上に、薄いビニールのレインコートを着たひなたが、園芸部の畑でしゃがみこんでいるのを見た時は。
(……何、やってんだ? あいつ)
安手の簡易レインコートは、この大雨の中では、貧弱に過ぎるようだった。ひなたは、前髪からぽたぽた水滴を垂らしながら、懸命に何か作業をしている。見ていられなくて、ついそばまで行って、声を掛けた。
「秋月……!」
「あ、葉月くん。今、帰り?」
頬に伝わる雨の雫をそのままにして、ひなたが俺を見上げて微笑んだ。
「……何、やってるんだ? おまえ」
「うん…このサツマイモ、昨日植えたんだけれどね、まだ根が付いていないところに、この大雨じゃ、流されてしまうんじゃないかって、気になって…」
ひなたの足下の畝には、植え付けられたばかりのサツマイモのつるが、雨に打たれて横たわっていた。
「だから、覆いをかぶせていたの」
くったくなく笑うが、畝の両側に立てた支柱に沿ってビニールをかぶせていくのは、この雨の中ではかなりハードな作業だ。 ひなたの背後には、あと三本ほど、まだ覆いのかかっていない畝があった。
「……」
俺は、ズボンの裾をまくり、傘を差したまま、その場にしゃがみ込んだ。
「え? なにしてるの、葉月君?」
「……手伝う。おまえ一人じゃ、いつまでかかるか、しれたもんじゃない」
「いいよ〜、そんな。雨、降ってるのに」
「……だから、さっさと終わらせる」
「うん……ありがと、葉月君」
ひなたのやることを、しばらく眺めて、作業の手順を掴んでから、俺は手を動かし始めた。やってみると、見た目以上に、大変な作業であることが、わかった。
「……なんで?」
「え、何か言った? 葉月くん?」
「なんで、こんな大変なこと、おまえ一人でやってるんだ?」
「ええと……それはその…このサツマイモは私の担当だって、任されたから」
「……守村は?」
俺は、彼女の友人の一人である園芸部員の名を出してみた。植物への深い愛情を抱き、そして俺の見たところ、ひなたのことを憎からず思っている彼が、こんな事態を放っておくはずがないと思ったからだ。
「守村君、今日、お休みで……。でもね、このおイモで、秋の文化祭にスイートポテト作ろうって、楽しみにしてたし……」
では、ひなたは、守村のために、こんな大変な作業もいとわずやっているのか。胸が一瞬締め付けられるように痛んだ。
「……でも、何より、私がこのおイモ、ちゃんと育ててあげたかったから」
そう言いながら、サツマイモの苗を見つめるひなたの目は、やさしかった。
……俺は、もしかしたら、守村にも、イモにも負けているのだろうか。そう思うと、腹立たしかったが、ひなたが一心不乱に作業している姿を見ているうちに、そんな考えはどこかへ行ってしまった。
「……おまえ、バカだ」
「え……? 何か、言った?」
「いいから、さっさと手、動かせよ」
「あ……うん」
それから、小一時間やって、どうにか全部の畝に、覆いを掛けることができた。
「ありがとう、葉月くん。おかげで助かっちゃった」
頬に泥の筋を付けて、それでもひなたは、ぴかぴかの笑顔で言った。
「葉月君まで濡れちゃって……。ごめんね」
「いや……たいしたことない。」
ふと、俺は、濡れたひなたの頬に手を伸ばしてみた。
「なに……?」
「冷えてるな」
「え……あ……うん」
「……送る。ついでだから」
「そんな、悪いよ……」
「……今更だろ? それより、おまえ、着替えて来いよ、体操服」
俺の言葉に素直にうなずくと、ひなたは小走りに校舎の方へ向かって行った。 ひなたの背中が、校舎に吸い込まれるのを見届けると、俺は今覆いを掛けたサツマイモの畝に目を落とした。
「……俺にも食わせてくれるんだろうな…スイートポテト」
それから駅までの帰り道、ひなたは、俺の傘に入って歩いた。道中で、雨もこやみになってきて、遅い黄昏が潤んだ空気を、淡いオレンジに染めた。
「やった〜、雨、やんで来たね。明日は晴れるかも」
「……おまえがそう言うなら、明日は嵐だな」
「どういう意味〜?」
「おまえの過去の実績が物語ってる……」
「う〜〜、反論できない〜〜」
ふくれた顔が、この間一緒に行った水族館で見たハリセンボンに似てる。 そんなことを思いつつ、俺は聞いてみた。
「おまえ……なんで、持ってたんだ?」
「え?」
「……レインコート」
「ああ、あれ? 部室に誰かが忘れてたの、勝手に借りちゃった」
「……だろうな。おまえにしては、準備がよすぎると思ったんだ」
「葉月くんてば〜〜、また、そんなこと言う〜〜」
一層ハリセンボンに似てきた。……こんなひとときを、もたらして くれた雨は、俺にとっては、天の恵みと言えるかもしれない。
「あ〜、葉月君、見て〜、一番星〜!」
ひなたの指す空に、清らかな光を放つ星があった。
「一番星が出たから、明日は絶対晴れだよ〜」
「…そうだな」
うなずきながら俺は、明日は絶対傘がいるな、と考えていた。
終わり
「一番星が出たら」 」
6時限目が、そろそろ終わろうという頃、暗さを増して来た雲から、とうとう一粒落ちてきた。と思ったら、瞬く間に勢いを増し、視界が白い雨の軌跡で埋め尽くされるほどの降りになった。
「あ〜、やっぱり降って来た。これじゃ、今日の練習、できねえよ」
「傘、持って来てよかった〜」
クラスメイトたちのざわめきの中、俺は右斜め前に座っている秋月ひなたの横顔を、そっとうかがった。呆然としている。
(…やっぱりな…)
予想していたこととはいえ、俺は軽く息を吐いた。
(傘、持ってない顔だ……あれは)
高校入学以来、1年と数カ月、同じクラスで過ごしてきたが、ひなたの天気予想が外れるのを幾度となく目の当たりにしてきた。つまり、ひなたが傘を持って来た日は、テレビの天気予報を覆して晴れ上がり、準備していない時に限って、今日のような大雨になるのだ。
運が悪いというか、間が悪いというか……。友人である須藤瑞希が、心安だてに付けた「おとぼけこだぬきさん」の名に恥じない。 とはいえ、友人の多いひなたのことだ。誰かが、喜んで駅まで傘に入れてくれるはずだ。
駅前まで行けば、コンビニでビニール傘が買えるし。そう考えた俺は、そっと彼女の横顔から、目をそらした。
(猫……大丈夫かな?)
校舎裏に住んでいる猫たちが、この雨をうまくしのげているのか、俺の思いはそちらの方に向かった。
……だから、驚いた。猫たちが無事に俺が木箱で作った住みかに収まっているのを確かめた後、体操服の上に、薄いビニールのレインコートを着たひなたが、園芸部の畑でしゃがみこんでいるのを見た時は。
(……何、やってんだ? あいつ)
安手の簡易レインコートは、この大雨の中では、貧弱に過ぎるようだった。ひなたは、前髪からぽたぽた水滴を垂らしながら、懸命に何か作業をしている。見ていられなくて、ついそばまで行って、声を掛けた。
「秋月……!」
「あ、葉月くん。今、帰り?」
頬に伝わる雨の雫をそのままにして、ひなたが俺を見上げて微笑んだ。
「……何、やってるんだ? おまえ」
「うん…このサツマイモ、昨日植えたんだけれどね、まだ根が付いていないところに、この大雨じゃ、流されてしまうんじゃないかって、気になって…」
ひなたの足下の畝には、植え付けられたばかりのサツマイモのつるが、雨に打たれて横たわっていた。
「だから、覆いをかぶせていたの」
くったくなく笑うが、畝の両側に立てた支柱に沿ってビニールをかぶせていくのは、この雨の中ではかなりハードな作業だ。 ひなたの背後には、あと三本ほど、まだ覆いのかかっていない畝があった。
「……」
俺は、ズボンの裾をまくり、傘を差したまま、その場にしゃがみ込んだ。
「え? なにしてるの、葉月君?」
「……手伝う。おまえ一人じゃ、いつまでかかるか、しれたもんじゃない」
「いいよ〜、そんな。雨、降ってるのに」
「……だから、さっさと終わらせる」
「うん……ありがと、葉月君」
ひなたのやることを、しばらく眺めて、作業の手順を掴んでから、俺は手を動かし始めた。やってみると、見た目以上に、大変な作業であることが、わかった。
「……なんで?」
「え、何か言った? 葉月くん?」
「なんで、こんな大変なこと、おまえ一人でやってるんだ?」
「ええと……それはその…このサツマイモは私の担当だって、任されたから」
「……守村は?」
俺は、彼女の友人の一人である園芸部員の名を出してみた。植物への深い愛情を抱き、そして俺の見たところ、ひなたのことを憎からず思っている彼が、こんな事態を放っておくはずがないと思ったからだ。
「守村君、今日、お休みで……。でもね、このおイモで、秋の文化祭にスイートポテト作ろうって、楽しみにしてたし……」
では、ひなたは、守村のために、こんな大変な作業もいとわずやっているのか。胸が一瞬締め付けられるように痛んだ。
「……でも、何より、私がこのおイモ、ちゃんと育ててあげたかったから」
そう言いながら、サツマイモの苗を見つめるひなたの目は、やさしかった。
……俺は、もしかしたら、守村にも、イモにも負けているのだろうか。そう思うと、腹立たしかったが、ひなたが一心不乱に作業している姿を見ているうちに、そんな考えはどこかへ行ってしまった。
「……おまえ、バカだ」
「え……? 何か、言った?」
「いいから、さっさと手、動かせよ」
「あ……うん」
それから、小一時間やって、どうにか全部の畝に、覆いを掛けることができた。
「ありがとう、葉月くん。おかげで助かっちゃった」
頬に泥の筋を付けて、それでもひなたは、ぴかぴかの笑顔で言った。
「葉月君まで濡れちゃって……。ごめんね」
「いや……たいしたことない。」
ふと、俺は、濡れたひなたの頬に手を伸ばしてみた。
「なに……?」
「冷えてるな」
「え……あ……うん」
「……送る。ついでだから」
「そんな、悪いよ……」
「……今更だろ? それより、おまえ、着替えて来いよ、体操服」
俺の言葉に素直にうなずくと、ひなたは小走りに校舎の方へ向かって行った。 ひなたの背中が、校舎に吸い込まれるのを見届けると、俺は今覆いを掛けたサツマイモの畝に目を落とした。
「……俺にも食わせてくれるんだろうな…スイートポテト」
それから駅までの帰り道、ひなたは、俺の傘に入って歩いた。道中で、雨もこやみになってきて、遅い黄昏が潤んだ空気を、淡いオレンジに染めた。
「やった〜、雨、やんで来たね。明日は晴れるかも」
「……おまえがそう言うなら、明日は嵐だな」
「どういう意味〜?」
「おまえの過去の実績が物語ってる……」
「う〜〜、反論できない〜〜」
ふくれた顔が、この間一緒に行った水族館で見たハリセンボンに似てる。 そんなことを思いつつ、俺は聞いてみた。
「おまえ……なんで、持ってたんだ?」
「え?」
「……レインコート」
「ああ、あれ? 部室に誰かが忘れてたの、勝手に借りちゃった」
「……だろうな。おまえにしては、準備がよすぎると思ったんだ」
「葉月くんてば〜〜、また、そんなこと言う〜〜」
一層ハリセンボンに似てきた。……こんなひとときを、もたらして くれた雨は、俺にとっては、天の恵みと言えるかもしれない。
「あ〜、葉月君、見て〜、一番星〜!」
ひなたの指す空に、清らかな光を放つ星があった。
「一番星が出たから、明日は絶対晴れだよ〜」
「…そうだな」
うなずきながら俺は、明日は絶対傘がいるな、と考えていた。
終わり
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実は「裸の○将放浪記」にインスパイアされて、生まれたお話。
「これぞ、赤道の太陽だね」
まばゆい陽光、きらめく海。はばたき学園を卒業後、創作意欲
を刺激するための世界旅行の途上、天才画家三原色は、南太平
洋に浮かぶ、観光客の姿も稀な小島に来ていた。
「でも、この日差しじゃ、僕の肌が傷んでしまうよ」
美しい眉をひそめながら、SPF80の強力日焼け止めを塗りまくる色。
その服装は、普段でも、見る者の言語能力を麻痺させる
彼のセンスに南国テイスト加えた……
あえて言葉にするなら、とんでもないシロモノだった。
そんな色を、遠巻きにして、眺める村の子供たち。
視線に気づいた色は、にっこりした。
「ハロー、太陽と海に愛された褐色の天使たち!」
言葉は通じなかったが、フレンドリーな響きと、
何よりも笑顔が、子供たちの警戒心や恥ずかしさを
解きほぐした。
勇気のある少女が(後で分かったが村長の娘だった)
思い切ってあいさつしてきた。
「ハロー、ユア、フレンチ?」
色は笑って首を振った。
「ノーノー、僕はジャパニーズだよ」
その答えに、子供たちは思わず顔を見合わせた。
(ウソだろ…)
この島にやって来る日本人の特徴は際だっていて、
しかも共通していた。
目の前にいる極彩色の服の美青年は、その特徴から
激しく逸脱している。
(でも…)
子供たちは思った。
(でも、この人はキレイだ…)
交わし合う笑顔。色の純粋な心が子供たちに響いた。
そして、たちまちうち解けた色は、子供たちに服のまま、
海にたたき込まれる羽目に陥った。
そうなった以上、色はもう何も気にしない。
褐色の肌を光らせた子供たちと、熱帯魚のような美青年が、
エメラルドの海でたわむれる様は、不思議な、
しかし美しい光景だった。
すうかり仲良くなった村長の娘に、色は家に招待された。
村長の家では、遠来の客を最高のもてなしで、
歓迎してくれた。
子豚の丸焼きを見て、色の目は輝いた。
「すごいよ、これはマミーの得意料理だ。
隠し味は、フレンドシップ?」
宴は、夜が更けるまで続いた。
色は、そのまま村長宅に泊めてもらった。
そして、翌朝。
空港のある島へ向かう定期船の出る時間が迫ってきた。
目の下にクマを作った色は、村長をはじめ、
家人の一人ひとりと、別れを惜しんだ。
そして最後に色は、村長の娘に、スケッチブックから
切り取った一枚の絵を手渡した。
徹夜して描いた娘の肖像だった。
「これを、君に…。さようなら、褐色の天使」
絵を胸に抱き締め、色の接吻を頬に受けて、娘は頬を染めた。
(さようなら…虹色の王子さま)
色が去った後、娘は絵をよく眺めてみた。
(これが……私??)
色の芸術性と、娘の女としての虚栄心が合致するかどうかは、
別問題である。
けれど、絵を見つめる娘の唇に、やがて笑みが浮かんだ。
(…でも、あの王子さまらしい…)
少女の心に淡い思いと、芸術が爆発した絵を残して、
色は南の島を後にした。
明日は、どこの旅の空の下に?
それは彼のミューズが命ずるままに、である。
(終)
私、色サマファンです。(これでも・笑)
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「これぞ、赤道の太陽だね」
まばゆい陽光、きらめく海。はばたき学園を卒業後、創作意欲
を刺激するための世界旅行の途上、天才画家三原色は、南太平
洋に浮かぶ、観光客の姿も稀な小島に来ていた。
「でも、この日差しじゃ、僕の肌が傷んでしまうよ」
美しい眉をひそめながら、SPF80の強力日焼け止めを塗りまくる色。
その服装は、普段でも、見る者の言語能力を麻痺させる
彼のセンスに南国テイスト加えた……
あえて言葉にするなら、とんでもないシロモノだった。
そんな色を、遠巻きにして、眺める村の子供たち。
視線に気づいた色は、にっこりした。
「ハロー、太陽と海に愛された褐色の天使たち!」
言葉は通じなかったが、フレンドリーな響きと、
何よりも笑顔が、子供たちの警戒心や恥ずかしさを
解きほぐした。
勇気のある少女が(後で分かったが村長の娘だった)
思い切ってあいさつしてきた。
「ハロー、ユア、フレンチ?」
色は笑って首を振った。
「ノーノー、僕はジャパニーズだよ」
その答えに、子供たちは思わず顔を見合わせた。
(ウソだろ…)
この島にやって来る日本人の特徴は際だっていて、
しかも共通していた。
目の前にいる極彩色の服の美青年は、その特徴から
激しく逸脱している。
(でも…)
子供たちは思った。
(でも、この人はキレイだ…)
交わし合う笑顔。色の純粋な心が子供たちに響いた。
そして、たちまちうち解けた色は、子供たちに服のまま、
海にたたき込まれる羽目に陥った。
そうなった以上、色はもう何も気にしない。
褐色の肌を光らせた子供たちと、熱帯魚のような美青年が、
エメラルドの海でたわむれる様は、不思議な、
しかし美しい光景だった。
すうかり仲良くなった村長の娘に、色は家に招待された。
村長の家では、遠来の客を最高のもてなしで、
歓迎してくれた。
子豚の丸焼きを見て、色の目は輝いた。
「すごいよ、これはマミーの得意料理だ。
隠し味は、フレンドシップ?」
宴は、夜が更けるまで続いた。
色は、そのまま村長宅に泊めてもらった。
そして、翌朝。
空港のある島へ向かう定期船の出る時間が迫ってきた。
目の下にクマを作った色は、村長をはじめ、
家人の一人ひとりと、別れを惜しんだ。
そして最後に色は、村長の娘に、スケッチブックから
切り取った一枚の絵を手渡した。
徹夜して描いた娘の肖像だった。
「これを、君に…。さようなら、褐色の天使」
絵を胸に抱き締め、色の接吻を頬に受けて、娘は頬を染めた。
(さようなら…虹色の王子さま)
色が去った後、娘は絵をよく眺めてみた。
(これが……私??)
色の芸術性と、娘の女としての虚栄心が合致するかどうかは、
別問題である。
けれど、絵を見つめる娘の唇に、やがて笑みが浮かんだ。
(…でも、あの王子さまらしい…)
少女の心に淡い思いと、芸術が爆発した絵を残して、
色は南の島を後にした。
明日は、どこの旅の空の下に?
それは彼のミューズが命ずるままに、である。
(終)
私、色サマファンです。(これでも・笑)
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